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比与森家の因縁  作者: みづは
白銀の狐
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10

そんなやり取りを経て、放課後、森と一緒に一般校舎を回る。

陽が傾いている所為か、はたまたコックリさんなんかが流行っている所為なのか。


ちょっとした影に変なのが寄り集まっているのが分かる。気になるけど見たらまずい。

凝視したら最後、ムクムクと形を取って襲いかかって来る。

だから無視だ、無視。


だいたいからして森と一緒なんだ。ここでビビったら、一ヶ月はバカにされ続ける。それは困るので、前だけ向いてスタスタ歩く。


放課後と言っても校舎が閉まるまで一時間以上はある。だから残っている生徒がいても軽く注意するだけなのだが、一年の教室で幾つかのグループがコックリさんをしていた。

校則で禁止されている訳じゃない。でも、見過ごす訳にも行かない。

口頭で注意した上、使っていた用紙は没収。


でも、怖いから用紙は全て森に預ける。当然だ。


「チキン」


口の中で小さく呟いてから森はクシャッと用紙を丸める。


「おい、それ何か手順があるんじゃないのか」

「バカらし、こんなのでコックリさんが来る訳ないでしょ。そもそもコックリさんって何者よ」

「狐とか?」


俺もいまいち分からないので、首を傾げながら答える。


「動物園じゃないんだから、道ばたにほいほい狐の幽霊がいる訳ないでしょ」


まるで相手にしていない口ぶりだ。でも、言葉を返すようだが俺に取り憑いている幽霊の一つは狐なんだけど。幽霊って括りに入れていいのか分からないけど、生きてないって意味では同じだろう。


「狐の幽霊だとしてもよ、どうしてそいつが何でもかんでも知ってるって事になるのよ」


そんな事言われても困る。俺はコックリさんじゃないし、俺に取り憑いてる狐も多分コックリさんではない。


「森はコックリさん嫌いなのか?」

「別に?」


パッツンの前髪を揺らしながら首を振る。

その割りに攻撃的だったような気がするんだが。


「やりたいならやればいいと思うけど、校舎でやるってのがイライラするだけ」

「は?」

「余計な仕事増やされて腹立てるなって方が無理な話でしょ」


なるほど。森が怒ってるのはそういう理由か。

まぁ俺も似たような気持ちなので分からないでもない。だからって、ちょっと俺様思考だな、森は。


「何か文句ある?」


ギロッと睨まれて、いえいえと首を振る。

こいつを敵に回したら恐ろしいと分かっている。だいたいからして、女装してるように見えると言っても美少女の部類に入るのだ。そんな綺麗な顔で睨まれるのは幽霊やコックリさんより恐ろしい。


二年の教室を回り、三年の教室へと向かう。

一組のクラスに入ると、四人ほどのグループが机を囲んでいる。

それを見て、やっぱりかと肩を落とすものの俺より先に森が声を上げる。


「何してるの」

「見れば分かんだろ、忙しいんだよ。話しかけてんじゃねーよ」


女子とは思えない口の悪さだ。怖い。


「用がないならさっさと帰りなさい」


攻撃的とも思える口調で森が言う。それに対してグループのリーダー的存在の女子が「うぜー」と言う。


「いい子ちゃんぶってバカじゃないの」

「バカはそっちでしょ、いい年してコックリさんなんて本気で信じてるの」

「文句あんのか、ブス」


マジ怖い。森にブスって言えるなんて相当自信があるんだろうな。

まだ教室にすら入っていない俺は震えるしかできない。だが、森の言葉は更に恐ろしい。


「私がブスならあんたは化粧ブスじゃん」


特に大声と言うほどではない。でも、森の声は廊下にいる俺にもハッキリ聞こえた。

酷い。スッピンの森にそんな事言われて俺が女だったら泣く。


「風紀の仕事増やしてんじゃねーよ、この低能化粧ブスが」


口調の変わった森に言われた女子以外がビクッと震える。

そう言えば、森は一組だったなと思い出す。と言う事は、ここにいるのは森のクラスメイトか。

何か因縁でもあるのだろう。だが、これ以上はまずい。いや、もう充分にまずいんだけど。


「風紀だ、見回りをしている」


森を押しやるように前に乗り出すと、その場にいる全員に睨まれてしまう。全員とはコックリさんをやっているグループにブラス森の五人だ。


「何よ、別に注意されるような事はしてないでしょ」


流石に森に対するよりも口調は女らしくなっているが、コックリさんをやめるつもりはないようだ。

だったら丁度いい。色々と聞きたい事があるのだ。


「放課後に用もなく居残られるのは迷惑だが、確かに校則違反ではない。だから別にそれを注意するつもりはない」


そう言うと、背後の森から殺気が飛んで来たような……気の所為だな、錯覚に違いない。

それに、教師連中がコックリさんに関してまだ禁止を出してないんだから、今のは俺の所為じゃないんだ、優柔不断な大人が悪いんだ。


「イインチョー、話分かんじゃん」


森とやりあってた女子……えぇい、面倒臭い。仮にヤマダと呼ぼう。


ヤマダ(仮)が妙に馴れ馴れしい口調で俺に向かって笑顔を浮かべる。

森は化粧ブスと言っていたけど、ここまで可愛く化粧できるのは大したものだと感心する。素顔は知らないけど。


「ただ質問がある。少し時間貰ってもいいか」

「いいよー、何なに」


そう言ってヤマダ(仮)は十円玉から手を離すと、他の三人が「エミ!」と鋭い声を上げる。

ヤマダ(仮)はエミと言う名前らしい。

それは兎も角。


俺だってコックリさんのルールぐらい知っている。何しろ、正木がしょちゅうやってるんで。

それによると、コックリさんを呼び出したら帰すまで手を離してはいけないとなっている筈だ。三人の態度から見て、コックリさんは来ていたのだろう。


「大丈夫だって。こんなのサチかミユが動かしてたんでしょ」


ヤマダはあっけらかんとした調子でそう言う。だけど、本当にそうだろうか。

三人のうち、どれがサチでミユなのか分からないが、顔色を見る限り悪戯していたようには思えない。


「そんな事よりさ、イインチョーがお話したいって言うんだからこっちが優先デショ?」


どうして優先されるのか分からないが、俺にとっては都合がいい。

 

「すぐに済む。コックリさんをやってる理由を教えてくれ」

「ヒマだからー?」


ヒマだと言うのなら勉強でもすればいいのに。そうは思うが、言ったところで無駄だろう。

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