2.夢の国
『のらない』二部目
『飽くなき』というのは、あくまでも飽きることのない、どこまでも満足することのないということであって、『悪無き』ということではない。
つまり、悪意のある探求心もまた、飽くなき探求心であり、求め続ける彼もまた、探求者と呼べるだろう。
探し、求め続けることこそが探求者の本分であり、現在探求し続けている彼こそが探求者の鏡だ。
しかし、残念ながら彼は探求者というより遺跡荒らしであって、解としてはただのハッカー。クラッカーとまではいかずとも、正規ルートを通っていない時点で、彼は一般的なインターネットの楽しみ方をしているとは言いがたい。
にしても先程からしきりにキーボードを叩く。
薄暗い部屋に、パソコンから放たれる微弱な光が広がっている。
ここまで数年。ハッキングを学んでから手に入れたい情報を探し続け、ようやくサイトを見つけたにもかかわらずガードが固い。捜索に半年。ハッキングに半年かかっている。
ストレスが溜まって仕方なかった。
一度、疲れた目を休めるためにイスを引く。
目頭を刺激しながら軽いストレッチを行うと、体の所々がパキパキと音をたてるので、だいぶ動いていなかったことがわかる。
デジタルの腕時計を確認すると、既に時刻は一時を回っていたので、もう眠ることにした。
金曜ということで時間をあまり気にしていなかったが、いざ確認すると、習慣として眠気に襲われる。俺は大きいあくびをした。
思えばこの眠気に襲われるという表現も変だ。
大抵の人は、この眠気に抗って仕事や授業に取り組んでいるから、襲われるという言い方も納得するが、今の俺は眠気を甘んじて受け入れている。
ベッドに潜りこみ、目を閉じた。
俺は襲われている訳ではないのだ。と、いうことで三大欲求の睡眠欲に誘われて夢の国へと――――。
行こうとしたのだが、夢の国非公認キャラクターの蛍ちゃんにそれを阻まれた。