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そんな訳で早朝から登校してみる。
どうやら教頭が発見されたらしく、学校の中も外も騒がしい。旧校舎で白骨と一緒に教頭が死んでいたんだから、ちょっとしたミステリーになってる事だろう。でも、きっと解決は不可能だ。教頭が花子さんを殺したところまでは辿り着けるかも知れないが、それ以上は無理だ。
ま、花子さんの身元が特定されて無事、家族のもとに帰れるなら俺はそれでいい。
そんな事を考えながら一年の教室へと急ぐ。予定としては、足立がいたら呼び出して昨日のお礼と謝罪をするつもりだ。
本当はお礼を言うのも釈然としないんだけど、取りあえず呪い殺されるしかない状況から助けてくれたのは足立だし。たとえ、狐を俺に憑けたんだとしても……今すぐ死ぬよりはマシだな、うん。
謝罪は、調子に乗ってやり過ぎた事についてだ。
途中までは確かにシロウだったと思う。だけど、一晩経ってみると、シロウの所為だけにするのは間違ってるような気がして来たのだ。足立からいい匂いがしたのは事実だし、その唾液が甘かったのもやっぱり事実だ。最中に嫌悪感なんてまるでなかった。
俺がしたくてやった事……そう考えても何らおかしくないんだよなぁ。
だから謝罪の内容は足立の意思を確認しなかった事についてのみだ。行為そのものについて謝る気は全くもってない。
そもそも、足立にキスした事をまるで後悔してないんだよ、俺は。
男だろうが女だろうが、やりたかったらやればいい。そして、俺はあの時、確かに足立にキスしたかった。それだけ足立に好意を抱いているという証拠だ。だから、疾しい事など一切ない。
まぁ、いきなりベロチュウはちょっとやり過ぎたかなとは思うからそこだけは謝ろうと思う。
一年の教室は思った通り、人の姿も疎らだった。ザッと見回して足立がいない事を確認する。
いい加減、携帯聞いて置くべきだったな。
そう肩を竦めると、顔なじみになるつつあるウサギっぽい一年生が「足立ですか?」と聞いて来る。それに頷き返す。
「おい、足立!」
その声にこちらを振り返ったのは、似ても似つかない別人だ。
いかにもイジメて下さいと言った様子のオドオドとした男子が怯えた目で俺を見る。
「お前が足立……?」
幾ら俺が怖そうだからって、そんな泣きそうな顔しなくても。
ああ、これは本当にイジメラレてるんだな。だから、ずっと欠席してたのか。
「風紀の林だ。何かあったら遠慮なく言ってくれ」
それだけ言って来た廊下を引き返す。
黙々と歩きながら、一年の足立はこの学校に一人しかいないと言う事を思い出す。これは風紀にある生徒名簿で確認したから間違いはない。
じゃ、俺が昨日まで一緒にいた足立は誰だ……?
そこまで考えて、更に思い出す。
そう言えば、俺が足立と会ったのは昼休みや放課後、それも教室以外で周りに生徒が少ない時ばかりだ。つまり、どういう事だ?
……そうか。
あいつが偽名を使ったところで、それを知る人物が傍にいなかったのだ。
いや、偽名どころの話ではない。もしかしたら、この学校の生徒でもなかったんじゃないか?
入学式が済んでまだ間がないのだ。制服さえ着ていれば、廊下を歩いているぐらいでは部外者だとバレない可能性は高い。何て事だ。
俺はずっと騙されていたらしい。
やたらと幽霊に詳しくて、俺に犬だけじゃなく狐まで憑けた……あれは一体誰なんだ。




