始まりの始まり
ある会社での日常の1コマであるはずの昼休み。センスがあるインテリアと貰い物のネタに走ったインテリアが半々に存在する一室で二人の男性が話し合いをしていた。
「まぁ入る前から聞いておったから納得はするが、皆の事を考えると引き留めたいのぅ…」
「申し訳ありません…引き継ぎはしっかりと行っておきますので」
「いや、バイトにそこまで負担を強いてる奴等がいかんのじゃから気にするな」
「ありがとうございます社長」
整えられた白い髭を撫でるこの会社の社長はアルバイトに対して気を使いながら話を進めていく。誠実であり人当たりもよくこの会社で様々な業務を経験し、トラブルがあっても対処出来る能力を有したこの学生について高く評価している。そう感じられるようにも聞こえてくる話だが…
「ついぞ笑顔は治らんかったの」
「いや、治すために来たわけでもありませんので…」
曖昧な愛想笑いで返事を返すが社長も慣れた様子で笑っている。
「まぁ終わってから行き場ないならうちに…ってのはなさそうじゃな」
「いえ、考えさせていただきます」
「引く手あまたじゃろうに…まぁ孫に甘いのかもしれんがようやってくれた!バカ息子…いや、明人の仕事についてはよくわからんが新ならば上手くやれよう」
「うん、頑張るよ」
「いきなり孫の口調になりおったな」
「いやまずじいちゃんが崩したんじゃないか」
「まぁのぅ」
如月有幸は貫禄のある顔から飄々とした悪戯好きのお爺さんのような表情を浮かべて高笑いをしているとノックが部屋に鳴り響いた。
「む、来たようじゃぞ」
高笑いを止め、元の貫禄ある顔つきを浮かべながら気を引き締める如月有幸。しかし孫の如月新からすれば外にも聞こえそうな大きな笑い声だったのだから無駄だろうと心の中でツッコミを入れざるを得ないという感情一色だった。しかし口に出さないのは理由がある。部屋に入ってきた人物達が幼馴染みとその親達、加えて父親の如月明人と母親の如月史奈…他には母親と共にとある作品の開発に携わった人達の姿が見えたからだ。
「それじゃあ…よろしくお願いします」
お付き合いありがとうございます。エタる訳ではありません。遅いだけです(真顔)