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第七話 ブラッド・ウルフ襲撃

 先に着いたダヴィタは傷だらけであった。


幸いにも家の戸は閉めきられていたが、板が折れ凹み、長くは持たなかったであろう。


彼は斧を振り回して反撃しているが、獣たちは彼を囲って襲っている。


一匹ずつ彼に噛みつき、息をつく隙を与える様子がない。


一匹大きい奴が、その光景を離れて眺めている。


満面の笑みを浮かべているような、満足そうな表情をしているのだろう。


このままではダヴィタが損耗してしまう。


 その瞬間の洋平の感情をよぎったもので、代表的だったのが怒りであった。


とは言っても頭を沸騰させる怒りとは別の、頭の芯を凍てつかせる怒りであった。


流れるように体が動いた。


走る必要はない。


いや、走るとかえって的が外れる。


グレーの銃を構え、ダヴィタを襲う獣に照準を合わせ、人差し指を引き絞った。


ドンと轟音が一つ鳴り響き、全員弾かれたように音の方向を見た。


一匹脳天に赤い点を浮かべて倒れた。


轟音の耳鳴りが襲うが、洋平は間髪容れず二発、三発とダヴィタを打たないように、外科医がメスを入れるときのように、丁寧にかつ迅速に照準を獣に向け指を引き絞った。


獣たちは体から小さな彼岸花のような、少量の血しぶきを咲かせ倒れた。


状況を把握し、洋平を襲おうとした獣たちを見逃さず近い順に照準を合わせ、ドン、ドンと火柱を立たせる。


一匹ずつ脳天に一つ点を浮かべ、糸を切られたように転げる。


やがて親玉が洋平めがけて走り出したので、洋平は照準を合わせ指を引く。


カチと乾いた金属音が鳴る。


すかさずグレーの銃から手を離し、右股に手を伸ばした。ベルトから垂れた袋から黒い拳銃を引き、奴を狙う。


パンッ、パンッ、パンッと少し軽めの三発の轟音とともに奴の眼球と肩から赤斑点が現れるが、奴は走る足を止めない。


数発分を奴に向けて撃つが被弾しても怯む様子はない。


やがて、奴は洋平へ飛びつき肩口へかじりついた。


耳元で感じる咆哮、奴の歯が食い込み軋む骨、濡れた感触の肩。熱した金属を肩口の内々に突き立てた感覚が洋平を襲うが、負けじと拳銃を至近距離で撃った。


轟音を六発放つとスライドが後方で静止。


クロからは引き金の微かなカチカチという音しか聞こえなくなる。洋平の背中に奴の爪が食い込み、背中が生暖かくじんわりと濡れる。


咄嗟にダヴィタから借りた短剣を抜き、奴の喉元に突く、突く、突く。途端に横方向に強い衝撃を受け、地面に倒れてしまう。


奴からはダヴィタが持っていた斧が生えていた。


洋平は奴の顎を切りつけ肩口から口を引き離した。


奴は力が無いのか唸ることしかできなかった。


そしてやがて動くのをやめた。


洋平は肩口と背中から血をだくだく流しながら立っていたが、ドクッ、と心臓が一拍動した後、糸が切られたようにその場に崩れた。


流れるように家の中から女性たちが出てきた。


両名とも致命傷は見られなかったが、洋平は再び昏睡状態に陥ってしまった。

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