シャドウスレイヤー#01「VS"黒ひげ"」
ツイッターに書いた小説です。せっかくなのでなろうにも投稿してみました。
サクッと読めるアクション小説です。どうかお楽しみを!
「ドーモ、エドワード"黒ひげ"ティーチ=サン。クロス・ヤギュウです」
「ドーモ"黒ひげ"です。というわけで死ね!!」
BLAM!!
アイサツと共に撃ち込まれた銃撃!自分は半歩身体をズラし、紙一重で避ける!
「あぁ⁉なぁんで死んでねぇんだよ!!」
01 #シャドウスレイヤー
BLAMBLAMBLAM!!!
不満げな声と共に"黒ひげ"がピストルを連射する。フリントロック式の骨とう品のピストルだ。しかしその威力は絶大である。
KABOOOOOOM!!!
紙一重で避けた銃弾が、背後の廃ビルを穴だらけにし、倒壊させる!
02 #シャドウスレイヤー
「歪み暴走しているとはいえ、歴史に名を遺す英霊――シャドウとしての力は凄まじいでござるな…!」
ガラガラと降ってくる瓦礫を避けながら、自分は嘆息する。
シャドウ。様々の理由で具現化・暴走する霊である。その力は物理法則に縛られず、デタラメそのものだ。
03 #シャドウスレイヤー
「ハハハァ!何もかもぶっ壊してやるぜェッ!」
タル体形の海賊姿のシャドウ――"黒ひげ"がピストルを乱射!
「オラ―ッ!」KABOOM!またしても廃ビル倒壊!
「ウラ―ッ!」KABOOM!ネオン看板落下!
「アラ―ッ!」KABOOM!道路崩壊!
04 #シャドウスレイヤー
『ちょっと何やってんのよクロス!いくら市民は避難済みとはいえ街壊されすぎ!』
電脳化された自分の脳内に"協力者"からのIRC通信――文句が届く。
「そう言うでござるが。黒ひげといえば伝説の大海賊。その名に恥じぬ実力でござって…」
『言い訳無用!』
05 #シャドウスレイヤー
『アンタだってアレに負けない化け物でしょうが!さっさとやっちゃって!』
「――了解!」
言って、自分は電脳内でスイッチを切り替える。
<身体制御モード変更:通常戦闘機動→加速戦闘機動に変更します>
瞬間、自分の全身義体が唸りをあげる!
06 #シャドウスレイヤー
「おおおおおおお――――ッッッ!!!」
「なんだァ!?」
叫ぶ自分に"黒ひげ"がピストルを連射する。フリントロック式の丸い弾丸が十五発、唸りを上げて自分に向かってくる。
それが、ゆっくりと知覚できる。
――回避ルート、右、上、左、下、左、下――
07 #シャドウスレイヤー
電脳が算出したルートを辿り、自分は弾丸を回避。そのまま"黒ひげ"に肉薄する。
「俺の乱射を――真正面から避けやがっただと!?何だそのインチキじみた速さは!!」
「シャドウに対抗するための術でござるよ」
超加速。それが今回切った自分の切り札だ。
08 #シャドウスレイヤー
身体の動き、思考速度、認知速度――その全てを加速し、亜音速で機動する術。全身義体である自分だからこそ出来る技である。
「覚悟するでござる"黒ひげ"」
チャキ、と自分は腰の刀を握り、通告する。
「シャドウはこの世にあってはならぬ無念。成仏を」
09 #シャドウスレイヤー
「ハッ!俺様は"黒ひげ"、好き勝手やって好き勝手死ぬ海賊様だぞ!?俺は死ぬまで暴れてやるのさサイボーグ野郎!!」
BLAM!
「――ならば。自分の太刀で終わらせるでござる」
返答代わりの銃撃を超加速で回避、"黒ひげ"の背後で居合の構えを取る。
10 #シャドウスレイヤー
「柳生新陰流――落花狼藉」
――斬。
音は一つ。肉を断ち切る鈍い音だった。
「――あぁ?」
ボトリ、と落ちた"黒ひげ"の頭が、何が起きたのか分からない様子で声を上げる。
11 #シャドウスレイヤー
「なんだ――俺は首を落とされたのかァ?ハハハッ!すげぇなお前!痛みも感じる暇が無かった!!」
ギャハハ、と落ちた"黒ひげ"が笑う。爆笑う。嘲笑う。
「――だぁが残念。海賊が!大海賊"黒ひげ"様が!『頭を落とされたぐらいで死ぬと思ったか!?!?』」
12 #シャドウスレイヤー
「俺は、首を落とされても暴れた男だぞ!25回斬り殺されてなお暴れた男だ!たかが一撃、首を落とされたぐらいじゃあ――」
「知っているでござるよ」
刀を鞘に納め、自分は静かに告げる。
「"黒ひげ"が極めてタフな英雄であるなど、知っているでござる」
13 #シャドウスレイヤー
「海賊"黒ひげ"。その最期の戦いでは、25回以上斬られてなお戦い抜き――首を落とされてなお身体が戦ったという」
「だから」
「その『四倍』は斬っておいたでござる」
その言葉を合図とするように。残された"黒ひげ"の身体が震え、崩れる。
14 #シャドウスレイヤー
ボロボログチャグチャと"黒ひげ"の身体がバラバラになっていく。
「いくら"黒ひげ"でも――百の肉片にされては足掻きようが無いでござろう?」
「――ハハハッ!確かにその通りだァ!!」
花びらのように散っていく身体を前に"黒ひげ"の頭は哄笑した。
15 #シャドウスレイヤー
「ここまで細切れにされちゃあ足掻きようがねぇ!ああ負けだ負け!海賊"黒ひげ"はここまでだ!!」
ネオンが照らす道路上。そこに野ざらしに残された首一つ。
しかしそれはニヤリと笑い、
「暴れた暴れた!俺は"また"やりたい放題やった!やってやったぞ!」
16 #シャドウスレイヤー
「シャドウだか何だか知らんが、歪んでいようが!"黒ひげ"は"黒ひげ"として暴れて暴れてそして死ぬ!あばよ人間、サイボーグ野郎!!」
――ボフッ
好き勝手啖呵を切って、"黒ひげ"の頭は消滅した。
17 #シャドウスレイヤー
『――変なシャドウだったわね。"もっと暴れたかった"って"黒ひげ"の無念から生まれたくせに。何か満足して消えちゃった』
「あるいはいつ消えても良かったのかもしれんでござるな。いつか死ぬと知りながら、駆け抜ける――そんな在り方なのかもしれんでござる」
18 #シャドウスレイヤー
『それ、はた迷惑すぎない?』
「海賊でござるからなぁ。迷惑な存在に決まっているでござるよ」
『そうだったわ…』
"協力者"の憂鬱なIRC通信を聞きながら、自分は何とはなしに空を見上げた。
夜空。深夜も稼働する工場の排煙で、この街では星は見えない。
19 #シャドウスレイヤー
星の見えない夜空。それはまるで、向かうべき場所が見えない航路のようで――
「それでも。自分は自分の航路を行くでござるよ、"黒ひげ"殿」
呟き、歩き出す。次なるシャドウの元へ。
自分は――シャドウを狩る者。シャドウスレイヤーなのだから。
20 #シャドウスレイヤー
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