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アルテミスの森の魔女 その6

 さて、その後も、シュナンとデイスの二人は、村市場で買い物を続け、必要な物を入手すると、次々にデイスの持つ魔法のエコバックに、詰め込んでいきました。

そして買い物を一通り済ませると、村を出て、先ほど来た道を逆に戻り、メデューサたちが家獣と共に待つ、湖のほとりを目指して歩みを進めます。

彼らが村を出て、並木の間を通る一本道を歩き始めて、しばらくたった時の事です。

シュナン少年が、ふいに、その歩く足を止めます。

彼が足を止めたのは、周りに広がる森の奥へと入る脇道がある場所であり、先ほど村に行く時にも立ち止まった、魔女の家への案内板がかけられた、大きな木の前でした。

その森の奥へと向かう、分かれ道の前に立ち止まったシュナン少年は、手に持っている師匠の杖に、あらためて聞きました。


「この森の奥で、店を構えているという魔女は、グランドーラ様だったんですね。師匠は、気づいてたんですか?」


魔女の家への案内文が記された、木製の看板が掲げられた、大きな木の方に顔を向けながら、質問して来る弟子に対し、師匠の杖は、その大きな目を光らせながら答えます。


「ああ、その看板に刻まれた薔薇の紋章は、間違いなく。我が師のものだ。西の都を出てから、あちこちの国をを旅されていたようだが、最近、この土地に落ち着かれたのだろう。まぁ、村人たちとは、あまりうまくいってないようだがな」


その木に掛けられた看板には、魔女の家が森の奥の脇道を入った道なりにあって、薬草などを売っている事を知らせる文章と共に、薔薇を元にデザインされた紋章が、刻み込まれていました。

すると、その時ふいに、シュナンの隣に立つ吟遊詩人デイスが、横から口を出してきました。


「でも、村で聞いた話は、本当なんですかい?彼女は恐ろしい魔女で、近づくと命が無いってのはー」


シュナンが、その手に持っている師匠の杖は、その先端部の円板についている目を光らせながら、答えました。


「ふんっ、まさか。確かに怒らせれは、恐ろしい方だが、むやみやたらと人を傷付ける御仁ではない。恐らく誰かが、あの方を陥れる為に、おかしな噂を流しているのだろう。何のためかは、判らぬがな」


師匠の杖の、その言葉を聞いて、彼をその手に持つシュナンが、再び聞きます。


「会いにいきますか、師匠。この森の奥へと脇道を行けば、グランドーラ様の住む家まで、たどり着けるはず。それに彼女が、トラブルに巻き込まれているのなら、何かお力になれるかもしれません」


人間の村へと繋がる道と分岐した、森の奥深くへと繋がる脇道の方に顔を向けながら、手にした師匠の杖に尋ねる、シュナン。

しかし、彼の手に握られている師匠の杖は、その大きな目を光らせながら、どこか沈んだ口調で声を発します。


「いや、わたしはあの方に、破門された身だからな。合わせる顔がないよ。それに今は、いくら師匠とはいえ、他人事にかかずらっている場合ではない。我々には、大事な使命があるのだから」


「それもそうですね・・・。わかりました、師匠」


シュナン少年は、師匠の杖の言葉にうなずくと、分かれ道の方から、身体を背け、クルリと踵を返しました。

そして再び、吟遊詩人デイスと肩を並べ、仲間たちの待つ湖のほとりまで戻る為に、元来た道を引き返し始めます。

魔女の家へと向かう、分岐点を後にした彼らは、村へと真っ直ぐに続く道を、来た時とは逆方向に早歩きで歩き、帰路を急ぎます。

だんだんと遠ざかる、二人の並んで歩く後ろ姿を、魔女の家へと向かう目印である、看板がかかった大きな木が、静かに佇みながら見送っていました。


さて、人間の村での買い物を済ませたシュナンとデイスは、村の周囲を囲む森の中を通過して、やがて人気のない場所まで、たどり着きました。

するとシュナン少年は、最初にこの辺りまで来た時と同じく、片手に杖を持ったまま、エコバックを携えたデイスを、両腕で羽交い締めにする様に後ろから抱きかかえると、何やらブツブツと、呪文をつぶやき始めます。

シュナン少年が魔法の呪文を唱えると、彼の身体は自分よりも一回り大きなデイスの身体を、背後から抱きかかえたまま、空中にフワリと浮き上がります。

そしてシュナンは、師匠の杖を脇に挟み、エコバックを持つデイスを背後から持ち上げたまま、マントを翻して空を飛び、メデューサたちが家獣と共に待機する、湖のほとりを目指し、来た時とは逆方向に、森の木々の頭上を、ひとっ飛びで越えていきました。

やがて眼下に湖が見えると、そのほとりには、うずくまる家獣の巨体と、その近くで空を見上げながら手を振る、レダとボボンゴの姿がありました。

そこでシュナンは、空中で一旦停止すると、デイスの両脇を背後から抱えたまま、仲間たちがその前で待つ、家獣の巨体の側の草地の上に、スーッと降り立ちました。

こちらに飛んでくるシュナンを見つけて、手を振りながら空を見上げていたレダとボボンゴは、シュナンがデイスを抱えたまま、地上に降り立つのをみると、草地を駆けて、彼の元に走り寄ります。


「おかえり、シュナン」


「大丈夫だったか」


口々に声をかけてくる二人に、笑顔で応える、シュナン。

シュナンと共に地上に降り立ったデイスも、慣れない空中飛行で、少し顔を引きつらせながらも、持っていたエコバッグを頭上に掲げて、自慢げに笑いながら言います。


「買い物は、バッチリですぜ!見て下さい!」


そう言って魔法のエコバッグから、いくつか品物を取り出して見せる、デイス。

買い物帰りの二人の元に駆け寄った、レダとボボンゴも、感嘆した表情を、その顔に浮かべています。

シュナンも師匠の杖を通して、仲間たちの様子を見ていましたが、ふと、その場に、メデューサの姿が無いことに気づきました。


「メデューサは、どこに行ったんだい?」


シュナンの質問に、デイスがバックから取り出した、大きなニンジンを手にする、レダが答えます。


「なんか、湖の方へ行ったみたいよ。あなたと一緒に行くつもりだったらしいけど、待ちきれなかったみたい。まったく、落ち着きがないんだから」


「そう・・・」


シュナンは杖を通じて、湖のきらめく水面を眺めると、静かな口調で言いました。

そしてメデューサへの贈り物が入っている、上着のポケットを、杖を持っていない方の手で、軽く、そっと押さえました。


[続く]


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