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第十四話 待てど待てど…

 六日が経過した。


二人は一向に帰って来る気配がない。


ウリャーナは薪集めの合間、隣家を訪ねに行くのだった。


「ジョートルのおじさん!」


「おおぉ、ウリャーナじゃないか。薪はどうだい?足りたかい?」


「…うん。おじさん…あのときはありがとう…」


ジョートル宅は森を入り、右へ抜けた所にあった。


ダヴィ宅へ一番近い隣家だが、それでも森に入らなければならないほどの距離があった。


ジョートルは長い顎髭と白髪の猟師であり、肉をあのギルドに卸して生計を立てていた。


昔は目がすこぶる良かったのだが、年老いて今や過去の透き通った鋭い目はどこへやら、灰色に曇っていた。


だが、腕前は今もなお健在であり、視覚と取って代わって嗅覚と聴覚が鋭くなっていた。


そして、ウリャーナの匂いからただならぬ事態を察知していたのである。


「少し元気が無いようだねぇ。前の薪の件と関係しているんだろう」


「……薪は…大丈夫。ありがとう。絶対に返すから」


少し間を置いた後、さっそうと立ち去ろうとしたウリャーナに声が一言かかった。


「ダヴィは一緒じゃないのかい?」


………


「お前たちは森を抜けた所に住んでいるはずじゃから、ここに来るときはダヴィと一緒のはず…。関係あるんだね、薪に。ウリャーナが元気がないわけに…」


ポツリ。


その音を彼は見逃すはずがなかった。


「無神経な老いぼれですまないのう。目が言う事をきかなくなってから、鼻が一番きくようになって、だから、におうんじゃよ。ウリャーナが悩んでいる匂いが。悲しんでる匂いが」


ポツポツ…


「お前はあの二人のどっちも持っておる。ウリーヤ奥さんのようにたくましくって明るいが、ダヴィのように内々に溜め込みがちじゃ。私に話してごらんなさい。聞き耳は日に日に良くなっているからねぇ」


分厚い雲が張っている。雨は降りそうな匂いがしないが、辺りを暗い灰色が包む。


「も、もう六日よ。お父さんとお母さんが帰ってこないの…領主様の屋敷に向かってもう六日経つの。手紙一つもくれずに。おかしいわ…」


ジョートルの顔に暗雲が立ち込める。


「領主様のお屋敷は徒歩で一日はかからんはずじゃ。それを六日とは…二人とも道は知っているはずじゃし…何か思い当たる節は無いのか?」


「薪」


「薪…取られたと言っておったが…」


「あれ、領主様の巾着してる賊達が取っていったの…」


「あやつらが…しかし、あやつらは辛うじて憲兵ではあるはず。むやみやたらに物取りはしないはずじゃろう。となると…一悶着あったんじゃろう、あやつらと?」


ウリャーナの目からは大粒の涙が溢れている。


決壊寸前のダムからみるみるうちに溢れ出す数が増えている。


「あいつら、私達が肉を裏市で買ったっていちゃもん付けてきて、でも違うってヨウヘーが言ったら、そいつらヨウヘーを襲ったから返り討ちにしたの。そしてら嫌がらせが始まって。それであいつら、家の中まで荒らすものだから、お父さんが領主様に直談判するって…」


顎髭を撫でるジョートル。


「こりゃまずいことになったやもしれん…とりあえず、そのヨウヘーとやらに会いに行っていいかのう。詳しく話を聞きたいところだ」


二人は急いでダヴィ宅へと向かった。

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