知り合い
高校生活を題材にした受験小説です。
南條は私の知り合いだ。長身の、真っ黒な瞳と真っ黒な髪をした男子高校生だ。そして、今日はこの春彼が通う大学について、教室中、いや学校中がざわついていた。
私はざわついた学校が好きじゃない。なんだか、居心地が悪いのだ。朝からこの妙な雰囲気を察知した私は、早く家に帰りたいと思って過ごしていた。正確にいうとこの3年間、この学校にいたいと思った日はない。ただ、今日はその感覚が強いのだ。もうすぐ卒業できるというのに…。
生徒の会話には、ひそひそ声で「南條」というワードが聞こえてくる気がしてきた。南條がどうかしたのか?知り合いなので気になった。
彼について知ったのは、この学校で唯一友達と呼べるあさみからだった。
「みき!おはよう。ビッグニュース!なんとあの南條が東京大学に受かったんだって。朝から教員室中が大騒ぎだったよ。」
あさみが元気よく言った。
「え?東京大学?」
私は信じなかった。
「この学校からそんな大学行くの無理でしょ。」
私はきっと「東京都大学」の間違いだと思った。あそこもそこそこ難関だが、南條なら合格できるはず。
あさみは元気よく返した。
「いや、だから大ニュースって言ってるじゃん。担任の横田先生が言っていたよ。この学校設立以来の快挙なんだって。」
私は頭がクラクラしてきた。
嘘でしょ!
100歩譲ってこの話が本当だとしたら、もう南條は私が知っている南條ではない。
3年前、私はこの学校に入学してしまったことを本当に後悔していた。もっと、勉強していたらましな学校に入学出来たのにと。大好きなゲームのプレイ時間を犠牲にして勉強を続け、なんとこの春、某有名私立大学に合格することが出来た。だから、教員室で大騒ぎになっているのは、私についてのはずだった。
しかしそれを超える大物が今年はいたのである。
私は教室の窓から見える青い空を見つめてふっとため息をついた。
「それはすごいことだね。南條にあとでおめでとう、を言わなきゃ。」
あさみは言った。
「そう言えばちょっと前、南條が最近みきが全然一緒に帰ってくれないって言ってたよ。」
「勉強で忙しかったのよ。」
私は強く言った。
なんでもないような顔をしていたが、内心悔しい気持ちがあった。
これは私がこのギャル底辺高校で過ごした3年間の記録である。




