9.死にもの狂いの逃走2
まだ終わりません
「そうですね、はい。ごめんなさい」
右手に持っていた車を下ろして、少女はペコリと頭を下げた。
助かった?
「一度目ので、誰も起きていないといいんですが・・・。起こしていたら、申し訳ないですね、はい。どうしましょうか」
「おい! あんたこっち来い!」
腕を引っ張ると、抵抗することなくこっちにきた。余裕なのか危機感がないのかアホなのか。
「え、なんですか。自分の命を狙った相手をナンパしてるんですか?」
「いいから来いって」
嫌なら振りほどけばいいのに。こいつ大丈夫か?
少し離れたくらいで、車が爆発する。
距離をとっても、その熱風や震動は届いてきた。
これで間違いなく大勢が気付いただろう。
「はわわわわ。やっちゃいました」
少女は年相応の女の子っぽく慌てふためく。因みに、俺には十二歳に見える。
アホの子なので、簡単に答えてくれそうだと思って質問してみた。
「なあ、いくつか聞いていいか?」
「はい? なんですか?」
「あの記事はなんだ? 俺が見るタイミングを見計らったかのような。ハッキングに成功したタイミングも、仕組まれてるようだ・・・」
「記事? ああ、あれは間谷さんの『力』だよ。電波を飛ばして、電子機械やらなんやらを操作できるの。メッセージを飛ばしたり、逆に周辺情報受信したり。なんでも出来るの。現代社会では最強だって」
間谷さんが言ってた。
「聞いてないことまでありがとう。君といい、間谷さんといい、その力は一体・・・」
「ノー! 言えません!」
「言えよ」
「う、仕方ないですねぇ。ちょっとだけですよ」