幼馴染を寝取られた動画が呪いの動画に切り替わり新たな呪いを作り出すことに加担してしまった俺は親父と幼馴染たちの奇行にドン引きです
『あんっ♡ あんっ♡ 気持ちいいよぉ♡』
なんなんだ、これは。
10月末日のハロウィンの日。世間がいたずらに精を出す頃、画面の向こうで行われてる違う意味で精を出す行為に目を奪われながら、俺こと初小岩実は驚愕していた。
「これ、路夏だよな……間違いなく……」
朝に母親から俺宛ての荷物が届いていたと手渡されたUSBメモリの中にあった、一本の動画。
なんだろうと思いつつパソコンに差して再生してみると、そこには俺の幼馴染にして彼女である、瀬谷路夏の姿があったのだ。
『へへっ、どうだ路夏? 俺のほうが、実のやつよりずっと気持ちいいだろ?』
いや、それだけじゃない。路夏を抱きながら熱烈な口付けを交わす男にも見覚えがある。
宇場津太郎。俺のもうひとりの幼馴染にして、親友であるはずの男が、画面の向こうで俺を蔑みつつ、裸で俺の恋人を抱きしめていた。
『うん♡ 津太郎くんのほうが、実よりずっとすごいよ♡ ねぇ、だからもっとぉ♡』
本来なら拒絶しなければいけないはずなのに、路夏の瞳にはハートマークが浮かんでおり、そこには俺など映っていない。
俺の恋人はもはや、親友だと思っていた男に陥落しきっている。
それが分かってしまった。同時に理解する。
俺は恋人を寝取られたのだ。それも、長年の親友に。
俺は恋人に裏切られたのだ。長年の幼馴染で、初恋の相手に。
『へへへっ、おい見てるか実? 路夏はお前より、俺のことを選んだみたいだぜ? 俺はお前のことが、ずっと嫌いだったんだ。俺の路夏を取りやがってよぉっ! お前から路夏を奪えて清々したぜ! ざまあみやがれ!』
「あ、ああああ……」
全身が震える。絶望が襲いかかる。
これが、これが寝取られ。これが、恋人を奪われるということなのか。
脳が破壊される感覚で、心が壊れそうになる。もうこれ以上、あの動画を見ていることなんて出来ない。
「うわああああああああああああ!!!!!」
俺の心はこの瞬間、粉々に砕けてしまった。きっともう、二度と立ち直ることは出来ないだろう。
激しい絶望感に襲われながら、絶叫とともに俺は家を飛び出そうと――――
『ウオオオオオオオオオオオオオ…………!!!!!』
「え?」
したのだが。突如聞こえてきた地獄の亡者のような叫びを耳にし、身体の動きがピタリと止まった。
「な、なんだ……? 画面がチラついて……あれ、全然違う動画になったぞ……? どういうことだ……?」
音の発生源である画面に目を向けてみると、さっきまで繰り広げられていた幼馴染たちの痴態はどこへやら。
何故か野外、それも井戸がぽつりと見える古ぼけた場面へと切り替わっていたのだ。
少なくともこれを寝取られ動画だと思えるやつはいないだろう。
どういうことだと困惑していると……。
『アア、ノ、呪イガ……ワタシノ呪イが負けてイク……! 負の感情ヲヤツラニ向けるナアアアアアアアア!!!』
「う、うおおおっ! なにっなんだぁっ」
急に井戸から女性の化け物が這い出てきて、絶叫をあげ始めたではないか。
やたら必死な形相をしており、余裕なんて微塵もなさそうだ。そんな分析を出来るくらいには、画面を通してでも彼女の焦りが伝わってくる。
『ナントイウヤツラダ……ワタシノ呪イニ対抗スルタメニ自ら新タナ呪イヲ作り出そうトスルナンテ……ウガアアアア!!』
「な、なんだ。呪い? どういうことだ!?」
画面の向こうで化け物が苦しんでいるが、こっちとしてはなにがなんだかさっぱりだ。
動画再生なんだから話しかけたところで返事なんてくるはずがないと思っていたのだが、なんと化け物はこちらへと視線を向けると、俺に話しかけてきた。
『お、お前はヤツラニ利用サレテイル……』
「り、利用だと? そもそもお前は一体……」
『私はカツテある女に彼氏を奪われ、無残に捨テラレシ者……その怨念が形とナリ、呪いを振り撒く怨霊としてこの世に残ったノダ……全ては世の寝取られを駆逐スルタメニ……だが、アア……やつらはソレスラも利用して……なんと恐ろしきは人の業よ……』
呪い? 怨霊だと?
そんな物騒なものが存在するなんて……だがコイツとは実際に会話が成り立っているのは事実だ。
本当に怨霊がいると受け入れざるを得ないが、そうなると気になる点がひとつある。
「お前が怨霊だとして、なんでいきなり出てきたんだ。俺が見てたのは津太郎に路夏を奪われる寝取られ動画だったんだぞ。寝取られを駆逐するとか言ってたのにおかしいだろうが!」
『それは……アア!!』
怨霊がまたも叫びをあげて苦しみ始める。
どうしたんだと思っていると、またもや画面にノイズが走り、津太郎たちへと切り替わった。
『ヒャハハハハ! 見てるか実ゥ! 俺に路夏を寝取られている一部始終を! 悔しいだろう? 許せないだろう? もっと怒って俺に憎しみをぶつけてみろよ。もっともお前じゃパンツずり下ろしてテメェでマスかいてるのがせいぜいだろうがなぁっ!?』
「つ、津太郎……テメェ……!」
ブチブチと血管がブチギレていく音が確かに聞こえる。
さっきの怨霊のことも気にかかるが、津太郎に煽られたことで思考が一気に怒りへと染まっていく。
『お前の怒りはそんなものかよ! そんなんじゃもう一生彼女なんて無理だろうなぁっ!? あっ、イク!』
「ざけんなよテメェ! 2分も持たない早漏の分際で調子乗ってんじゃねぇぞ! 待ってろ! お前なんざ今すぐこの手でギタギタにブチのめして……」
『その怒りはヤメロオオオオオオ!!!』
「うおっ! なんだぁっ!?」
早漏の癖に煽ってくる元親友に怒り狂っていると、画面に怨霊が再び現れる。
その形相は先ほどより更に必死なものとなっており、苦しんでいるのが明白だった。
「ど、どうしたいきなり! というか、怨霊なのになんでお前の方が呪われてるみたいな感じになってるんだよ」
『ソレはヤツラニ私が上書きサレヨウトしているカラだ……!』
「上書き……? お前って呪いの怨霊なんだろ? それを上書きなんて……」
『出来るんだなぁ。これが』
また画面にノイズが走る。
だが、今度はさっきまでとは少し違った。
画面が左右に二分割され、右に怨霊、そして左の画面にニタニタと笑う津太郎と路夏の姿が映し出されたのだ。
『いやぁ、本当に上手くいくもんなんだなぁ。半信半疑だったけどびっくりだぜ』
「な、なんだこれ。どういうことだ……?」
『教えてやるよ、実。こうして俺が意思を持てたのは全部お前のおかげなんだからなァ。感謝してるぜ、親友ゥ?』
画面の向こうからニタニタと気味の悪い笑みを浮かべながら俺に話しかけてくる津太郎。
そのことに、奇妙な違和感を覚える。俺が見ていたのはあくまで送られてきた動画であり、オンライン配信などではなかったはずだ。
マイク接続だってしてないんだから、会話が向こうに届いていることだって本来はあり得ない。そのはずなのに、何故……?
『ククク、意味が分からないって顔をしてるな? まぁ当然か。俺は本体じゃなく、あくまで動画内の津太郎さ……もっとも、お前の怒りと憎しみを糧に、意思を持つことに成功した、もはや呪いと言っていい存在だがな。ゲゲゲの津太郎って呼んでくれてもいいんだぜ?』
「なん……だと……」
鬼〇郎さんに謝れや。
いや、そうじゃない。呪いの津太郎だと。こいつはなにを言っている?
困惑する俺の表情を見て取ったのか、津太郎は楽しそうに笑うと口を開く。
『詳しく教えてやるよ。俺と路夏は少し前、いつものようにお前に隠れて家で浮気セックスを楽しんでいたんだ。ひと段落着いてゆっくりしてたところに宅配便が届いてな。丁度お前が見ているUSBと同じやつさ。動画が入っていたようだからちょっと見てみてみたら、画面に映ったのが隣にいるこの怨霊ってわけさ』
『グ、ググググ……』
『最初見たときはそりゃあ焦ったぜ。ホラーに耐性なんてなかったからな。俺なんて思わず漏らしちまったくらいだ。しかも散々ビビらせてきた後に、浮気している俺たちに呪いをかけてやるなんて言ってきやがる。こんなのどうにかしようと思わないほうがおかしいってもんだろ? なぁ?』
問いかけてくる津太郎だったが、俺からすれば呪いにかかってさっさと死ねとしか言えない。
いつものように浮気楽しんでたってなんだよ。マジで死ねばいいのに。
『グガアアアア!!』
『お? また怒りが高まったようだな。いいぞぉ実。じゃあもっと教えてやるが、俺たちは当然呪いを解く方法を即座に調べた。そうしたら、この怨霊がどうやら寝取られに異様な敵愾心を持っていて、浮気しているやつらのところに呪いの動画として届く性質を持ったやつであることが分かったんだ。まったくはた迷惑だと思わないか?』
いや、全然。
むしろ最高だと思う。むしろいい霊じゃないか。全力で応援したいところだぜ。
「……それで?」
『ククク、まっどんな呪いか分かってるなら当然だが解呪する方法も書いてあったさ。その方法は簡単……動画を上書きして、他のやつに見せればいい。お手軽だろ?』
「待て、それでどうして寝取り動画なんか送ってきやがった! 上書きすりゃいいなから他の動画でも良かっただろうが!?」
『それがそうもいかないんだな。なんせ相手は呪いの動画だ。上書きなんてそう簡単に出来るもんじゃないようで、下手な動画じゃ更に上書きしてきやがるんだ。つまりよ……呪いに対抗するには、新しくこっちも呪いを作るしかないってこった』
呪いを作る? 対抗だと?
そんなもん、こいつらに出来るわけが……いや、待てよ。それって……!
「ま、まさか……!」
『ようやく察したようだな! その通りだよ実! お前に寝取り動画を送ったのは、お前に俺たちを呪って貰うためだ! 負の感情こそが呪いを生み出す動力源! お前の寝取られたことに対する恨みと憎しみが、俺たちを新たな呪いとして生み出したってわけさ! 普通ならまず無理なようだが、お前の負のパワーは常人より遥かに上のようだ。流石の俺でもちょっとドン引きだぜ!』
な、なんていうことだ。
俺が呪いの動画を生み出しただと? こいつらに対する憎しみが、呪物として意思を与えてしまったというのか……!?
『ハッピーバースデー! いや、ハッピーハロウィーンってとこか? 感謝するよパパ! あと少しで呪いとして完全顕現だ! お前が俺たちのパパになるんだよ!』
「ふざけんじゃねえぞ! 子作りやってたのはテメェらだろうが!? 生まれる前にくたばりやがれ!」
『ガアアアア!! ダカラ憎むのはヤメロオオオオオオ!! それが奴らの狙いダト何故気付かン!!』
「なっ!? 怨霊!」
ど、どうしたことだ。叫び声をあげた怨霊の画面が少しづつ小さくなっていく。
逆に津太郎たちの画面がデカくなっているようだが、これは一体……。
『おいおい、俺はちゃんと説明したぜ? お前の憎しみが俺たちの力になるってな。お前が俺たちを憎めば憎むほど俺たちのパワーは増していくのさ。この怨霊を上回り、消滅させることが出来るくらいにな』
「なっ……!?」
『これが呪いの解除方法だ! ありがとよ実! 全部お前のおかげだ! 俺に路夏だけじゃなくピンチを救ってくれまでするなんて、随分お人よしだなァ! 持つべきものは間抜けな親友だぜ! ヒャハハハハ!』
耳障りな笑い声が部屋に響く。
その声はまさしく呪いと呼ぶに相応しいもの。俺がこいつをこの世に生み出してしまったのか……。
「最悪だ……」
『ちなみにだが、俺たちにかけられた呪いは路夏が喘ぎ声がクッソ汚くなるやつで、俺の方はイク時にママの顔が思い浮かぶようになるってやつだ』
「最悪だ……!」
『私の元カレはマザコンダッタ……去り際ニ私の喘ぎ声が汚くて萎えるトカホザキヤガッタ……ユルセナイ……』
「本当に最悪だな!」
めちゃくちゃ私怨による呪いだった。
いや、呪いなんてそんなものなんだろうけど……しかし、これであいつらがなんの罰も受けなくなるというのは納得がいかない。
思わず歯噛みしていると、
『ナニヲ悠長にシテイル……! 私が消えれば、お前に呪いが全テ降りカカルコトニナルのだゾ……!』
「えっ」
『呪い返しってやつだな。かけられた呪い自体は消えるわけじゃないから、誰かが受け止める必要があるのさ。俺たちにかからないのなら、必然的にこの動画を見ているお前が全部受け止める必要が出てくる。まっ、必要経費ってやつさ』
つ、つまりそれって俺の喘ぎ声がクッソ汚くなってイクときに母親の顔が浮かぶようになるってことか!?
ふざけんじゃねえぞ!!??
「つたろおおおおおおおお!! 貴様ああああああああ!!」
『んん~~いい負の感情だ。ますます俺のパワーが上がっていくのを感じるぜ。せっかくだから、俺からもお前に呪いをかけてやろう。これからはイクたびに俺の顔が思い浮かぶようにしてやるよ。感謝しな』
「テメエエエエエエエエエエエエ!! ふざけんな、殺すぞ!!」
『あ、じゃあ私は全裸ブリッジオ〇ニーじゃないとイケないように呪いをかけてあげようかな♪ そっちのほうが面白そうだし』
「面白いかどうかで呪いかけんじゃねえええええええええええ!!」
あまりにもふざけたことをのたまう幼馴染たちの呪いに思わずブチギレる。
『ギエエエエエエ!! ダカラヤメロオオオオオオ!! ナンノタメニ私が対抗シテヤッテイルと思ってるンダ!! 奴らの思い通りにサセテどうすル!!』
「あ、す、すまん」
まさか怨霊に説教される日が来るとは……。
しかし、どうする? 俺ではこいつらに対する憎しみを止められそうにない。
『私を憎メ! やつらに対抗出来ルダケノ負のパワーヲ私に寄越スンダ! ソウスレバナントカしてやル!』
「そ、そんなこと言ったって……」
この怨霊めっちゃいいやつじゃん……。
俺を助けようとしてくれてるし、こいつを憎むことなんて俺には出来ない。
『アアッ! グッ、駄目だ。モウ……』
「お、怨霊! しっかりしろ、怨霊!」
ついに限界が来たのか、怨霊が画面から消えていく。
画面いっぱいに映るようになったのは、裸の津太郎と路夏のみになる。
『ヒャハハハハ! もうやつは風前の灯火だぜ。実! もう大人しく諦めな! お前はこれから全裸ブリッジをキメながら汚い喘ぎ声で「イ゛グゥ゛!」と濁点付けて俺と母親の顔を思い浮かべないとイケない人生が待ってるのさ!』
「ぐっ、畜生……!」
改めて列挙されると最悪もいいとこだな!
こんな呪い、絶対受け入れるわけにはいかない。
「くそ、一体どうすれば……!」
「おーい、実。さっきからなに騒いでるんだ?」
頭を抱えていると、ガチャリと部屋のドアが開かれ、親父が顔を覗かせてきた。
「お、親父。いきなり入ってくるなよ。こっちは取り込んでる最中で……」
「そう言われてもな。あれだけうるさかったら注意せざるを得ないだろう。ん? あれは……」
突っ返そうと思ったのだが、親父の視線がとある一点、俺のパソコンの画面へ止まっていた。
「おいおい、エロ動画か? 未成年でそれは感心しないな。どれ、ちょっとパパにも見せなさい」
「あ、おい親父!?」
止める間もなく部屋にずかずか入ってくると、そのままパソコンの画面を食い入るように見つめる。
「ありゃ、これは津太郎くんと路夏ちゃんじゃないか。久しぶりだね、元気だった?」
『あっ、ど、どうも。お久しぶりです』
『ちょっ、なに普通に挨拶してるのよ津太郎くん! これじゃ言い逃れ出来ないじゃない!』
『いや、だって挨拶されたら返さないと悪いし……』
呪いと化しているくせに妙なところで理性的だな。
友人たちの裸を親が眺めているという何とも言えない光景に言葉をなくしていると、
「そういえば、君たちはなんで裸なんだい。路夏ちゃんはうちの実と付き合ってたはずだし、まさか浮気しているってわけじゃないでしょ?」
『そ、それは』
『…………』
「ほう、まさか……そういうことなのかい?」
二人を見つめる親父の目が細くなり、津太郎たちはバツが悪そうに目をそらした。
「ふむ、なるほどな。つまりうちの実は津太郎くんに路夏ちゃんを寝取られたというわけだ」
「親父……」
「ところで実。この部屋にティッシュはあるかな」
「おい、親父。なんでそんなことをいきなり聞くんだ」
てっきり二人に説教でもするのか思いきや、ティッシュとか言われて思わず俺は面食らう。
「必要だからさ。あっ、場所を教えてくれたら実は部屋から出てってくれないかな? ゆっくりしないでね! すぐでいいよ!」
「待て親父。お前、俺の部屋でナニするつもりだ!」
「オナニーだよ」
直球でいいやがったなコイツ……!
よりによって息子の部屋でなにやろうとしてくれてんじゃ。
「いやぁこれでも父さんは一部じゃ寝取られマエストロとして知られていてな。寝取られに関しては一家言持っていると自負しているんだ。息子が彼女を寝取られたと聞いて、素直に興奮しているのがパパなんだよね」
「ふざけんなよボケが。今すぐ出てけ! 気持ち悪いんじゃ叩き出すぞ!」
「いやだいいやだい! パパ、息子の彼女が寝取られてるところが見たいんじゃい! 実だけいい思いするなんてずるいぞぉっ!」
「いい思いもなにもなぁ、俺は今呪いをかけられそうになってって大変で……」
そこまで言って、ふと俺は言葉を止める。
「……なぁ親父。アンタ寝取られが好きなのか?」
「ああ、大好きさ!」
「いい笑顔をしなくていい。つまり、こいつらに好意的ってことだな?」
「モチのロンさ! 寝取ってくれるなんていい友達を持ったな、実!」
俺が画面を指差すと親父はこれまたいい笑顔でサムズアップした。
碇ゲ〇ドウみたいに顔だけはいい感じにダンディーなだけにムカつくが、そういうことなら話は変わってくる。
「逆に聞くが、寝取られを邪魔してくるやつのことはどう思う?」
「死ねばいいと思うよ」
「寝取り動画の途中に悪霊が割り込んできたらどう思う?」
「怒りのあまりそいつを成仏させようと思うに決まってるんだよね」
ふむ、なるほど。良く分かった。
俺は無言でベッドに移動すると、ティッシュ箱をつかみ取り親父へと渡す。
「ほれ、やるよ。満足するまで部屋から出て来なくていいからな」
「お、マジ!? いやぁ、理解のある息子でパパは嬉しいよ!」
「ああ、俺も嬉しいよ」
キモいしウザいし最悪だが、少なくとも呪いに対抗出来るという意味では頼もしいことこの上ない。
俺はそのまま部屋を出るとドアを閉め、ドアに耳を当てた。
「よし。じゃあ津太郎くん、路夏ちゃん。さっそくおっぱじめてもらえるかな?」
『えっ、ほ、本気ですか』
「勿論だとも。いやあこんな日が来るだなんて、生きてきて良かったなぁ……実、生まれてきてくれてありがとう」
こんな最悪な感謝のされ方があるだろうか。
ちっとも嬉しくないが、津太郎たちには効果があったらしい。
『ぐっ! な、なんだ。急に胸が苦しく……』
『わ、私も……』
「お、ベッドに倒れ込んだか。いいぞぉ、話が早い子は好きだ。さぁおっぱじめなさい!」
ワクワクした声でそんなことをのたまう親父。
よほど寝取られへの期待感が大きいのだろう。それは即ち陽のパワー。
負の感情から生まれるエネルギーとは相反するはず。
つまり。
『シャアッ! 復・活!』
「なにっなんだぁっ!?」
津太郎たちの力が弱まったことで、怨霊が再び立ち上がれるということだ。
『あ、があああああ! ち、力が抜けていく……』
『こ、こんなことって……』
『感謝スルゾソコノ男。コレデようやくこいつらに天誅が下セルトイウモノ……』
「は? は? は?」
親父が露骨に困惑しているが、この感じだと次がどうなるかは大体分かる。
「さ、さっきまでのエロ展開は!? おっぱじめる流れはどうしたんだ!」
『ソンナモノ、アルワケナイダロ。常識的に考えて』
「ふ、ふざけるなよ! あ、おい! 画面から津太郎くんたちが消えたぞ! どういうことだ化け物! 井戸なんかで興奮出来ると思うなよ! 父さんには無機物ファッカーの趣味はないんだぞ!」
『オオ……! ナント素晴らしき負の感情……! コレナラヤツラノ本体にも呪いが届く……己の作り出シタ呪いで生涯苦シムガイイ!!』
『あああああああああああああああああああああああ!!!!!』
「お、おい! 画面の向こうで大声が聞こえたぞ! ヤッたんか!? ヤッたんだな!? 見せろ、肝心な部分をパパに見せろおおおおおおおおお!!!」
複数の叫び声が、部屋に響く。
それを耳にして満足した俺は、ゆっくりとその場から離れていった。
とりあえず、津太郎の家に行って呪いにかかってるやつをしばこうと心に決めて。
寝取られって、誰も幸せにならないんだなぁ……。
ちなみに後日。
「なぁ実。パパはこの怨霊さんと組んで寝取られ撲滅配信者として食っていこうと思うんだがどう思う?」
『ソノ過程で寝取り動画を集メルクライハまぁ許容シヨウ。現代に適応スルノハ大事ダカラナ』
「」
どうやら親父はただで転ぶ気がないらしく、怨霊と組んで寝取られ動画収集を始めようとするのを必死で止めることになったのはまた別の話である。
ハロウィーン記念に投稿します、ハッピーハロウィーン。




