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余白の街  作者: 学生の人
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光のもとで生きる少女

もし、永遠に昼が続く世界があったら。

光のもとで生きる少女がいた。

ヘルメル—それは昼の街。空は常に青く輝き、一日中太陽が昇り続ける。

永遠の、昼の世界だ。

街は白く輝く石で作られ、空気は広大な自然を感じさせ、すべてが眩しかった。


そしてとある少女、エレナはこの街で育った。子供の頃から太陽とともに起き、太陽に見守られて眠る日々を送ってきた。

それがこの世の理だと思って生きてきた。

しかし、彼女には子供の頃から不思議に思うことがある。


「夜って?」

私は絵を描くのが好きだ。子供の頃から好きでヘルメルの町並みや広大な自然を描いていた。

でも私の絵にはなにかが足りない。絵にあるのはいつも空一面に宝石のように広がる青空とサンサンと辺りを照らす太陽だ。

私は夜が知りたかった、描きたかった。心の中にぽつんと空く隙間を埋めてみたかった。

「あーあ、夜の街が本当にあったら良いのに」

夜の街、それはこの街につたわる言い伝えだ。

境界の森を越えたそ先に、永遠に夜が広がる街があると。

だが、そんなことを信じている人なんてこの街にはいない。

たった一人を除いて。


ある日のこと。

今日もスケッチをしようとキャンパスや絵の具を落としそうになりながら両手に抱えて家を出た。

街の外へしばらく歩いていると愛想良さそうな年上の女性が通りの家のベランダから顔を見せた。

「あら、エレナちゃんじゃない」

「あ、お姉さん!こんにちは!」

「こんにちは、相変わらず元気ね〜。今日もスケッチかしら?」

「もちろん!今日は久しぶりに丘まで行くんです!」

「そうなのね〜。帰ってきたら描いてきた絵、見せてくれるかしら」

「もちろん!じゃあ行ってきます」

「いってらっしゃい」


それからしばらくして街の外の丘についた。

ここはヘルメルの街が一望できる場所だ。

しばらく、街の景色を眺め少し黄昏れる。

描くイメージができたら、もってきた道具を組み立てキャンパスに筆を走らせ始めた。


—しばらく没頭していた。

少し休憩しようと体を伸ばす。

「んーー!」

「さすがに疲れた⋯」

そのまま地面に仰向けになった。

日が落ちることはない、視界にはさっきと変わらない一面の青空が広がっている。

じっと動かないでいると顔の近くに蝶々が飛んできて私の鼻に止まった。

私は目を閉じる。

そうしているとき、どこからか視線を感じた。

森の方向を見た私の目に写ったのは、なんとも形容しがたい姿のもの。

体からは光が出ていて、まるで絵本に出てくる森の妖精のような姿だった。

「なに⋯あれ」

その妖精はしばらく私の方を見つめたあと、森の奥へと去っていってしまった。

「まって!」

私はその妖精について行くことにした。

自分でも、なぜかはわからない。ただ、その妖精が、森が、私を呼んでいるように感じたから。


妖精を追って森の中に入った。

生まれてからこの森に入ったことは一度もなかった。

なぜなら両親が「何があっても入るんじゃない」と森に入ることを固く禁じていたから。

それがヘルメルという街の決まりだったから。

森の中は、高い樹木が立ち並んでいてジメジメと湿っていてる。

静かで不気味なようで、どこからか日が差し込み、神秘的な雰囲気が漂っていた。

「あ」

森に入ってしばらくして、さっきの妖精のようなものを少し先に捉えた。

彼はこちらに振り向き、私の方を見つめている。

私はゆっくりと近づく。

「君はさっき…私を―」

そう、私が言いかけたところで妖精はまた逃げるように走り出した。

私は急いでそれを追うように走り始める。

「ねぇ!」

「ねぇってば!」

「君はさっき、私になんて言っ」

そう、言いかけたところだった。

走る私の眼の前に世界が割れたかのように存在する影のような裂け目が現れた。

私は、勢い余ってその世界の裂け目に触れた。


触れた瞬間、闇が包み込む。



「…っ」

再び森で目が覚めると、世界に光はなかった。

あたり一面に広がるのは漆黒の闇。

とてつもなく地上に近くいところで輝く太陽のような球体と、宝石のように輝く無数の点だけがあたりを照らす。

そして、風は肌を通り抜けるかのように抜けていく。

そう、例えるのならそれは、

言い伝えで聞いていた”夜の街”そのものだった。

「うそ…これが…夜…」

エレナはあの空に輝く丸い球体が月という名前だということも、空に輝くあの点が星と呼ばれているのも知らない。

それでも、世界は美しかった。

「素敵…」

エレナは空に手を伸ばし、掴もうとする。

すると、どこからか風を切る音が聞こえてきた。まるで鳥が空を飛ぶような。

そして、彼は空の月を背にして私の前に現れた。

彼は不思議な姿をしていた。

頭には動物のような耳がついていて、腕付近からは黒い飛膜が生えていた。

彼は空からゆっくりと降りてくる。

整っている顔立ち、鋭い眼光。なにより、目に宿る「闇」がエレナには美しく見えた。

「君…昼の人間だろう」

彼の声はまるで夜風のようで、落ち着いていた。

「えっと、そうだよ。今気がついた頃にはここにいて、あなたは…」

「なら、早く戻ったほうがいい。戻る方法は知ってるんだよな?」

私は黙り込む。

「まさか知らないのか?」

「…うん」

「そんなわけはないはずだ…昔の記録では見つかり次第に姿を消した聞いた」

「でも、私知らないし…」

すると彼は考え込むように手を頬にあてた。

エレナは、もう戻りたくなんてなかった。

闇に包まれ、輝く星々、透き通るような夜風、夢見た夜の世界。

それはエレナの心にぽつりと開く隙間であり、絵に描くことを夢見てきたそのものだった。

戻りたいなんて気持ちが、湧いてくるわけがなかった。

「もう少しだけ、ここにいてはだめ?」

青年は驚いたように目を細めた。

「それとも、君が私をもとの世界に戻してくれるの?」

「…」

彼はまた考えこむ。

「…名前は?」

「そうこなくっちゃ!」

「私はエレナ、あなたは?」

「俺は”リオ”、夜の街の住人だよ」

「君を、放ってはおけないな」


―こうして昼の街の少女と夜の街の青年は出会った。

そして、この瞬間から世界は、静かに混じり始める。

もし、永遠に夜が空を包み込む世界があったら?

そんな世界があったら、どんなに美しいだろう。


まだ学生ですが小説家目指してます。もし、見てくれた人がいたなら、コメントしてくれると嬉しいです。

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