たおやかに艶めくケツ
◇
ワイバーンキングを撃破!!
「キシャアッ!」
「ありがと、アクァーク! これからもよろしくね~」
アクァークを役目を終えると、空中で水の泡となって消えてった。
アクァークが元の世界に戻っていくさまを、私は手を振って見送った。
やったわ、新たな召喚獣をゲットして、強敵もやっつけた!
さらに水の化身・アクァークと接合したので……。
水属性魔法・初級~中級を習得!
固有スキル『水属性ブースト・改』を獲得!
やったぁ!
ついに属性魔法をゲット!!
それに、これで常に『水属性ブースト・改』の状態にできるようになった。これは嬉しいわ!
……って、喜んでる場合じゃないわね。
私とネネミュウは今も絶賛落下中だったのよ、どうやって着地するか考えてなかったわ!
と、死んだはずのワイバーンキングが、最後の力を振りしぼって翼を1回、羽ばたかせた。
「ゴッ……ゴアアァ……」
再び浮上しようとして翼を羽ばたかせたけど、それは叶わなかった。もう飛びあがるだけの力は残されておらず、そのまま地へと墜ちていく。
きっと、直下の建物を派手にブッ壊しながら、瓦礫に埋もれていくことだろう。
ただ、その残りかすかな力を振りしぼって行われた最後のひと羽ばたきは、私たちをはるか彼方に吹っ飛ばすのにはじゅうぶんなだけのパワーが込められていた。
さすが竜の王、散り際もスケールが違う。
「あ~~れ~~」
「ミュ~ウ~~」
「サヤさま!」
私とネネミュウはワイバーンキングの翼が起こした風に煽られるまま、再び上空へと飛びあがった。
いったいどこまで飛ばされんのよ~。
◆
ーーそのころ街の北西部では、いよいよ王国正規軍と北方の蛮族・ヴァルムンクが激突しようとしていた。
Aランクの者が率いる部隊どうしの戦い。しかも、いずれも攻撃特化型の戦闘スタイル。
血で血を洗う激闘が予想されていた、そのときであった。
両部隊がにらみあう空白地帯の中心点に、何者かの影が落とされた。
「バクハハハァ!! さぁ野郎ども、あの蛮族どもをひとり残らず爆砕してやろうぜぇ!!」
「あはははぁ。タコ殴りにしてボッコボコにしてやんよぉ♪」
「隊長、副隊長、お待ちください! 何者かが上空から飛来してきます!」
「「ん?」」
王国正規軍もヴァルムンクも、皆が上空を見あげた。
◇
ーーヤバいヤバいヤバい、いよいよヤバい!
ワイバーンキングの羽ばたきで1度は飛びあがったけど、それはただ落下までの瞬間を先伸ばしにしただけ。
問題はな~んにも解決していない。
ヴァーナさんを始め、ヴァルキリアーの戦士たちは誰も付いてきていない。
モブワイバーンたちの残党処理に忙しいし、何よりあれだけ派手に召喚魔法をキメたこの私が、浮遊魔法すら使えないド無能であるということを彼女らは知らない!!
「わっ、わっ、わ~!!」
「ミュウウゥ~!!」
いよいよ地面が間近に迫ってきて、もう何も考えられない。
これまではピンチになると自然に体に痣が浮かびあがってきて、新しい召喚獣との出会いが導かれてきたけど、なぜだか今回は何も浮かびあがってこない。
ダメだ、もうぶつかる。ええい、ままよ!!
「お願い、誰でもいいから来て! 『召喚』!!」
ダメ元で召喚スキルを起動したところ、奇跡的に体に痣が浮かびあがり、召喚に成功したようだった。
そうして地面に直撃する私の目前に現れたのは……プルルンとたおやかに艶めく、ケツだった。
ボンヨヨヨ~ン!!
「プリプリ~♪ プリプリ~♪」
「え~!?」
私の目の前に現れたのは、なんとプリンケッツだった!
新しい召喚獣を呼びだす『必要性』がなかったから、自分で何を呼びだすか考えなきゃならなかったってことね。
地面に激突する瞬間、かすかにクッションのようなイメージがよぎったことに心当たりを覚える。
「イダッ!! てっ、とっ……!」
「プリプリ~♪ プリプリ~♪」
私はプリンケッツのお尻でボンヨヨヨ~ンと跳ねたのち、自分のお尻でも2・3回バウンドして、なんとか地面に着地することができた。
「イタタタ…………んっ!?」
私は自分のお尻をさすったのち、すぐさま周囲の状況の異常さに気がつく。思わずキョロキョロとあたりを見まわした。
私たちを取り囲むようにして……アレは王国正規軍?
別の部隊と対峙してた? なんだあの黒マスクに黒マントに黒パンツ一丁の不審なあらくれ者たちの集団は。
ワイバーンキングとの戦いに夢中になっててぜんぜん気づかなかったけど、いったい全体何がどうなってんのよ~!
そして、その場にいた全員の視線は……中央で陽気にケツを振りつづけるプリンケッツへと向けられていた。
「プリプリ~♪ プリプリ~♪」
あぁっ。やめて、見ないで。
私がこの世に呼びだしたモノがこれだけ多くの大衆の目に晒される日が来るなんて夢にも思わなかった。
恥ずかしすぎて、どこか遠くの断崖から身を投げだしてしまいたい。あのまま抵抗せず地面に頭をぶつけてたらよかったんだわ。
私は生き延びてしまったことに後悔を覚え、両手で顔を覆い、その場にうずくまった。あたしって、ほんとバカ。
……しかし、プリンケッツの登場はその場の展開に思わぬ変化をもたらすこととなった。
「ウガォ~オ!!」
「ウゴォ……ウッ、ウッ……!」
え!?
黒マスクのあらくれ者たちが、泣いてる!
しかも、大号泣。大の男たちがこぞって、人目もはばからずに声をあげて泣いていた。
これには王国正規軍の騎士たちも困惑。
拍子抜けしてしまって、互いに顔を見合わせていた。
どうやら、戦いどころの雰囲気ではなくなってしまったみたい。




