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3rd World  作者: 桃姫
vier
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 デシスピア、魔王城前。

 そこには、黒真、アン、アイナ、フューゼ、イヴリア、龍美、シェルファ。そして、ジャネックとリュウだった。


「懐かしいな」


 リュウが呟く。


「まったくよ」


 ジャネックもリュウに同調した。


「さて、と、じゃあ、魔王城に入るか」


 黒真の軽い声に、ジャネックとリュウが「うっ」と言葉を詰まらせた。


「どうした?」


「いや、敵の居城に簡単に入るってのは、なんか、なあ」


「まあ、ねぇ」


 ジェネックとリュウがうだうだ言っている間に、黒真たちは、魔王城の扉を開けた。


――バァアン!


 大きな音と共に扉が開き、轟音が城内に響いた。


「きゃ、きゃあ、な、なな、何事です?!」


 サリーナの声が城の入り口で反響する。


「ま、まさか、勇者が攻め、て……?メイド長?メイド長じゃないですか?!ご旅行から戻られたのですか?」


 サリーナがアンを見て、聞くが、アンは首を横に振った。


「いえ、一時的な帰宅です」


 アンの言葉に、サリーナが肩を落とす。


「そうですか……」


「ええ、そう言えば、今の魔王の様子はどうです?」


 アンの疑問に、サリーナが肩を竦めて返す。


「羽酉ちゃんは、頑張っていますよ。でも、子供ですから、いろいろと……」


 その実、百年以内には、地球と交流を持たせているのだから、恐いものである。


「さ、サリーナしゃん……サリーナさん、どうかしました?」


 羽酉が現れた。アンが召喚した頃と変わらぬあどけない、屈託の無い笑顔。それを見た黒真が、羽酉に呼びかけた。


「お前が、神楽野宮羽酉か?」


 黒真の声に羽酉が「ほぇ?」と声を上げた。


「はい、神楽野宮羽酉でしゅ……です」


 羽酉の返事に、黒真は、頷いた。黒真は思う。


(しかし、夜午には似てないな……)


 夜午とは違い、柔和な笑みを浮かべる羽酉。


「俺は紫藤黒真。お前の前にここで魔王をやっていたんだ」


 黒真の言葉に、羽酉が目を見開いた。そこに龍美とフューゼが話に割って入ってきた。


「黒真君。神楽野宮って、夜午次会長の?」


「夜午お姉さまのお知り合いですか?」


 羽酉の言葉に龍美が頷いた。


「はい、夜午次会長には大変お世話になっています」


 優しく笑いかける龍美。フューゼも話しに加わる。


「でも、神楽野宮さんにはあまり似てないですね」


 フューゼの何気ない言葉に、羽酉の表情が微妙に曇った気がした。


「ええ、夜午お姉さまとは、お母様が違うので。前妻の(あずま)お母様が亡くなり、再婚なさって、後妻の紅南(くなん)お母様の第一子がわたしなんれす……なんです」


 大事な時まで噛んでしまうのが羽酉である。


「そ、そうだったの。ごめんなさいね」


 申し訳ないことを聞いたと、フューゼが謝る。だが、羽酉は首を横に振った。


「気にしないでください。もう、整理が済んでますから」


 そう言って笑う。よくできた少女である。子供っぽさが無いわけではない。しかし、どこか人生に諦めが見えている。達観した様子がある。


「羽酉は、魔物と人間が仲良くした方がいいと思っているのか?」


 黒真が話題転換に聞いた。


「はい!もちろんでしゅ!……勿論です!」


 力強く断言した。


「黒真さんは、違うんですか?」


 羽酉は黒真に聞いた。黒真は暫し、考えるようにしてから頭をかいた。


「そうだな。俺は、人間と魔物が仲良くするのには反対しない。むしろ、仲良くやって行くことは大事だと思っている。だけれど、これでも昔、冒険をやっていた身だ。魔物は何匹も殺してきた。魔物は襲ってくるから、と言って殺して言い訳ではない。だが、俺は殺した。だから、あまり、声を大にして、人間と魔物の共存なんて言えないな。人間(おまえ)魔物(おれたち)を殺していたくせに、何て言われたら、やられるしかないだろ?だけどな、羽酉。お前は、別だ。魔物も人間も大事にできる。お前なら、いつかきっと、この世界と地球を結んで、平和な世界を創ることができると思う。そのときは俺も協力してやるし、こいつらだって協力してくれる。だから、お前は、人間と魔物が仲良く暮らせる世の中を創ってみろよ」


 珍しく、黒真が、優しい言葉をかけた。そして羽酉の頭を撫でた。


「夜午か摩申に伝言はあるか?」


「あ、では、元気です、と伝えてください」


「承った」


 黒真はそう言うと、リュウとジャネックの方を見る。


「お前等もコイツに協力してやってくれ。じゃあな。アン、帰るぞ。今度こそ、地球へ」


 黒真の言葉に、アンは頷いた。






 そうして、たった数時間の他世界旅行は終わった。






 戻ってきた黒真達を待ち受けるのは、代わり映えの無いあの日々。しかし、それはある日崩れる。黒真が、倒れている女性を見つけたことが切欠に……

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