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アルテミスの森の魔女 その38

 チキに手を引っ張られて、シュナンたちと共に、魔女のお店に入ったマンスリーは、その内部の変貌ぶりにビックリしました。

古びた陰鬱な雰囲気が漂っていた室内は、明るく清潔な感じに生まれ変わっており、多数のテーブルと椅子が床に配置されていて、それを取り囲むように、薬や様々な物品を販売するコーナーや、宅配便を受け付けるコーナーも、設けられています。

更に、その奥の部屋は、広いシステムキッチンになっており、そこで調理した料理や飲み物を、お客に提供出来るようになっていました。

つまりは、このお店のコンセプトは、レストランとドラッグストアとコンビニを合わせたようなものであり、大勢の村人が集まる、社交場みたいな場所になる事を目指していたのです。

また、店舗部分からのびた通路の先には、マンスリーの書斎や寝室、さらにはアルバイトの女の子たちが寝泊まりする寝室など、小分けにされた部屋がいくつも並んでいる、住居部分となっており。チキやペガサス族の少女たちが、住み込みで働けるようになっていたのです。

大魔女マンスリーは、チキやペガサスの少女たち、そしてシュナンやメデューサと共に、その真新しく輝く埃一つない、そのお店の室内をまぶしそうに見つめていました。

そんな彼女でしたが、やがて家の外から、何やら賑やかな音が聞こえることに気付きます。

マンスリーが、店内の飲食スペースの近くの壁際に付いている、大きな部屋窓から外を見ると、朝の光の中、村のある方角から、大勢の人たちが、こちらに向かってやって来るのが見えました。

それは新装開店した魔女のお店に興味を持ち、一度、訪ねてみようと示し合わせてやって来た、近くの村に住む大勢の村人たちでした。

そして彼らの先頭に立っているのは、シュナンの仲間である、吟遊詩人デイスでした。

彼はしばらく前から、近くの大きな村「ジブリ村」で新米魔女チキと共に、新しく開店する魔女のお店の事をみんなに知ってもらうために、チラシ配りなどの宣伝活動を行なっていました。

そんな彼は、新装開店の当日である今日になって、更に強く村人たちに呼びかけ、それに応えた大勢の人々を引き連れて。魔女のお店の前までやって来たのです。

村人たちの先頭に立って、魔女のお店へと向かう吟遊詩人デイスは、その手に彼が愛用する竪琴を持っており、それを弾き鳴らしながら、村人たちを誘導しています。

彼がかき鳴らす神器オルフェウスの竪琴には、人の心を癒す力があり、これによって幻術師マローンによって村人たちに植えつけられた、魔女マンスリーに対する偏見や恐怖心を、ある程度、ぬぐい去ることが出来たのです。

彼の奏でる竪琴の音と共に、吟遊詩人を先頭に、魔女のお店へと向かう人々の列の中には、街中でデイスとチキにからんできた不良たちや、ちょっと前に病気の子供をマンスリーに救われた、家族連れの姿もありました。

周囲の木陰から、様子をこっそりうかがっていた人たちもいたのですが、彼らも、大勢の人たちが魔女のお店に行くために歩いているのを見て、その列に加わります。

魔女のお店の中から、部屋の窓の外にかいま見える、大勢の人々が押し寄せて来る様子を、驚きの表情で眺めていたマンスリーでしたが、やがて手をパンと叩いてから、周りにいるみんなに向かって言いました。


「さあ、お客さんが、いっぱい来るみたいだよ。忙しくなるけど、みんなで頑張ろう!慣れない事も多いし、失敗もあるだろうけど、そこは互いに助け合って根性で乗り切るよ!!」


マンスリーの檄に応じて、お店の看板娘である「冥土服」を着たチキや、ペガサス族の少女たちが、一斉に片手を頭上に突き上げ。声を合わせて叫びます。


「イエス、マスター、オーッ!!!!!」


そんな気合十分の少女たちの姿を見て、口元に笑みを浮かべる、大魔女マンスリー。

側にいるシュナンやメデューサ、それにペガサス族の長である赤髪ポニテの少女レダも、頼もしそうに彼女たちを見ています。

こんなわけで、マンスリーの魔女のお店の新装開店の初日は、物珍しさもあり、大勢の村人たちが押しかけて、大盛況となったのでした。

お店の主人であるマンスリーや、「冥土服」を着たチキやペガサス族の少女たちだけでは、大勢のお客をさばききれず、シュナン一行も、臨時スタッフとして店を手伝ったほどでした。

レダは、物品の販売や接客などを積極的に担当し、正体がばれるわけにはいかないメデューサは、フード付きのマントを身につけて、奥の厨房で皿洗いや調理の手伝いをしました。

またシュナン少年は、師匠の杖と共に、マンスリーを手伝い、主に会計業務などを引き受けました。

そんなこんなで、お店は目が回るほど忙しく、特に事前に無料配布券を配っていた、主力商品のドリンクであるタペオカは、注文が相次ぎ、あっという間に売り切れてしまいました。

こうして魔女のお店の初日の営業は、目の回るような忙しさと共に過ぎて行き、営業時間の終了後には、マンスリーをはじめとするお店のスタッフは、全員クタクタに疲れていました。

吟遊詩人デイスだけは、肉体労働が苦手なせいか、お店の片隅で、ずっと竪琴を奏でていました。


働いたら、負け~♪


働いたら、負け~♪


働いたら、負けですぜ~♪


ほれっ、スイスイ、スイ~ダラダッタ~♪


お店の営業中はもちろん、営業終了後も、後片付けすら手伝わないデイスに対して、チキを初めとしてみんなはあきれ顔でしたが、ただ一人店の主人である大魔女マンスリーだけは、会計業務の合間に、隣に立つシュナン少年にそっと耳打ちをします。


「彼には気をつけなよ。あたしにも、はっきりとは分からないけど、多分とんでもない大物だからね。これはあくまで、あたしの勘だけどー。最終的には彼が、あんたとメデューサの旅の成否を、左右するのかも知れない」


[続く]


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