表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
比与森家の因縁  作者: みづは
紫の獣
5/103

5

悪態ついてみたって怖い物は怖い。

どうしてそこまで怖がるのって聞かれたら、そりゃ死んでるからだよって答える。

だってそうだろ。何で死んでるのにそこにいるのって思うよ。まぁ、いるのは個人の自由だ。それを俺が兎や角言う筋合いではないのかも知れない。

だったら、言い直そう。


俺の視界に入るんじゃねー!

半透明だったり俯いてブツブツ言ってたり、そんな物見たら誰だって怖いわ!


ああ、うん。例に上げたのだと死んでても生きてても怖いけどさ。

そんな訳で、可愛気のない足立の腕をぎゅうぎゅう握りしめて歩く。

痛いんですけど、とかホザイていたが無視だ、無視。俺の感じている恐怖に比べたらそれぐらいの痛み、どうって事ないだろ。


「目撃情報では二階の廊下でしたっけ」


一階には目もくれず、階段へと向かう。

うぅ、本当に幽霊を見る為に来たんだな、コイツ。

そこでハタと気付く。

足立は幽霊と遭遇したらどうするつもりなんだろう。


目撃する事によって、その存在を確認したいと言うのは分かる。だが、相手は幽霊だ。しかも、血だらけで首が折れていたらしいから普通の死に方ではなかったのだろう。

自殺と言うのはないと思う。ならば、事故か他殺……きっと殺されたんだと俺は思う。


何故なら未だに死体が発見されていないからだ。事故だったなら、五年もの間、誰の目にも触れずにいるとは考えられない。

そして、殺されたと言う事は、だ。それだけ恨みも大きいんじゃないのだろうか。


自分を殺した犯人に対する恨み、そして楽しそうに生を謳歌している俺たちへの怨み。

意識せずにゾクッと震える。

もしかしたら佐倉小花と言う女子生徒がここに捕われているのは、自分が死んだ時と同じ年頃の人間全員を恨んでいるからではないだろうか。どうして自分が死ななければならなかったのか、自分じゃなく他の人物が死ねば良かったのに。


それは八つ当たりと言うか逆恨みのようだが、そう思う気持ちも分かる。

自分にばかり不幸が舞い込めば誰だってそう思うだろう。しかも殺されたのなら余計だ。


「おい、足立」


じゃっかん震えた声で呼びかけると、足立がペンライトを俺に向ける。

暗闇に慣れた目にはその僅かな光ですら眩しくて思わず顔を顰める。


「幽霊の存在を確認したら帰るんだよな……?」


足立の目的は行方不明になった女子を見つける事。だが、見つけたからと言って即刻、両親の元に引きずって行くって事はしないだろう。


何か……ほら、そういう特別な儀式みたいな、準備みたいな物が必要だろ?


そう期待を混めて問い掛けたと言うのに足立は「そんな訳ないでしょ」と鼻で笑う。


「連れ出せるようなら、そのまま佐倉家まで引っ張って行くつもりです。それがダメなら原因を調べます」


地縛霊になった原因を探るのか……ご苦労な事だ。

そう他人事のように感心していたら足立が続けて言う。


「風紀の協力があれば、そう難しくないでしょうしね」


お前って奴は……この件が解決するまで俺を脅し続けるつもりか。いや、こいつの性格を思えば、卒業どころか、いつまでも俺を脅すつもりに違いない。


何でこんな事になったんだ。

もういっそビビリだと自分で公表してしまった方がいいかも知れない。

そうだ、そうしよう。

足立に右目を治して貰ったらおかしな物を見る事もなくなるんだから、俺が自分でビビリだと言っても実際はそうじゃなくなるんだ。


「バックレようとしても無駄ですよ」


続けられた言葉にギクリとする。そんな俺を見つめて、足立がうふふ、と不穏な笑いを浮かべる。


「祓う事が出来るなら憑ける事も出来ますからね、寧ろそっちの方が簡単ですよ」


あぅ。見透かされてる……って言うか退路が断たれてる。

可愛い顔してお前が鬼か悪魔か。ああ、祈祷師だっけ。


このまま俺はパシリ決定かよ、くそ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ