表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/19

第十一話 短剣

 作業中、ウリャーナがやってきた。


「草刈り大変そうね。手伝うわ」


ウリャーナが短剣を抜くと、刀身がシーンと煌めき、刻字が露わとなった。


「ウリャーナ。ソレ、何って書いテあル?」


素朴な疑問だ。


装飾で刀身に彫刻を施された刀や剣は珍しくはない。


日本刀も茎に作者が銘を刻み込むことがあった。


その理論から、ウリャーナの刀身に彫りが施されていることが不思議で仕方がなかった。


「ホピス・ラー・ブレェーア・ウー・プルゥ・ベン・トォッ。最後に吸い出す血が私のであらんことをって書いてあるんんだ」


「ウリャーナの特別ナ短剣。最後ニ、ウリャーナが死んだラ破壊サレルのか」


くすっと笑い刀身を眺める小女。


「少し違うわ。これは私が受け継いだの。お母さんもそのお母さんからずっと。これはね、自決用の呪文よ」


背筋が凍った。


「この国では自決した者の使った物を使うことがタブーなの。特に女性の刃物は、自決に使われた後だと破壊されるわ。使用者と道具を結ぶ契約のおまじないね。だからこの子が吸う最後の血は、私が所有者であり続ける限り、私」


(この家の女性たちはちょっとたくましすぎないか。それがこの国の女性の特徴なのか、それとも彼女たちだけなのか…)


「スマナイ。イヤなコト、聞いタ」


ケロッとした様子で手をブンブンと振る彼女。


「いいよ。いいよ。気にしないで。代わりにさぁ、ヨウヘーの国のこと教えてよ。私、ヨウヘーのこと知りたいし」


「ソウか…何ガ知りたイ?」


「そうねぇ。ヨウヘーの国ってなんて名前なの?どんなところ?」


少し口をつぐんでしまう。日本を出て何年経つだろうか。


「ニホン。ニホンっテ言ウ。ドンナ所…よく覚えテナイ。オレ、国にずっと帰ってイナイ」


「そうなんだぁ…じゃぁ生まれ故郷とか忘れちゃったか」



故郷…


 そんなものあったかどうかすら覚えていない。


覚えているのは、正義感?だろうか。


すぐに突っ走ってしまうことくらい。


考える前に体が勝手に動いてしまい、結局トラブルに巻き込まれてばっかりだった。


よく喧嘩してたなぁ…


「オレよくケンカしてタ」


「悪童じゃん」


「悪イ思ってナイ。全部悪いヤツらとダ。お金奪おうトしてたヤツ、弱いモノイジメしてたヤツとか…」


「だから、ヨウヘーってあんなに強いんだぁ。それに銃士だもんね」


 …


「アト…ソウ。海が近かっタ。覚えてル」


「海!?良いなぁ。ねぇ、海ってどんなの。塩が採れるのは知ってるけど、あと魚」


「海。海ノ匂イする。ソレが風に乗ってフワッと。夏の季節は爽ヤカ。デモ、鉄スグ錆びル」


「ウリャーナ。おしゃべりするのは良いけど、仕事手伝うなら手を動かして頂戴。ヨウヘーは休んでていいわよ」


「あ~。ヨウヘーだけひいきしてずるい」



一方その頃…


 「ぐっ、くっそぉ。揺れるたびに軋みやがる…あいつら許さねぇ」


片手で手綱を握り、ぷらぷらの腕を垂らして走らせるダン。


ボーは不明瞭な音を唸りながら悪態をついている。


「舐められっぱなしじゃぁ気がすまねぇ、そうだよなぁ」


「ふひょはへはぁー(くそったれがぁー)」


「とにかく医者だ。医者のところ寄るぞ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ