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個人的要望の通らない日々  作者: 北松文庫
三大欲求さえ通らない日々
12/31

12.めいど

 時間が経つと止まる仕組みで、止まると爆発する熊人形。


 間谷さんがそれを止めたのが合図となった。


 「逃げろ!!!」


 「へぇぃ、りーかいしました!」


 彼女のふざけた返答が帰ってきたので、安心して俺も逃げることにした。爆風に紛れるように、特製煙幕も投げ入れる。


 自転車は・・・壊れていたので、荷物を持って走り出した。


 どこにいこうということはない。ただ今はこの場から逃げる。それだけだ。


 あの子が一人で逃げることができるか心配なので、彼女を探しながら逃げる。


 辺りを見回しても、彼女の姿は見えない。煙幕多いな。でも、


 「うわぁぁぁぁぁ―――――」


 と、大声を出して逃げている? ので方向は分かった。間谷さんが追い付く前に回収しよう。


 俺はその方向に向かって走った。


 多分真っ直ぐ走っている。多分。


 全くと言っていいほどになにも見えないので、目の前に急に現れた謎の巨体に、そのままの速度でぶつかってしまった。


 「いてっ」


 思わず後ろに弾かれる。


 巨体はびくともしない。


 「なんだ兄ちゃん。急ぎか?」


 「いや、すみません。ぶつかってしまっ・・・」


 なんでこいつこんなとこに平然と立ってんだ? 


 疑問を持つのが遅かった。


 「こんな兄ちゃんが、間谷の。咄國(とつくに)のセキュリティ何度も突破してたとはな。恐れ入る」


 大男は、俺を道端のゴミを拾うかのように、つまみ上げた。


 「こ、このぉ!!」


 木刀で殴り付けてもびくともしない。ただ圧倒的に立ち塞がる。


 ニヤリと笑った。


 二人とも。


 「よお、兄ちゃん。めいどを助けようとはなかなかだな」


 「へえ、あいつメイドなんですか」


 「? 名前だぞ。明所(めいど)。発音が違う」


 「明所、凄い名前だな・・・。名字は?」


 「古乃華。このはな、だ」


 珍しい。じゃなくて、逃げないと。


 「あの、俺をはなして貰えます?」


 「無理だ。お前は気に入った、合格」


 「・・・はあ。分かんないです」


 「俺らの組織に入れるんだよ、お前を」


「は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 「いや、お前を」


   × × ×


 「はっはっはぁ。ごめんな扇状くん。試すまねして」


 黒スーツが不似合いな男。間谷咄國(まだにとつくに)は、夜の駅前にて笑う。目の前には、アホの子、古乃華明所(このはなめいど)と、大男。塞翁正人(さいおうまさと)も並んでいた。


 「扇状さん。騙されましたね。私の演技に」


 「ごめんな明所。お前も騙して。お前に演技とか無理だと思ったから」


 ぐう。と、明所は唸った。


 俺が唸りたいよ。


 「扇状さん。そんなに私を見つめても、なにも出てこないですよ。ちらっ」


 「睨んでんだよ・・・」


 なんか空回りして、どっと疲れが押し寄せてきた。

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