表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/16

こうして俺は託されて

「いやあ、楽しかったな。特に飛鳥の反応が」


「楽しんでたのそこだけでしょ? 私の反応だけを楽しむお化け屋敷楽しかった? 沙耶と穂香は私いじるの好きだものね」


「悪気があったわけじゃないんだ。純粋に飛鳥の教室で遊びたいと思ったら偶然そこがお化け屋敷だっただけで」


「まあまあ、そんなに気落ちしないで。君もそう思うだろ? 快君」


「いや、俺もかなりやられた……」


「こっちは違う意味でダメージ食らっていたか」


額に手を当ててやれやれなんてやってるが一番楽しんでる彼女がなんかやらしい。

あれから場所変わって再び校舎裏、途中飲み物と食べ物を購入してベンチに飛鳥を真ん中に三人で座り込んでいる。飛鳥はいつもの笑顔はどこ行ったレベルの乾いた表情をしながら頭をこっちに預けている光景は最近見なかったのだが、久しぶりなのか余計に強烈だったっぽい。その結果が今の彼女な訳だが、これだと去年とその前の二の舞な気がする。


「本当に仲良いな君達、普通なんか恥ずかしがったりするものだろう? まして人前だぞ?」


「慣れてるから、これ」


「今の気分で人前気にしてたら私もう無理よ。もう快がいないと私生きていけない」


「熟年夫婦か。まさか掛け声一つで相手がなに考えてるか分かるとかそんな意味わからんことまでできたりしないだろうな」


「え、普通でしょ?」


「ずいぶん前よそれ、できるようになったの」


確か高校入って間も無くだったか。飛鳥とリビングにいる彼女を呼んではいはいと返されてコーヒーを出されたのが最初だった気がする。


「本物の以心伝心を今初めて知った……」


やれやれの次はため息か。

まあ確かに俺と彼女の関係は周りから見れば異質なのだろうが他の人達でもこの域には来るのではなかろうか、よく白兎から聞かされるゲームの話でも普通にいるし。


「私たちの話はいいわ。それよりも楽しかった?」


「勿論、なかなかのクオリティだった。それに他の模擬店もいい線行ってる。高校生でやるには十二分すぎるくらいだ。熱気も私達のライブに負けず劣らずって感じがいい」


「まだ遊んで行くんでしょ? 次はなに行こうかしら。今年はお化け屋敷私達のクラスしかやってなかったからそれ以外ならなんでもいいわよ、快もいいでしょ?」


「いいよ、なにがいい?」


「うーん、三人で楽しめるものだろ? 射的……は違うか。着ぐるみの撮影会……は飛鳥の変装の問題でなしか。あとは何があるかな……」


パンフレットを手に各々を指でなぞりながら確認していく彼女を待つこと数分、彼女の指がある場所で止まった。


「そういえば快君のクラスには行ってなかったな、君のクラスは?」


「3ー2、メイド&執事喫茶ってあるでしょ、それ」


「ああこれか。ほお、撮影会も出来るのか」


再び指を動かし停止、そこには俺が行った内容が記述されている。

彼女の次の目標はここ、と言いたげな顔だ、だが問題が発生するため釘を刺しておこうと思い口を開く。


「行かないことオススメしたいけどね」


「へえ、理由を聞いても?」


「俺のクラスに一人、猛烈なファンがいるから。君達の」


それを聞いた彼女はがっくりとした表情ーーではなくむしろ挑戦する気満々なやる気溢れる表情に変わる。

あれ、まさか選択肢間違えた?


「それは面白そうだ。なら一つ試して行こうじゃないか」



「なんで君達はそうなるの」


「私達現にバレないものね。バレたことある?」


「いや、飛鳥みたいに変装した時は特にないけど今みたいな状況でも対人なら100%バレない自信がある」


「その意気込みは?」


「その私達のファンな子に会ってから見せてあげるよ」


紅茶も楽しみだ、と軽いスキップをしながらいざ入室。昼時ということもあって飛鳥と一緒に出された時以上の盛り上がりを見せている教室の端、俺が最後にいた洗い場にいる白兎が真っ先に気づいた。


「お、帰ってきた。後は雪さんと……ん?」


俺の横で腰に手を当てて「彼かな?」なんて口にする彼女に白兎が気づいた。こちらを凝視しながら徐々に近づいてくる白兎は次第に目をキラキラさせていく。ほれみろ、そんな変装って言えるようなものでもない変装でバレないわけが……。


「初めまして! 私雪と一緒の学校の神原佐奈って言います! 雪の彼氏さんからここがオススメって聞いてきました! 撮影とかできるんですよね!? 楽しみだなあ!」


……さっきまでの声どこ行った。


「……まさかの年下キラー持ちか? お前」


「違うから、そんな称号持ってないし欲しくないから」


「そうですよ、先輩には私だけいればいいんです」


「なあに言っていんの!?」


なんだ、アイドルって存在は全員多声類なのか? なんでそんな地声とは程遠い声出せるの、おかしくない? 完全に別人の声なんだけど。飛鳥にしろ彼女にしろおかしい、この調子だと最後の子もこうなのか? ちょっと万能すぎませんかアイドル。


「えと、まずは紅茶でも飲んでいく、でいいんだよな?」


「はい! あとお茶と合いそうなでざーととかあるとありがたいです!」


「私も同じものをお願いします」


「りょーかいしました。 快はその子たちの相手しててくれ。席は……端っこのが空いてるな、案内よろしく」


「はいはい」


白兎と別れて言われた通り教室の隅に置かれたテーブルに二人を案内して腰掛けたのを確認すると俺も座る。


「ほら、言っただろ? 対人じゃバレない自信があるって」


「どういう理論で?」


「簡単な話、第一印象だね。同じように見えても第一印象が違うかったら別人だと思うだろ? ま、それでもわかる人間はいるけど、彼は固執する系のファンじゃかったようだから普通に騙せた、というわけだ」


「沙耶って本当にそういうのだけはすごいわよね」


「変装の師にその口はなんだい?」


「いひゃい、いひゃいわさや」


飛鳥のほっぺを引っ張る沙耶さん。

こんな姿みてたらさっきみたいなこと全然出来そうにないのに普通に出来るなんてやっぱりアイドルって稼業はすごいとしか言いようがない。アイドル業界NO.1となるともってのほかだ。どのスキルも完璧すぎる。今更ながら俺の彼女がすごいというのを目の当たりにする瞬間だった。


「ま、そういう訳で対人だとバレない自信が僕にも飛鳥にも、そして穂花にもある。安心してデートを楽しむといいさ。これまでを取り戻すみたいにね」


「……なんでデートしたことないと?」


「飛鳥が変装してまで来るんだ、君、相当飛鳥の願いを断ってきたろ? なんせ国一のアイドルだ、バレたら危ない、なんて考えであろうことは君の性格含めて考えるのなんて造作もない。となれば必然的にデートなんてしてないと思っただけだ、違うかい?」


「最近だとちょっと前に初めてスーパーで一緒に買い物したぐらいかしら。デートに関しては指で数えれるぐらいしかしてないわ」


「一応してるにはしてるんだ。ま、そういうことで僕達にはバレない術がある。安心しなよ」


「ありがとうございます!」とまた声を変えて相手から受け取った紅茶を口に入れて笑う彼女。どうやらお気に召したらしく、ケーキを挟みつつ再び紅茶に口付ける。


「アイドルにここまで言わせるんだ。親友が落ち込む姿とか見たくないしね。彼女を頼むよ、彼氏君」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ