12.めいど
時間が経つと止まる仕組みで、止まると爆発する熊人形。
間谷さんがそれを止めたのが合図となった。
「逃げろ!!!」
「へぇぃ、りーかいしました!」
彼女のふざけた返答が帰ってきたので、安心して俺も逃げることにした。爆風に紛れるように、特製煙幕も投げ入れる。
自転車は・・・壊れていたので、荷物を持って走り出した。
どこにいこうということはない。ただ今はこの場から逃げる。それだけだ。
あの子が一人で逃げることができるか心配なので、彼女を探しながら逃げる。
辺りを見回しても、彼女の姿は見えない。煙幕多いな。でも、
「うわぁぁぁぁぁ―――――」
と、大声を出して逃げている? ので方向は分かった。間谷さんが追い付く前に回収しよう。
俺はその方向に向かって走った。
多分真っ直ぐ走っている。多分。
全くと言っていいほどになにも見えないので、目の前に急に現れた謎の巨体に、そのままの速度でぶつかってしまった。
「いてっ」
思わず後ろに弾かれる。
巨体はびくともしない。
「なんだ兄ちゃん。急ぎか?」
「いや、すみません。ぶつかってしまっ・・・」
なんでこいつこんなとこに平然と立ってんだ?
疑問を持つのが遅かった。
「こんな兄ちゃんが、間谷の。咄國のセキュリティ何度も突破してたとはな。恐れ入る」
大男は、俺を道端のゴミを拾うかのように、つまみ上げた。
「こ、このぉ!!」
木刀で殴り付けてもびくともしない。ただ圧倒的に立ち塞がる。
ニヤリと笑った。
二人とも。
「よお、兄ちゃん。めいどを助けようとはなかなかだな」
「へえ、あいつメイドなんですか」
「? 名前だぞ。明所。発音が違う」
「明所、凄い名前だな・・・。名字は?」
「古乃華。このはな、だ」
珍しい。じゃなくて、逃げないと。
「あの、俺をはなして貰えます?」
「無理だ。お前は気に入った、合格」
「・・・はあ。分かんないです」
「俺らの組織に入れるんだよ、お前を」
「は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「いや、お前を」
× × ×
「はっはっはぁ。ごめんな扇状くん。試すまねして」
黒スーツが不似合いな男。間谷咄國は、夜の駅前にて笑う。目の前には、アホの子、古乃華明所と、大男。塞翁正人も並んでいた。
「扇状さん。騙されましたね。私の演技に」
「ごめんな明所。お前も騙して。お前に演技とか無理だと思ったから」
ぐう。と、明所は唸った。
俺が唸りたいよ。
「扇状さん。そんなに私を見つめても、なにも出てこないですよ。ちらっ」
「睨んでんだよ・・・」
なんか空回りして、どっと疲れが押し寄せてきた。