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気を取り直して、ヤマダ(仮)に質問を続ける。
「コックリさんのやり方を誰に聞いたんだ」
「サチが隣のクラスの子に教えて貰ったんだよ」
三人の方を見ると、黒髪の大人しそうなのが怯えたように目を泳がせている。あれがサチだな。
「隣のクラスの誰に聞いた」
「佐久間が、あの……SNSで教えて貰ったって」
「SNS?」
問い返すと、ポケットからスマホを取り出し片手で器用に操作する。
ミニブログの方かと思ったが、違っていた。招待されないと入れないタイプのSNSだ。
「これ」
そう言って見せられたのは、佐久間と思しき人物から届いたメッセージだった。
『マジでチョー当たるから!』
コックリさんをするテンションではないと思うのだが、どうだろう。
そう前置きがあって詳しいルールと画像ファイルが添付されている。
「ちょっと気になったから、それでコンビニでプリントして試そうって事になって」
成る程、画像ファイルはコックリさんの用紙か。
しかしコンビニでプリントした紙でいいのか、お手軽すぎだろコックリさん。
「何を聞いていたんだ」
「これから聞こうとしてたんだよ」
ヤマダ(仮)が口を挟んで来る。
「佐久間って子が無くし物見つけて貰ったって言うからさー。だったらちょっと試してみようかって思っただけじゃん」
「無くし物って?」
「指輪だったっけ?」
そう言ってサチを振り返る。
「そう。コックリさんに聞いたら鞄のポケットって言われたって」
それを教えてくれたのはコックリさんではないだろう。本人が知っていたのだ。
そんな所に指輪を入れるのは本人しかいない。だが忘れてしまった。それをコックリさんを通して潜在意識が教えてくれただけだ。
「そんなの真に受けてバカじゃないの」
それまで黙っていた森がボソッと呟く。
他に人のいない教室なので、声は小さかったが全員の耳に届いただろう。
ヤマダ(仮)だけでなく、大人しそうなサチまでが気分を害したように森を睨んでいる。
「佐久間が嘘ついたかも知れないでしょ。嘘じゃないとしても、本人は忘れていただけで無意識が指を動かして十円玉を動かしたかも知れないじゃない」
その通りだ。森が言ってるのは正しい。
だが、正しい事が常に受け入れられるとは限らない。
「煩せぇ、お前に言ってんじゃねーよ」
女子怖い。だからと言って俺が涙目になっても事態が良くなる訳でもない。
参ったな、女子の喧嘩に口を挟むつもりはないんだが。森を連れて来たのは間違いだったかも知れない。
どうしたものかと思い悩んでいると、十円玉に指を乗せたままの三人が「きゃ!」と声を上げる。
何事かとそちらを見る。
そして、すぐさま目を逸らす。
三人が指を乗せた十円玉、それが紙の上をスイスイと動いているのだ。
「やめてよ、冗談だったらタチ悪いよ!」
「私じゃない!」
「私だって!」
三人がギャーギャー言い合ってる。
ヤマダ(仮)は呆然としたようにその三人を見つめており、林は俺の後ろにいる。
つまり、それができるのは一人だけ。
そう、花子さんだ。
何してくれちゃってんの、君。
「何て言ってるんだ?」
そっと三人に声を掛けると、「えっと」と十円玉の動きを見守る。
「け、ん、か……は、やめて……?」
そうだけども!
確かにその通りなんだけど!
今の状況でそれやったらパニックになるだろ、花子さんっ!
「邪魔して悪かった。暗くなる前に帰れよ」
それだけ言って森を引きずって廊下へと逃げる。そんな俺の後ろを褒めて欲しそうに付いて来る花子さんは無視だ、無視。
風紀室に戻って振り返ると、案の定、森が不服そうに唇を曲げている。
「言いたい事は分かる。だが、時と場合を考えろ」
そう言うと、自覚があったのだろう。顔を強張らせて「頭冷やして来る」と外へと飛び出してしまう。
森は少しばかり感情的になりやすい。そう感じるのは、見た目とのギャップもあるのだろう。
それにしてもコックリさんにあそこまで嫌悪感を抱いているとは思わなかった。




