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個人的要望の通らない日々  作者: 北松文庫
2.予算残高のように命、減る日々
18/31

18.意味の無かった物語

   × × ×


 助かって、落ち着いたから生まれた油断だが。それでも、たった先程まで殺そうとしていたターゲットに油断をさせる古乃華の独特の雰囲気は、もはやそれすら彼女の武器と思わされる。


 彼女自身が使いこなせていない時点で、足手まといの能力だが。


 俺は一旦彼女を置いてホテルに戻ることにした。


 事情を話せば逃げたことに対して咎められることはないだろうし、彼女もなんとなく生かしておきたいからそういったことも、彼女が起きる前に済ませよう。


 いくら上手く入ったといっても、素人の蹴りだ。すぐに起き上がられたとしてもなんの驚きもない。


 彼女自身が生きることを拒む前に。止めるように言っておこう。


 俺が会うことはもうないだろうな。てか会いたくない。一応塞翁(さいおう)さんに任されたぶんは何とかするが、その後の面倒なんて見たくない。


 見れない。


 体がだるくてこれ以上動くのも面倒だなと思い、古乃華が通信機機を持っていないか探した。一見気絶した女性を襲っているようには見えるが、女性という年ではないし、何より命を狙ってきた相手に、いちいちそんなに気遣いは出来ない。


 見た感じポケットらしきポケットは見つからないので、袖やら・・・。服の下はなぁ。


 見るか? いやそこまでは出来ない。でもこいつ俺を殺そうとしたしなー。いいかなー。いや、通信機機探すだけですよ? 本当。


 

 殺気の無い空気に触れたとたんに素に戻る扇状の特質さを、果たして普通の高校生のエロに対する姿勢と同様とあらわしても、良いのだろうか。

 

 高校生に失礼じゃないか。


 かといって彼がどこか特別かというと、そうでもない。


 似たような性格をした男子高校生が、この世にいないとも限らない。


 だから、結局なにもできないままもう一度彼女と対面することになった彼を、誰も攻めたりは出来ないとおもう。


 

 「う、うう」


 彼女はゆっくり体を起こした。


 「あれ、どのくらい寝てたっけ。お父さん・・・」


 「お父さんはいない。ここは本部近くの森だ。お前は俺をまだ殺す気か?」


 なんで落ち着いて会話しているのか、自分でも分からない。


 自分だからこそ分からない。


 「せ、扇状さん。なんで逃げていないんですか!? バカなんですか!? いたっ!」


 「逃げてた方が良かったのかよ・・・。まさかこんなに早く起きるとは思わなかったんだよ。本当に何なんだ、お前らのその『力』って」


 「・・・ごめんなさい扇状さん」


 急に謝ってもらっても許せないよ。なにしたと思ってんだ。


 「私は、暴れて少しスッキリしました。扇状さんが殺したわけじゃないですね。はい」


 「ん。なに都合良く終わらそうとしてんの?」



 「お父さんを殺したのは、別の組織の。『エンプロイー』です」


 「『従業員』。それが彼のコードネームです。私は因みに『フールウィズシザーズ』。どういう意味でしょう?」


 『フールウィズシザーズ』。


 『馬鹿と鋏』は使いよう。


 成る程。


 「扇状さん。ごめんなさいです。あなたのせいだとも思っていますが、『従業員(エンプロイー)』を倒すには、あなたの力が必要です。だからもう蹴らないで下さい」


 そう言われて、俺は目の前で土下座している女の子への蹴りを止めた。


   × × ×


 

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