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幸せになるまで死ねません  作者: 睦月ひより
プロローグ
3/6

プロローグ③

「さて。では、生まれ変わるにあたって、なにか希望はあるかの? 叶えてやれるかはわからんが、望みがあるなら言ってごらん」


おじいちゃんからの提案に、私はすこし驚いた。

転生先の希望まで聞いてくれるなんて、随分親切だ。ああ、言うだけはタダって感じなのかな。


でも、迂闊なことを言って、このおじいちゃんを怒らせたくない。

よくよく考えて、私の希望を口に出す。


「……生まれ変わるなら、動物園で飼われるパンダがいいです」


パンダは、絶滅危惧種の希少動物だ。この世に生まれただけで、世界に祝福してもらえる。なにもしなくても、ただ存在しているだけで、ありがたがってもらえる。

なんて羨ましい生き物だろう。

生まれ変わるなら、パンダがいい。


けど、そんな私の提案は、おじいちゃんに即却下された。


「いや、ちょっと待ちなさい。その考え方はいかん」

「じゃあ、水族館のアザラシになりたいです」


パンダを却下されたので、私は代替案を出した。

記憶を持ったまま生まれ変われるなら、水族館のアザラシでも、それなりの役に立てるだろう。

体育も音楽も数学も苦手だった私には、高等な水芸は難しいかもしれない。けど、音楽に合わせて鳴いたり、一桁の算数をしたりするくらいはできる。一生懸命がんばれば、ショーの目玉になる一演目くらいはできるだろう。

客寄せができれば、私にも存在価値ができる。


たしかに、パンダじゃ楽をしすぎだったのかもしれない。自分の存在価値を得るためには、相応の努力をするべきだよね。

だから、水族館のアザラシは、我ながらナイスな提案だと思ったんだけど。


「それも違う。……君は、いろいろと間違えておるな」


アザラシもだめなのか。

もう少し難易度を上げないとだめなのかな……。


「じゃあ、盲導犬とか介助犬とかならどうですか? 私、きっと役に立ちます。もうこの子がいないと生きていけないってくらい、立派な犬になってみせます!」

「いや、だから、そういうことじゃないんじゃよ」


また却下されてしまった。


存在しているだけで絶滅保護の役割がある、パンダはダメ。

芸を覚えて水族館の客寄せに役立つ、アザラシもダメ。

社会の役に立つ、盲導犬や介助犬もダメ。


ほかに、なにがあるだろうか。

私でも生きていていい理由をもらえる、存在価値のある生き物。


(……役に立たないなら、生きていていい理由がない)


ぐるぐると思考を巡らせて考えるけど、いい案が浮かばない。

私は何を間違えているんだろう?


「……わかった。転生先は、儂が適当に見繕おう」

「……すみません」


ため息まじりのおじいちゃんの言葉に、私も肩を縮めて謝る。

自分の希望が通らなかったことより、おじいちゃんが望む答えが出せなかったことが、ただひたすらに申し訳ない。


どう答えるのが正解だったんだろう?


「よいよい、肩を落とすな。まあ、それがわかるなら、特例措置なぞ取られたりはせんよな」

「……それって、どういう……」


意味がわからない。

何に生まれ変わりたいか、その答えが重要だったってこと?


「……前の人生では、私にはなにも価値がありませんでした。だから、今度こそ、存在価値があるものに生まれ変わりたいと思いました。必要とされる生き物になりたいと思ったんです。それじゃだめなんですか?」

「それは儂からは言えんよ。それこそが、君が探すべき答えなのじゃからね」


……え?

今、さらっと重要なことを言ったよね。転生するなかで、探すべき答え。それがわからないと、延々と転生を繰り返すハメになる。超重要ワードだよね。


「ああ。儂からは、それ以上は教えてやれん。自分で考えなくてはならんよ。そして、その答えについてもな」


訊く前に、言われてしまった。食い下がっても、多分答えはもらえないだろう。

どうしよう。なにもわからないんだけど、転生してから考えて、答えがわかるものなのかな。どんな答えが正解なのか、さっぱりわからない。


「さて。では、君の転生について、上に報告してこようかの」

「……私はどうすれば」

「今しばらく、ここで待っていなさい。時がくれば、勝手に始まるでな」


天も地もないと思っていたこの空間で、おじいちゃんはふわふわと浮かび上がっていく。

まっしろい空間にひとり残される私に、おじいちゃんが最後の説明をくれた。


「転生後は、君は生まれたての赤ん坊じゃ。パンダやアザラシには転生させられんが、君の意向は汲んであげるよ。……精一杯、生きてごらん」


それだけ言い残して、おじいちゃんはいなくなった。

しろい空間に溶けていくように、姿を消していく。


(……ああ。おじいちゃんの名前も訊いていなかった)


いろいろしてもらったのに、お礼も言っていない。そんなことを今更思ったけど、もう遅い。

時間の経過もわからない空間で、私はまた、ひとりになった。


プロローグはこれで終わり。

次回から、転生後の新しい人生が始まります。

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