5.茶番劇
茶番が終わらない、話が進まない。死活問題ですね。
普通に流されることとなった俺の痴態談は、パソコンを消すことによって終止符が打たれる。と、いうのが俺の望む結果だが、世界は俺に優しくない。
「夜中にエロ動画。なるほど」
「やあ、納得しないで蛍ちゃん」
「ゴメンね。お姉ちゃん胸大きくなくて。ゴメンね」
「なんか、その。あの、別に・・・」
「お姉ちゃんにも。いや、妹の私にもその動画。見せて」
「バカだろ」
置いておくんじゃなかったのかよ。誰が姉と姉もののエロ動画見るかよ。そんな地獄みたいな時間耐えれるかって。羞恥心に殺される。
そっと、姉ちゃん。蛍ちゃんはパソコンに手を伸ばした。
「させるかよ」
俺は腕を掴んでそれを静止した。これ以上危害を加えようとするものなら、力と筋肉とこの二の腕で追い払わせてもらおう。
自然と腕を握る手に力が入る。
さあ、どう来る。
蛍ちゃんは。
いや、もう姉ちゃんと言ってもいいだろう。
姉ちゃんはゆっくりと口を開いて、頬を赤く染めながらこう言った。
「やだ。強引」
選択肢。
一、殴る。 二、殴る。 三、殴る。 四、殴る。 五、殴る。
殴る。
「痛いっ! ひど! 妹を、お姉ちゃんを、姉妹を殴るなんて!」
「あ、ごめん。つい」
「つい!? そんなんでお兄ちゃん弟は妹姉を殴ったの!?」
「い、痛ぁい」
ホロリと涙が落ちる。
一滴落ちると、次から次へと涙が零れる。
もはや殴られた頬の痛みのみではない。心の痛みが彼女を苦しめる。
ずっと仲の良かったお兄ちゃん弟に、殴られたのだ。はっきり嫌いなんて言わずに、こんな妹姉に付き合ってくれてたあのお兄ちゃん弟が。
殴ったのだ。
嫌われたのか? そう思うと本当に悲しくなってくる。もう自分では抑えきれない感情が、胸の奥から涌き出てくる。
この小さい胸から。
いっそ涌き出てくる感情とともに胸も涌き出て来てくれれば、少しはこの悲しみも紛れ。ないな。
思わずその場に泣き崩れてしまった。
「う、わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」
膝から落ちた超痛い。
× × ×
語り手を奪うくらい悲しんでいるこの姉を、ひとまず自室に連れていく事にした。
「姉ちゃん。抱えるぞ」
そう宣告して抱える。足と身体を支えて。優しく包むように。
いわゆるお姫様抱っこだ。
「和美っ、お兄ちゃん・・・」
「濡れた顔を拭け。言っとくけど俺の服では・・・」
ごしごし。ごしごし。ごしごし。
「・・・」
「えっへへー。お兄ちゃんのお姫様抱っこだ」
「今夜はもう寝ろ、美容に良くないぞ」
「うんっ!」
子供か。