エンドレスワルツ
掲載日:2015/03/07
月へ向かう船団を、地から見送る民らの手には、一輪の雛菊。声高に送り出すも、夜空を泳ぐ先駆者らに届こうはずもなく。「めでたやめでたや」と酌み交わす酒の巡りに、いつしか夜も明け、残された民らを寂しさが襲う。
「おっかぁ。たらふく飯が食えるようになるんけ?」
「月からみんなが戻って来たらなぁ」
捨て置かれた雛菊の花が地を蔽い、ここぞまさしく桃源郷といった風情に、幼子たちは無邪気に駆けまわる。微笑み絶やさず見守る大人らは、しかし皆罪人で、月へ向いし者らも、月の豊穣をこの地に持ち帰らんとする略奪の徒。
船団の帰還は争いを生むが、今日の腹を満たすには、子らの明日を育むには、それもまた〝祭り〟として、踊り狂わねばなるまいよ。
雛菊:別名トキシラズ 花言葉「希望」




