表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/51

アルテミスの森の魔女 その25

 翌日、メデューサとレダは、魔女マンスリーに、ある申し出をしました。

それは、今は離れた場所に待機させている、シュナン一行が移動する際に使っている、運搬用の魔獣である「家獣」を、泊りがけで見学して見ないかとの、誘いでした。

魔女であるマンスリーは、魔法生物である家獣に興味があるはずであり、更に泊りがけで彼女を接待する事によって、少しでもマンスリーに恩返しをしたいと、メデューサたちは考えたのでした。

そして、それはまた表向きの理由であり、本当の目的は、しばらくの間マンスリーに魔女の家を留守にさせ、その間にメデューサたちが、マンスリーを助けるために考えたある作戦を決行するためでした。

マンスリーに、正直に言おうかとも思いましたが、自尊心の強い彼女は、メデューサたちの提案を遠慮して断る可能性もあり、ここは内密に事を進めた方がいいと考えたのでした。

マンスリーは最初、自宅兼店舗でもある魔女の家を、留守にする事をためらいました。

けれど回復したシュナンと、吟遊詩人デイスが、しっかり留守を守るという事で、ようやく彼女は納得し、メデューサたちの提案を受け入れて、魔女の家を離れ、森の窪地に佇む家獣の元へと赴く、決心をしたのでした。

そんなわけで、ある朝、魔女の家の前には、家獣の元へ赴くために、レダの変身したペガサスの上にまたがる、老魔女マンスリーの姿がありました。

マンスリーの背後には、メデューサもおり、二人乗りで、レダのペガサスの上にまたがっています。

さらに彼女たちの前には、杖を持ったシュナンと、吟遊詩人デイスも、見送りのために家の外に出て来ており、玄関先で、両者は向かい合っていました。


「それじゃ、行ってきます」


メデューサの言葉と共に、蛇娘と魔女の二人を、その背中に乗せた。レダのペガサスは、フワリと空中に舞い上がりました。

地上から、シュナンとデイスが見送る中、二人を乗せた白いペガサスは、やがて雲の狭間を駆け抜けて上昇し、やがて青空の向こうへと、吸い込まれるように消えていきます。

シュナンとデイスは、その消えゆく姿を地上から、しばしの間、見つめていました。


さて、森の中に待機させている、家獣の元に向かったマンスリーを、魔女の前で見送った、シュナンとデイスは、その後すぐに、かねてより、仲間たちと打ち合わせていた計画を実行するため、行動を開始します。

まず、近くにある人間の村まで行った彼らは、レダから提供された装飾品を売り払い、軍資金を作りました。

それから、村で営業している大工や塗装工、それに家具屋やなど、必要な場所を次々と回りました。

翌日、二人が滞在している魔女の家に、人間の業者たちが、続々とやって来ました。

それは前日に、シュナンたちに依頼された、魔女の家の改修工事を、行うためだったのです。

そうー。

これこそが、メデューサが他の仲間たちに提案した、マンスリーを助けるための計策であり、それは魔女の家を、村人たちが気軽に訪ねる事の出来る、ファンシーなお店に改修して、両者が仲良くなれるよう、お膳立てをするという、作戦だったのです。

そして、今まで魔女の家では、主に薬の販売しか行っていなかったのですが、あらたに喫茶コーナーや占いコーナーももうけ、更にお菓子や土産物など、色々な物産も、販売する事にしたのです。

これは病気の人たちや、その家族だけではなく、老若問わず大勢の人間に、魔女の家を訪ねて来て欲しいと、メデューサたちが考えたからでした。

また、レダが族長をつとめる、ペガサス族の村と連携し、運送業も始める事にしました。

それは、天馬ペガサスの機動力を利用し、マンスリーの魔女の家を中継点として、近辺の住民と各地の商人との間の、物品のやり取りを請け負い、手数料をもらうという、現在でいえば、宅配業者みたいな仕組みの、ニュービジネスでした。

ペガサス族の長であるレダは、この事業を実現させるために、故郷の村に伝書鳩を飛ばして、ペガサス族の女の子を何人か、こちらに呼び寄せました。

魔女の家に、何人かペガサスの少女を常駐させ、宅配便の仕事をさせるためです。

それに周りに若い女の子たちがいれば、マンスリーが孤独を感じる事も、無くなるに違いありません。

この「ペガサス印の宅急便」計画と合わせて、魔女の家のリフォームも、人間の大工たちの手によって、着々と完成に近づいていました。

今までのどちらかといえば、陰鬱な雰囲気だった魔女の家に比べ、今度のそれは、明るい色彩の屋根を始め、カラフルで暖かい印象を与える、瀟洒な感じの一軒家に、仕上がりつつありました。

そして、その家が完成した暁には、一般に解放される予定の、「花神」マンスリーが造り上げた美しい庭園と共に、多くの人々の心を魅了し、来訪者がひっきりなしに訪れるであろう事を、メデューサたちは確信していました。

そんなこんなで、主にメデューサがプロデュースする、「魔女のお店リニューアル大作戦」は。着々と進行していたのですが、そんな様変わりする魔女の家の様子を、少し離れた場所から、じっと見つめている人物がいました。

その人物は、魔女の家が建つ場所の周りに広がる林の中に身を潜め、立木の陰から覗き込むように、魔女の家の方を見つめていました。

シュナンとデイスの立会いのもと、人間の大工たちの手によって、魔女の家が徐々に生まれ変わっていく様子を、その人物は、忌々しげな態度で睨みつけます。

やがて、その全身が黒ずくめの人物は、魔女の家の前で大工たち指揮をとる、シュナンとデイスの背中を、遠くから、もうひと睨みすると、くるりと踵を返して、森の木々の中に消えていきます。

そして、憎しみのオーラをまとった、その黒い影は人間の村へと通じている、森の中を蛇行する裏道の方へ、草を踏みにじる音を響かせながら、歩み去っていったのでした。


[続く]

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ