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第十三話 直談判

領主への道のりの森にて…


 二人静かに森を歩く。


どちらも沈黙を守りただ歩き続ける。


優しい太陽が木の葉から優しく照らし、どこか懐かしみのあるような、親しみのあるような親近感を思い浮かばせる。


少し顔をりんごのように赤らめるウリーヤが口火を切った。


「二人きりでどこかへ行くのは久しぶりですね」


「そうだね。ウリャーナが産まれてからそんな暇なかったからね」


「………」


あたりを静寂が包む。


ふたりともただその足並みを揃えて前進するのみ。


「あの…」


ウリーヤがダヴィの前へ出て振り返る。


頬を赤く染め、目を決意で固めている。


「貴方は私を置いていこうとしました。それは貴方の優しさからなのは知っています。ですが、私を遠ざけるのはもうよしてください」


豆鉄砲を食らったように弾かれるダヴィ。


「何を言い出すんだい。別に遠ざけようとは…」


次の言葉を発することを許さないように言葉を被せる。


「いいえ。しました。私は貴方と共に領主様のところへ行くと言いました。それを貴方は明確に拒みました。言い逃れはできませんよ」


からかうような、意地悪そうな朱に染められた表情の裏には硬い決意が込められている。


「でも、私は君を守らなければならない。それが私の役割だから…」


「役割なんてクソ食らえです。貴方、覚えてます?私達がどう出会ったのか」


「……」


俯き押し黙る。


「貴方、確か野犬に襲われてたのを私が助けたのではなくって?」


得意そうな笑みが滴り落ちる。


「それは持ち出さないでくれよぉ、恥ずかしいんだから」


「くすくす。貴方のあのときの顔と言ったら…ぷーくすくす」


「はぁ…笑ってくれ…私は頼りない男だよ」


吐き捨てたダヴィを包み込むように近寄るウリーヤ。


「ふふ。頼りなくありませんわ。貴方に幾度となく私は助けられてるじゃない。この前だってそう。貴方が先に門戸にたどり着かなければ、私とウリャーナ、獣のクソでしたわよ」


その包容はこの土地を包み込まんとする森のごとく、澄んでいて安らぐものである。


「貴方は良く守ってくれました。私もウリャーナも」


「ヨウヘーがいなければ私もダメだったかもしれない…私はあの群れを蹴散らすどころか、家へ招いたのだろうし…やはり私では」


澄んだ緑から木漏れ日がチラチラと温かい。


ウリーヤの包容は自己嫌悪の氷の檻に閉じこもったダヴィを溶かし出した。


「違います…。確かに、貴方は少し自信が無いというか、肝っ玉が小さいというか…それが夫の役割を果たすに相応しいかは、言わずもがなです。ですが、違うんです。あの日、貴方がヨウヘーを連れてきてくれたんです。貴方が私達を救ってくれたんです。それだけじゃありませんよ。貴方が居るから、私達は暮らしていける。貴方は立派に守っているのです。でも、全部背負い込もうとするのは貴方の悪い癖です。だから、役割なんてクソ食らえです。そんなの、ブラッド・ウルフと犬の混血の駄犬でも食わないです。だから…頼ってください。私達は夫婦なんですから、背負う荷物は一緒に背負う。」


クスクスと微笑むウリーヤ。


「ふふ。だから、私は貴方について行くのです。貴方をあの時みたいに守ります。この…」


ウリーヤが腰から短剣を抜いた。


少し長く幅が広い。


「この刃…ウリャーナとの約束ですから」


掲げられた短剣がダヴィの顔をシーンと刀光が優しく照らす。


「分かったよ。行こ。そして、帰ろう、ウリーヤ」


手を差し出したダヴィ。


「はい。行きましょう。そして帰りましょう」


二人は手を握り森を歩き出した。

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