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犯人を絞り込む手がかりが他にもないかと考えてみる。
花子さんと佐倉小花、二人の共通点は死んだ時にこの学校の生徒だったこと。他にも何かあるだろうか。
少し考えて、ダメだと溜め息をつく。情報が少な過ぎる。
だが、そこでふと考え直す。
足立は佐倉小花の両親に依頼されて首を突っ込んだのだ。だったら俺よりも佐倉小花について詳しいんじゃないか?
「どうしたんですか」
急に黙り込んだ俺を訝しむように足立が振り返る。
「佐倉小花についてもっと調べればよかったと思って」
正直にそう言うと呆れたように鼻を鳴らす。
「前にも同じ事を言ってましたよね」
「あの時は殺されたって言われても半信半疑だったし」
すると、俺の言葉の何かに引っ掛かったらしく目元を険しくさせる。言った当人である俺は何が足立の気を引いたのか分からないのでキョトンとするしかない。
「何を調べるつもりですか」
何って、そんなの具体的に分かってたら世話ないだろ。
そうだな……たとえば、佐倉小花がどうして旧校舎で死んだのか。その理由が分かれば少しは前進するかも知れないか。
そうだ。佐倉小花は下校後の姿を駅で目撃されているんだ。それって、つまり一度帰宅してからまた学校に来たって事だろ。しかも制服のまま。
次の日じゃ間に合わない何か大切な用があったって事じゃないのか?
顔を顰めたままの足立にそう言うと、何だかよく分からない複雑な表情になる。
「注目すべきはそこじゃありません」
「じゃ、どこだよ」
「佐倉小花を駅で目撃したと証言した生徒の名前です」
え?
まさか偽証だったと言うのか?
でも、そんな事をして何のメリットがあるんだ。ここまでの前提から犯人は教師だと思っていい筈だ。生徒だと年齢があわない。
だったら共犯なのか?
だけど、どんな理由があったら殺人の手伝いをしなくちゃならないのか、俺には全く想像がつかない。
足立はそれを知っているのだろう。だから聞こうとしたのだが、途中で息を飲む。
ピチャ……ズル……。
この前と同じく、泥の中を何かが這うような音がしたのだ。いや、泥じゃなくて血だ。
花子さんがいるらしい。
またあのグロテスクなものを見るのかと思うと、気が遠くなりそうだが、こんな所で気絶したら足立は間違いなく俺を放置して行く。そんな事になったら朝になるまで片足のない花子さんい添い寝されてしまう。
カタカタ震える俺を見て、足立がうんざりとした溜め息をつく。
「いい加減、慣れるって事ができないんですか」
できたら苦労しないわ!
まだ、二回目なんだぞ。たった二回で恐怖体験に慣れる事ができるなら、俺はビビリなんかじゃなくなってるわ!
そう怒鳴り返せたらいいのだろうが、残念な事に「お、おぉ……お」と意味不明な呻き声しか出せない。自分でも本当に残念だ。
「まぁ、いいんですけどね」
そう言って肩を竦めると、迷う事なく前方にいる花子さんへと近づいて行く。
どうやら、相も変わらず廊下を這っているらしい。
その傍に膝をつき、何を思ったのか花子さんの手を掴む。
ヒィ!
幽霊の手を掴んだよ、あの子。何考えてるの!
しかもただの幽霊じゃない。血だらけの幽霊だよ!
膝が震えて立っているのもやっとの状態なので、ガクガクしながら壁に手を当てる。
もう幽霊が怖いんだか、足立が怖いんだか分からない。
「シロウ」
短く呼ばれて、俺の中にいる犬が歓喜の声を上げる。
バカぁー!
こんな時に呼ぶんじゃない、お前に呼ばれたら犬がそっち行こうとするだろうが!
絶対に行くものかと壁に爪を立てるけど、足は前へと進んでいる。
俺、涙目。
でも、そんな俺の意思を無視して犬は足立の傍へと向かう。
うぅ、やっぱり血だらけだ……長い髪が散らばってるだけで怖いのに、それより黒い血が辺り一面に広がってる。
「腕を食いちぎれ」
いやいや、そんなの無理だって!
そりゃ、お前が飼ってた式神は犬なんだろうけど、今は俺の中にいるんだよ。そして、俺は人間!
どうやって幽霊の腕を食いちぎれと言うのー!




