第1章 優雅な君
「キーンコーンカーンコーン」
学校のチャイムが鳴るとともに、2年1組の担任の先生が教室に入ってきた。
生徒たちは、慌しく席につく。
先生「は〜い!!静かに!!授業を始める前に、みんなに嬉しい知らせがあります。」
生徒たちは、ザワザワし始めた。
先生「はいはい!!静かに!!それじゃあ藤本さん、入ってきてください。」
「ガラガラッ」と戸を開ける音と共に、一人の女の子が教室に入ってきた。その子はゆっくりと、先生の隣に立った。
生徒たち皆は――特に男子たちは――その子に釘付けだ。
その子はスラッと背が高く、色白で、髪はストレートのロング、そして美人だ。しかし、表情に少し違和感がある。上手く言葉では言い表せないけど、他の人より表情が少し変だ。
女の子「こんにちは。今日この天空山中学校に転校してきた、藤本 桜です。よろしくお願いします。」
生徒たちは「パチパチパチ」と拍手をした。
先生「それじゃあ・・・藤本さんは、あそこの席に座ってください。」
先生は、窓側の一番後ろの席を指さした。
藤本 桜「はい。」
藤本 桜と名乗るその子は、自分の席に向かってゆっくり歩いていった。その歩き方は、なんとも優雅だ。生徒たち皆の痛い視線をも気にせず、桜は優雅に歩いていった。
席に座ってからも、まっすぐ前を見つめていた。
先生「はい、それじゃあ教科書の75ページを開いて――・・・。」
いつも通りの授業が始まった。しかし、生徒たちはいつもと違ってザワザワしている。そのたびに、先生は生徒たちを注意している始末だ。
しかし、桜だけは、一人冷静に授業を受けている。静かに先生の話を聞いて、静かにノートをとっている。
しかも、桜は勉強もデキる方みたいだ。難しくて誰も手をあげないような問題も、アッサリ答えてしまった。
生徒たちが「オオーッ」などと言っていたけれど、桜は「こんなのどってことないわ。」という顔をしていた。