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蒸気と弦と  作者: カンチ
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瓦礫と歯車が混ざり合った廃区画の上を、蒸気が低くうねりながら漂っていた。

破裂した配管から漏れ出る白い蒸気は、かつてこの街が栄えていた名残だ。

金属の山は、錆びついた墓標のように少年の前にそびえ立っている。


少年は喉の奥が焦げつくような渇きを覚えていた。

胸に空いた穴は、失われたものの形をそのまま刻んでいる。

風が吹くたび、機械油と煤がその穴をなぞり、身体の内側まできしむ気がした。


そんな時だった。

遠くで古い旋律が蘇った。


瓦礫をかき分けると、奇跡のように一台のギターが姿を現した。

ボディはヒビ割れ、

弦は切れ、蒸気仕掛けの共鳴装置も黙ったままだ。


「関係ないさ」


壊れていても、錆びていても、音が出なくても。

音楽は、求めた者にだけ反応する――

まるで心を読み取るように、


少年はギターを抱え、叫ぶ

その瞬間、停止したはずの共鳴装置がかすかに震えた。

瓦礫の都市に、遠い旋律が、確かに流れ始めた。

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