表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

出口を探す扉

掲載日:2026/03/04

目を開けると、またしても自分の散らかりきった部屋の中に横たわっていた……。


もう朝なのか?

でも外は一面真っ暗で、何も見えない。外では大雨が降っているらしく、ずっとポタポタと雨音が響いている。うるさくてたまらない……。


俺の名前は林安リン・アン

どうせ、もう人生を諦めているような、そんな人間だ……。


前を見つめ、身体を起こし、立ち上がる。

散乱したままの部屋と、ベッドの上に転がるぬいぐるみたち。相変わらず、何一つ変わっていない……。


俺は黙って階段を下り、部屋のドアを開けた。

だが、目の前に広がっていたのは、真っ黒で濁った景色だった……。


どういうことだ?

なぜ外がこんなに真っ暗なんだ? 一体、何が起きている?


緊張と戸惑いを覚えたその瞬間、俺の部屋はまるで火事になったかのように、異様な熱気に包まれ、息が詰まるほど暑くなっていった……。


俺はすぐに部屋から飛び出した。

そして外へ出た瞬間、背後でドアが勢いよく閉まり、そのまま重く鍵がかかった……。


慌てて部屋に戻ろうとするが、ドアはびくともしない。

まるで完全に封鎖されたかのように、まったく開かない……。


全身の力を込めて何度も押し続ける。

だが、どれだけ押しても、この扉は無情にも固く閉ざされたままだ……。


そして力を振り絞ったその瞬間、目の前の扉が一瞬で霧のように消え去った。

勢い余って、俺の身体は前へと投げ出され、そのまま床に叩きつけられた……。


……


両手をついて起き上がる。

だが身体にはまったく異常がない。血すら流れていなかった……。


辺り一面、黒く濁った景色。

ここはまるで精神世界のようだ……。だが、ここはいったいどこなんだ?


俺は黙って前へと歩き出す。

すると突然、前方に一枚の扉が現れた……。


それはまるで自動ドアのような形をしていて、どこか不自然だった……。


出口なのか?

それとも、別の何かか……?


俺は静かにその扉へと歩み寄る。


「パチッ……ガチャ……」


ドアを開けた瞬間、眩い光が弾けるように広がった……。


再び目を開けると、目の前に広がっていたのは電車の車内だった……。


俺は座席に座っている。

目をこすりながら、さっきのは夢だったのか……?と考える。


周囲の乗客を見回しても、特に変わった様子はない。

次の駅で停車すると、一人の太った女子生徒が乗り込んできた。荒い息を繰り返している……。


あいつはたしか、同じクラスの女子だ。

あの体型と性格のせいで、俺はあいつが大嫌いだった。以前、同じ班になったときは、本当に最悪だった……。


そして彼女は車内を見回し、そのまま俺の隣に腰を下ろした……。


は? なんでだよ。ふざけてるのか。あの低能女、マジで最悪だ……。


俺は顔をしかめる。

彼女の身体からは不快な臭いが漂ってくるし、座った瞬間、俺のスペースがほとんどなくなった。


露骨に嫌そうな顔で彼女を見た、そのとき。

彼女は俺のほうを向き、陰気な声で言った。


「ねぇ、何その顔。あたしのことウザいって思ってるんでしょ? ふざけんなよ、クソが」


俺は立ち上がり、何か言い返そうとした――


その瞬間、周囲から次々と人が集まってきた。

気づけば、クラスメイトや同じ学校の連中ばかりだった。


俺を睨みつけ、乱暴に窓際へと押さえつける。


罵声が飛び交う。

あの太った女子を指差し、「お前、こいつをいじめて笑ってただろ」と責め立てる。


どういうことだ?

なんでみんな、あいつのために……あいつは……。


俺は歯を食いしばり、怒りに震えながら彼らを睨み返す……。


そのとき、少し離れた場所に青い髪の少女が立っていた。

だが、こちらへ来ることはなく、ただ黙って様子を見ているだけだった……。


俺は再び、あの太った女を見る。

彼女は俺を見下すように、嘲笑を浮かべていた……。


俺は奥歯を強く噛みしめ、ゆっくりと目を閉じた……。


……


そして再び目を開けると、また別の場所に立っていた。

いったいどういうことなんだ……。


相変わらず、あのポタポタという音が耳元で響いている。

その音は、ずっと俺の脳内を彷徨い続けていた……。


周囲を見渡す。

どうやらここは、俺の家の中のようだった……。


そのとき、包丁を持った何者かがこちらへ歩いてきた。

顔は見えない。ただ、不気味に歪んだ笑みだけが闇の中に浮かんでいる……。


そいつは無言のまま近づいてくる。

手には血の付いた包丁が握られていた……。


そして、包丁を振り上げ、俺に向かって振り下ろした――


俺は咄嗟に身をかわし、近くのドアを開けて必死に走り出した……。


……


なんなんだよ、これは?

夢なのか? でも、あまりにも現実すぎる……。


家具や装飾品を見れば、見慣れすぎているほど見慣れた光景だ。


ここは確かに俺の家のはずなのに、言葉にできない異様さがまとわりついている……。


ふと足元を見ると、床一面に血の跡が広がっていた……。


前へ進むと、そこには倒れている両親の姿があった。

まるで刃物で何度も斬られたかのように、全身が傷だらけだった……。


振り返った瞬間、あの包丁を持った影が再び突進してきた――


俺は拳を握り締め、そいつの顔面に思い切り殴りかかった。


拳が直撃し、男は包丁を手放す。

刃は床に転がった……。


俺は素早く立ち上がり、その包丁を拾い上げる。


だが振り向いた瞬間、男の姿は消えていた。

気づけば俺は、死んだ両親のそばに立ち、手には血まみれの包丁を握っていた……。


そして――


男はまた現れ、腹を抱えて笑い続けている……。


なんなんだよ……。

その笑う男の姿が、やけに見覚えがある。どこかで見たような……。


「ほんとに哀れだな。こんなことすら出来ないのかよ!!」


横から声が響いた。

振り向くと――


地面に倒れているはずの、死んだ両親の口が動いていた。


いったい、どうなってるんだよ……。


俺はゆっくり立ち上がる。

するとまた別の場所に、一枚の扉が現れた。出口なのか……?


強く拳を握り、その扉へ駆け寄る。

開けようとした、その瞬間――


倒れていたはずの両親が立ち上がった。

その手には、無数の包丁が握られている。


そして俺に向かって振り下ろしながら、怒鳴り散らした――


「お前みたいな息子、本当に恥さらしだ! なんでまだ生きてるんだ! お前が死ねば、私たちはもっと幸せなんだよ!」


「この出来損ないが! なんでまだ生きてるのよ! こんな子、うちにはいらないのよ!」


「救いようのない馬鹿が! クズ!」


「いっそ売り飛ばせばよかったんだよ! 臓器でも売れば金になったのに! さっさと死ね!」


その言葉一つ一つが、刃となって胸を抉る。


俺はドアノブを強く握りしめ、叫んだ――


「もういい……消えろよ、クソが!!」


勢いよく扉を開け、外へ飛び出した――!


…………


再び目を開けると、また別の場所だった。


灼けつくような夕暮れ。

虫や蛙の鳴き声がやかましく響き渡っている。


むせ返るような熱気。

肌にまとわりつくような、不快な空気……。


目の前に、一人の人影が立っていた。


全身が黒い影で覆われ、顔はまったく見えない。

池のほとりで、じっとこちらを見ている。


「なあ、小僧。そろそろ受け入れたらどうだ? 自分の無能さも、過ちも。逃げ続けても意味はない。本気で言ってるんだ」


影は淡々と語る。


俺は歯を食いしばり、吐き捨てた。


「は? 何言ってんだよ。意味わかんねぇよ、バカ。何が言いたいんだよ!」


「まだ逃げるのか? 本気で言ってる。せめてそんな自分と向き合え。難しいのは分かってる。でも、このまま逃げ続けたら、お前は――」


その瞬間、俺は影を思い切り突き飛ばした。


影は池の石に頭を打ちつけ、血が飛び散る……。


俺はその場から走り去った。


だが頭の中では、あの声が消えない。

責め立てる声が、何度も何度も反響する……。


前方に、無数の扉が現れた。

どれも棘と血で覆われている。


どれが本当の出口なのか分からない……。


俺は一番大きな扉を見つめた。


もうどうでもいい。これでいい。


迷わず、その扉を開ける。


その先に広がっていたのは、最初と同じ、黒く濁った空間だった……。


そのとき、青い髪の少女が現れた。

幼なじみの劉顏リュウ・イェンだった。


なぜ、ここに……?


「お、君もいるんだ。私も分からないけど、さっきいろいろ変な体験しちゃってさ。ここってどこなんだろうね?」と彼女は笑う。


俺は動揺する。

突然、頭に激痛が走る。電撃のような痛みが何度も突き刺さる。


その場にしゃがみ込み、頭を抱える。


「ちょ、ちょっと……大丈夫?」と劉顏が慌てる。


声が脳内で爆発する。


そのとき、白い扉が現れた。

眩い光が俺たちを包む。


スーツ姿の男が歩いてくる。

頭には山羊のような角。


煙草に火をつけ、煙をゆっくり吐き出し、細い目でこちらを笑う。


手には指輪。

それが炎を纏って燃え上がる。


男は立ち上がり、指輪を回し、空中へ弾き、受け止める。


そしてこちらへ向けた。


「やあ。ここがどこか分からないだろう? 私はこの冥界を管理する死神だ。よろしく頼むよ。君たちも、そろそろ思い出したんじゃないか? なぜここにいるのかを」


俺はすべてを思い出した。


そして気づく。


両親を殺したのは――俺だ。


影の男が現れる。

それは俺自身だった。


「そういうことだ。だからもう逃げるなよ、小僧」


俺は口を押さえる。

息ができない。


「おい、大丈夫かよ……」と劉顏。


俺は服を握り締める。


あの日、両親を殺した。

そして劉顏も見ていた。


電車での出来事も。

全部知っている。


「大丈夫だよ。あの件は確かにそうだった。でも、私は君のせいだとは思ってない。……立って」


「違う……違うんだ、劉顏。全部俺のせいだ。俺が……君を殺したんだ!」


劉顏は驚き、それでもどこか穏やかに微笑む。


その瞬間――


彼女の顔から血が溢れ出した。

口から大量の血を吐き出しながら……。


俺はゆっくりと立ち上がった。

これは罰なのか……? 全部、俺のせいだって分かってる。でも、どうしようもなかったんだ……!


そうだ。あのときの黒い影は、確かに劉顏だった。

あのとき、俺が池に突き落としたのは――あいつだった。俺は……俺は……。


劉顏は真剣な表情で俺を見つめ、顔に流れた血を拭った。


「うん、分かってる。全部あなたがやったことだって。でも、どうして逃げるの? 私に話してくれれば、助けたかったのに」


俺は驚いて彼女を見る。

どういう意味だ……?


「両親を殺したのは、あの年にあなたを売ろうとしたからでしょ。怖くなって揉み合いになった……あれは事故だった。


あの女子をいじめたのも事実。でも、あの子が自殺したのは、彼氏に殺されたから。お金を騙し取って、それを隠すために自殺に見せかけられたの。


私は助けたかった。でもあなたは全部から逃げた。……たしかに、どのみちあなたの道は険しかったかもしれない。それでも最後にあなたは……」


劉顏は唇を噛み、失望と無力さを滲ませた目で俺を見る。


俺は……俺は……。


拳を強く握り締める。


自分が何をしているのか、分からなかった。ただ……。


「全部から逃げるの? それじゃあ私の死は何だったのよ。どうして周りを信じられないの、バカ!」と劉顏は悔しそうに言う。


「俺は……俺は……」言葉が途切れる。


たぶん、劉顏は知らない。

なぜ俺と一緒にここにいるのか。


俺は最後まで逃げた。大量の睡眠薬を飲み、手首を切った。


……。


自分で終わらせたんだ。


簡単な方法を選んだ。

解放と死を選んだ。


でも――後悔している。


いや、本当に後悔しているのか?

あのときなぜそうした? 今さら反省しているだけじゃないのか……。


「……好きに言えよ。俺はもう諦めた!」と俺は叫ぶ。


「そう。じゃあ、私の死は何だったの? ただ無意味に消えただけ? そんなの納得できない。


……まあ、いいけどね。私もこんな人生、もう嫌だったし」


劉顏はかすれた声でそう言った。


そのとき、死神が手を伸ばし、指輪を空中へ弾き飛ばした。


「ははは。これが最後の扉の鍵だ。手に入れればここから出られる。本当に死にたいわけじゃないだろ? 取れば元の身体に戻れるぞ」


指輪は地面に落ち、俺たちの足元へ転がった。


俺は劉顏を見て、静かに指輪を差し出す。


「……お前が持て。任せる」


劉顏は首を振る。


「いらない。あなたが持って。ちゃんと償いなさい。正直、私はもうこの人生に疲れてたし」


「何言ってるんだよ。お前が戻れよ……」


そのとき思い出す。


家族を事故で失い、自責に沈んでいた劉顏。

それでも俺を助けようとしてくれた。


でも俺は――。


「だから、あなたが行って。生き残っても、あなたは自分の運命を背負うしかない。それでも行って」


そう言って、劉顏は俺を軽く押した。


俺は死神を見る。


「一つ聞きたい。本当に……彼女は連れていけないのか?」


死神は鼻で笑った。


「何を言ってる? その鍵はお前のものだ。彼女のじゃない。帰れるのはお前だけだ。さあ行け。償ってこい」


死神は消えた。

指輪も消えた。


そしてまた、あの滴る音が頭の中に響き続ける――。


…………


「意識が戻りました、警官!」


「よし、証人と捜査官を呼べ!」


俺はゆっくり目を開けた。


目の前にあったのは、規則正しく音を立てる生命維持装置だった。


戻ってきたのか……。


やがて、厳格な検察官が言う。


「あなたは三人殺害の容疑がある。ただし一人は生存している。裁判前に、あなたに聞きたいことがあるそうだ」


「……両親か? なら会いたくない。あの夢のままでいい……」


そのとき、頭に包帯を巻いた青髪の少女が入ってきた。


劉顏だった。

生きている。


俺は震えながらガラス越しに彼女を見る。


「ちゃんと償えよ」と冷たく言う。


やはり、あの世界の劉顏とは違う。


だが彼女は続けた。


「でもな。最後に生き残れた。あのとき、お前が少しだけ人間らしさを取り戻したのは事実だ。演技だったとしても、私は生きる。お前も逃げるな。


結果がどうなろうと、最後まで向き合え。……もう一度だけ信じてやる」


俺は何も言えなかった。


……


そして目の前に現れたのは、救済へ続く最後の扉。


ゆっくり歩き出す。


これが最後か?


いや、その先にはまだ無数の扉がある。


それでも――


俺は歩き続ける。

最後の扉を開けるその日まで……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ