15.何度も落ちる
同じことの繰り返しになってしまいました。注意されたのに。
× × ×
人は飛びたいと、大空を羽ばたきたいと。そうして飛行機を作り、パラシュートを作り、夢へとダイビングする。
でもダイビングが楽しいのは、安全が考慮されているからだ。海へも、この高さは大丈夫だと思うから。バンジーも、命綱があるから。空へも、パラシュートがあるから。
六階の自室からのダイビングが、楽しいわけない。
俺は空中でゆらゆらと揺れることなく、自由落下で不自由に落ちる。
事の始まりは数秒前。
突如襲ってきたアホの子から逃げるため、唯一の逃げ場。窓から飛び出した。
しかし思いの他高かった。既に空中、なにができようか。人類よ、そんなに飛びたいなら、飛行能力を身に付けてくれ。重力からは逃げれない。
はたして木をクッションにした程度で助かるのか。目の前に木が迫る。そもそもなんであいつが急に俺を殺す気になったんだ。
リムジンの中では大人しかったのに。間谷さんがいたからかな。
再び数秒前に戻る。
俺は走りながら説得に入った。後ろではドアが振り回され続け、壁がどんどん削れていく。
あんなの投げつけられたらひとたまりもない。逃走の為に近くの椅子を掴んだ。
「まて、話をしよう!」
「無理、殺す、死ね」
「なるほど分かった」
俺は椅子を窓に投げつけて割り、飛び出す。
まさかこの数秒後に後悔することのなるとは。
今も若干後悔している。
× × ×
お父さんの敵をと言ってもいい、扇状さんは、私のドアめがけた初撃をかわす。
武器としてドアを引きちぎり、振り回した。何度も何度も振り回すが、当たらない。
「まて、話をしよう」
そう言いながら、彼は椅子を手に取った。
こうしょうけつれつしたら、私とそれで戦うつもりなのかな。無理、勝てないよ。
それに私は、扇状さんを助けるつもりは、水に流してきた。使い方合ってる?(合ってません。別のものを流してたらこんなことにはなりません)。
私ははっきりこう言った。
「無理、殺す、死ね」
「なるほど分かった」
私の答えに、そう返してきたので。来るか、身構えた。
しかし彼の取った行動は、以外なものだった。
あ、別に以外じゃないもん。想、定、内だ。
椅子を窓に放り投げ、割った。
そのままなんの迷いもなく、飛び出す。
「あ、まじかぁぁぁぁぁぁぁ」
楽しい。
× × ×
隣の部屋が先程から騒がしい。
寝れないだの、ドアをぶち抜く音がしたりするだの、迷惑だ。こっちの身にもなってみろってんだ。新型が現れたと聞いて調査したり、報告書出して、ミスがあって、他の仕事押し付けられて、やっと二日ぶりに寝れるってのに。
あ、窓が割れる音がした。全く窓もただじゃないってのに。
「あ、まじかぁぁぁぁぁぁぁ」
「うるさいぞ!!」
ったく。
これだから新人は。
× × ×
隣の部屋の人には申し訳ないと思う。
「うるさいぞ!!」
落下しながらそんな声が聞こえてきたので、謝らないと。
今は受け身で忙しいので、今度にしよう。
次々と太い枝に上手いぶつかり方をして(気分)、地面に落ちる。
「ぐえっ」
数秒、きを失った。
「ん・・・。はあっ! 学校! じゃなくて。これお決まりな」
体に異常はないか? 骨、切り傷、打ち身。
よし、大丈夫。
今は、問題ない。帰って病院行こう。
この本部から早く離れないと。
現在地はどこだ? 体感では一時間くらい移動してた気が。外はまだ薄暗いし。六時くらいか?
ゆっくり体をおこして歩き出す。
二章幕開け最悪。色んな意味で