13
教材室って言うか倉庫だったらしい。
乱雑に詰まれた段ボールを掻き分け、二人で佐倉小花を探す。
「あ、これですね」
山と詰まれた段ボールの一番下を足立が指差す。
「どうして分かるんだ」
「匂いがします」
そうか?
俺には埃っぽい匂いしかしないけど。
でも、足立がそう言うならそこに佐倉小花はいるのだろう。
苦労して上に乗った段ボールをどかす。
「開けて確認するか?」
「しない方がいいでしょう」
「どうして」
「……五年前の遺体ですよ?」
う……それはちょっと見たくないな。
白骨化してたらまだいいが、少しでも残ってたらグロいなんてものじゃない。
ああ、だからさっき匂いって言ったのか。
「このまま佐倉小花の自宅まで届けましょう」
「どうやって」
「タクシーを呼びます」
そう言ってさっさと廊下に出てしまう。ちょっと待て。
タクシーまでどうやって運ぶんだ。まさか俺に持って行けと言うのか?
廊下で電話を使う足立とすぐ傍にある段ボールを見比べる。
「早くして下さい」
やっぱり俺が運ぶのか。
まぁ、ここまで来たら別にいいけど。
段ボールに手を掛けると予想に反してかなり重い。これじゃ持ち上げるのは無理だ。かと言って女の子の遺体を引きずる訳にも行かないし。
どうしようか迷って、段ボールの口を開く。すると重いのも当然で、中にはアルミ製の旅行鞄が入っていた。取手がある分、こっちの方が持ちやすいだろう。
思った通り、段ボールよりはマシだった。
それを苦労して外まで運び、待っていたタクシーに乗り込む。
運転手がトランクに入れるかと聞いてきたが、少し考えて断る。可哀想だ。
二十分ほど揺られて到着したのは普通の一軒家だった。表札に「佐倉」とあるので、ここが佐倉小花の自宅に間違いないのだろう。
俺が旅行鞄を運び出している間に支払いを済ませた足立が佐倉家のインターホンを押す。
「林先輩は帰った方がいいですね」
「そうなのか?」
「はい。これ以上の面倒に巻き込まれたくないなら」
少し考えて頷く。
俺が佐倉小花の両親と会ったところで、いい事は何もないだろう。何も説明できないし、あちらからしたら俺が何者なのかも知らないだろうし。
「じゃ、悪いけど」
「いえ、こちらこそ」
小さく呟いた足立が続けて言う。
「先輩のおかげで助かりました、ありがとうございます」
殊勝なその言葉に思わず振り向いてしまう。だが、足立はさっさと行けと言わんばかりに背中を向けたままだ。
まぁ、いいか。
聞きたい事は山ほどあるが、無事に終わったんだから今日は帰るとするか。
風呂に入ってグッスリ寝て、明日、足立に聞けばいい。