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夢見る蛇の都 その2

 カーロン川の激流を、筏に乗って下るシュナン一行は、実に一昼夜の間、その山峡を蛇行する激流に翻弄されながら川を下り続け、徐々に目的地である、東の旧都パロ・メデューサに近づきつつありました。

山脈の狭間を蛇行して走る、激しい流れの川を下る筏の上に、仲間たちと共に乗るシュナン少年は、筏の前の方に師匠の杖を構えながら乗っており、魔法による念動力を使って、自分たちの乗る筏をコントロールし、筏が山峡の岩壁に、ぶつからないようにしていました。

精神を集中させながら、筏の前の方に乗るシュナン少年の背後では、他の仲間たちが、振り落とされて川に落ちないよう、懸命に筏にしがみついています。

体重の軽いメデューサとレダは、どっしりとした巨人ボボンゴにしがみつきながら姿勢を低くして筏に乗り、前の方に乗るシュナン少年の背中を見つめています。

一方、吟遊詩人デイスは、四つん這いになって必死に筏にしがみつき、自分の身体が、川に投げ出されない様にしていました。

こうして、決死の思いでカローン河の激流を下っていたシュナン一行ですが、シュナン少年の努力のかいあってか、険しい山肌に覆われていた、筏の前方に広がる視界が徐々に開けて、それに伴い川の流れも、少しずつ穏やかになっていきました。

そして川の激流に飛び込んでから、まるまる一昼夜たった夕刻近くに、シュナン一行の乗った筏は、パロ・メデューサの周辺に広がる山岳地帯をついに突破し、彼らの乗る筏は、カローン河の水が流れ込む、古い都の西側に広がる、穏やかに水をたたえる大きな湖へと、ようやくたどり着いたのでした。

川の激流を突破して、その先に広がる大きな湖へと、投げ出されるように入り込んだ、シュナンたちが乗る筏は、先ほどまでとは打って変わって、湖の上に静かに漂っていました。

さっきまで姿勢を低くして、筏にへばりついていた、シュナンとその仲間たちは、筏の上で立ち上がり、それぞれが周りの景色に、目を馳せています。

彼らの乗る筏が浮かんでいる大きな湖は、カローン河の下流に位置する、大昔に隕石が落下して出来た、ほぼ円形の形をした湖で、パロ・メデューサの近くにあることから、メデューサ族は、かつては、その湖を、水源地として利用していました。

しばらくの間、ついにたどり着いた、目的の地の風景を、湖に浮かぶ筏の上から、感嘆の思いで見つめていたシュナン一行ですが、やがて目の良いレダが、自分たちがやって来た方向とは反対側に位置する、湖の向こうに広がる、黒々とした土地を指し示して、叫びました。


「あれ見て!!シュナン!!!」


レダが指差した、湖の向こうに広がる平坦な土地の更に向こうには、高い塔のような建物がいくつも屹立する、今まで誰も見た事が無いような建築様式で作られた、巨大な大都市が、その威容を現していました。


筏の上に、杖を持って立つシュナンか、低い声で呟きます。


「パロ・メデューサー。夢見る蛇の都」


その言葉を聞いた、彼の隣に立つメデューサが、一瞬、その肩を震わせます。

そう、湖に浮かぶ筏の上から、シュナン一行が茫然と見つめる、その巨大都市こそ、かつてはメデューサの父祖が作り上げた大帝国の首都である「東の王都」、または「パロ・メデューサ」と呼ばれた場所であり、その後の神々との戦いに敗れて廃墟となり、現在は「夢見る蛇の都」と呼ばれる、無人の都だったのです。


シュナン一行は、自分たちの乗っている筏を、パロ・メデューサがそびえ立つ方向の、湖の岸辺に横付けすると、次々と筏からおりて、全員が地面へと降り立ちました。

やがて彼らは、互いにうなずき合うと、上陸した地点から見て、正面方向にそびえ立つ、巨大な都市パロ・メデューサの方へ向かって、みんなで肩を並べて歩き始めます。

そしてしばらく歩いた後で彼らは、ついに今まで見たこともない建築様式で作られた、高層の建物群が縦横に居並ぶ、パロ・メデューサの都市の内部へと、その足を踏み入れました。

シュナン一行は、周囲をキョロキョロと見回しながら、巨大都市パロ・メデューサの、整備された街路を歩きましたが、自分たちの歩く無人の都市を創り出した、信じられないほど高度な技術水準に、驚嘆の念を隠せませんでした。


「すごい・・・こんな高い建物、見たことない。一体、どんな材料で作られてるんだろう」


周りの高層建築を見上げながら、その顔に驚嘆の表情を浮かべる、ペガサスの少女レダ。


「石でも、ない。木でも、もちろん、ない。なんだか、分からない」


巨人ボボンゴも、自分の常識をはるかに超える、その建物群の異質な姿に、戸惑いを覚えているみたいでした。


「強いて言えば、陶器みたいな材質ですな。それよりシュナンの旦那、確かに物珍しいですが、いつまでもウロウロしてたんじゃ、ラチが開きませんぜ。そろそろ、お目当てのものを、捜しに行かないとー。日が暮れちまいますぜ」


シュナン少年に、冷静な口調で忠告する、吟遊詩人デイス。

彼は、何故か、パロ・メデューサの信じられない様な威容や、それを支える高度な科学技術力についても、あまり驚いてはいないようです。


「そうよ、シュナン。「黄金の種子」を早く、捜しましょう。でも、こんな大きな都市、くまなく探すのは、すごく大変だわ」


シュナンの隣で歩きながら、デイスの言葉に賛同する、メデューサ。

彼女は、自分の父祖の地に足を踏み入れて、なんだか心がざわつくのを、抑えれないようでした。

メデューサと肩を並べて、無人の都市内を歩くシュナンは、その目隠しをした顔を、無言でうなずかせます。

そんな風に、それぞれの思いを抱きながらも、大きな塔みたいな高層建築物や、奇妙な外観の建物が整然と並んでいる、無人の巨大都市を共に歩くシュナン一行でしたが、やがて、シュナンの持つ師匠の杖が声を発します。


「確かに、メデューサやデイスの言う通り、漫然と歩いていても、仕方がないな。物見遊山に来たわけではないのだから。とりあえず、メデューサ王の住処であった、ラピータ宮殿を目指すとしよう。大きな建物だから、すぐに見つかるはずだ」


シュナンの隣で寄り添うように歩いているメデューサが、蛇の前髪で覆われたその顔を、少年の持つ杖の方に向けます。


「ラピータ宮殿・・・。「黄金の種子」もそこにあるの?レプカール」


メデューサの問いに答える、師匠の杖。

その先端の円板に刻まれた、大きな目が、キラリと光ります。


「ああ、おそらく「黄金の種子」は、ラピータ宮殿の宝物殿に、他の宝物と共に、貯蔵されているはずー。「天空の城」と呼ばれた、王の住まうあの場所にな」


[続く]


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