安らかな眠りと共に
私の目の前ではまさしく『天使』の様な少女が
気持ちよさそうに寝息を立てています。
先程、苦しそうに呻いていたので
頭を撫でていたのですが、どうやらそれが効いたようです。
「ふふ、可愛らしい顔で寝るのですね」
少し微笑みそう呟きました。
この子は、先日……と言っても3日ほど前に
私が森で薬草を取りに行った帰り道に
はるか昔、大規模な戦争があった『廃墟』にて
たまたま見つけ、拾った子なのですが……
正直、何故あの廃墟に居たのか全く分かりません。
確かにあの廃墟では過去の戦争での残留魔力によって
天使や魔族が生まれて来ますが、
本当に稀なのです。
普通、あのような地で生まれるのは
戦争で死んだ者たちの怨念やらで構成された
力の強い魔物が多数なのですが……。
それ以外の可能性として捨て子というのも
あるのですが、そもそも森の深くにあり
それでいて危険な魔物が巣食うあのような地に
人は足を運ぶ事がありません。
「本当に……不思議な子ですね……」
そう言ってもう一度、頭を撫でます。
透き通るような細い銀色の髪、新雪のような美しく白い肌
髪の毛の隙間から覗く少し先端が尖っている耳……
触れてしまえばすぐにでも壊れてしまいそうな
儚い印象を与える少女が心地よい眠気を立てています。
「熱は……下がったようですね。
安心しました、一時はどうなるかと思いました……」
高熱にうなされていた彼女を見つけ
急いで家に連れて帰って看病した甲斐がありました。
「今は安らかに眠ってください」
そう言って私は彼女から離れます。
起きたらお腹が空いているでしょうから
暖かいスープでも用意して置きましょうか?
これからの事を頭に入れながら私は台所へと向かうのでした。