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個人的要望の通らない日々  作者: 北松文庫
三大欲求さえ通らない日々
11/31

11.その時を待つ

  × × ×


 目標はプロ。勝とうとは思わない。でも、こいつとヘリを逃がす時間は稼ぐ。なんとしても。


 なんの間違いがあっても殺させねえ、もちろん俺も死なねえ。


 死んでも助けるなんて戯れ言だ。絶対死なねえ。


 決意を固めて、荷物の中から友人に貰った木刀を取り出す。腰に仕掛けた、ネットで購入したスタンガンを確かめる。


 特製煙幕はどこにしまったかな。あいつから目を話さずに荷物を探る。


 「何をするつもりかな?」


 男が問いかけるが、答えない。


 見つけた特製煙幕と、ついでに別の武器も一緒にポケットに仕込んだ。


 「僕に勝つ気か? 無理だと思うけどな」


 確かに、さっきは勝とうとは思わないとか思ったけど、逃走成功すれば、一応勝ったことになるかな。


 一泡吹かせたとして。


 

 吹かされた。


 先手を取られてしまった。


 腰のスタンガンを逆に利用され、最小の威力ながらも全身に電流が(ほとばし)る。


 「いっ!」


 変な声がでた。


 急いで腰からスタンガンを外して放り投げた。


 「あれ、全然効いてないな。扇状くんそれ使えんの?」


 「・・・っつ!」


 大丈夫。体は動く。次の手を取らないと、行動の先を読まれ続けると勝てない。


 こいつを使うか。


 「おいおい、大人は無視するものじゃないぞ。あんまりなめていると・・・」


 「煩いですよ、間谷さん。戦闘中に、殺し合いの途中にべらべらとお喋りするもんじゃないです」


 マンガやアニメじゃあるまいし。


 俺はポケットからそれを取り出した。


 「ん? それは?」


 「今、お喋りはしないと、そういったじゃないですか」


 気づかれる前に男の方にそれを投げる。野球ボール大の、太鼓をぶら下げた熊の人形だ。


 人形は地面に落下すると、肩からぶら下がっている太鼓を叩き出す。


 トムトムトムトムトムトム。軽快にリズムよく太鼓を叩く。


 「?」


 男は、なにがなんだか分からないという様子で、じっとぬいぐるみを眺める。


 「あ、もしかして爆弾かな。そうだね」


 答えない。


 「あの太鼓は時限式かな。近づくわけないよね」



 「君はどうやら彼女を逃がしたいんだろうけど、彼女にあの組織以外の居場所はないからな」


 

 「無駄だぞ、自分だけ逃げようとしろ。ヒーローのつもりか?」


 

 「君がなにを知りたかったのかを、僕らは知ってる。証拠隠滅に手出しせずに、誰にも何も言わないと約束するなら、君だけは逃がしてあげよう。君が知りたいことも教えよう。君は損しないだろう。どう?」



 「そんな簡単に逃がしてくれるなら、最初から襲撃してこないだろ。こんな大規模の事件を起こしてまで追いかけたターゲットを、そんな風に逃がさないだろ。そう思ってるな」


 トムトムトムトムトムトムトムトムトムトムトムトム。


 「うるさいなあ、なんだあれ。止まれよ」


 男の目はあの熊に向く。


   × × ×


 今だ、あいつが目をそらす瞬間をずっと待っていた。


 本命の武器を取り出す。特製煙幕だ。


 あの熊は何でもない、ただの時限爆弾だ。

 

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