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再会 その3

「ねぇ、ミッキー。バンドの話なんだけどさ」

 こう言った瞬間、彼女の顔はかなり曇った。そりゃそうだ。しかし、私は構わずにはなし続けた。

「もちろん、君が怖がっているのは知っている。でも、あのまま終わってもいいのかい?あんなの、バンドじゃないよ、イレギュラーだ。あれが毎回起こる訳じゃない。もう一度、あのアンサンブルを楽しまないか?」

 彼女の顔が曇ったままだった。

 「私だって、もういちどやりたいわ。でも、怖いの」

 彼女は自分がもたついたから喧嘩が起きた。そう思っている。私はそれを否定したかった。

「あの事だって、別に君が悪い訳じゃないさ。ただ俺たちが熱くなりすぎたんだ……」

「でも、私がもたついたから……」

「初めてのライブだろ?もたつくのは仕方ないさ」

「でも……」

 彼女はそういうと、とつぜん泣き始めた。私は取り乱してしまった。彼女が泣き出すことは想像できたが、嗚咽するとは思わなかった。

「まぁ、泣かないでよ……。でも。俺たちはやる気だ、ってことは伝えたい。今日は帰るよ」

「うん……ごめんね……」

 彼女は玄関まで見送ってくれたが、ずっと泣いていた。私はかなり心が痛んだ。

 家に帰ると、今後について悩んでいた。あんなにも泣いていた彼女をもう一度加入させる必要があるのか?トラウマになっている彼女を表舞台に連れ出すのは虐待じみた行動ではないのか?考えれば考えるほど、自分がどういった未来を思い描いているのかが分からなくなってきた。気がつけば、私はミッキーに電話をかけていた。無意識だった。

「やぁ、急にかけてごめん」

「いいのよ、どうしたの?」

「いや、今日のことなんだけどさ、もし君が無理だと言うなら、組まないさ。君の気持ちが一番だ」

「それって……もし私がやらないって言ったら、他の人にベースを弾いてもらうつもり?」

 私は黙ってしまった。確かにベース抜きでバンドはできない。しかし、彼女抜きで深夜営業もできない。

 バンドを取るか。

 足立ミキを取るか。

「別にいいわ。他の人を入れたらいいじゃない」

 彼女の声を聞いた瞬間、罪悪感に苛まれた。なぜ私はここまで彼女を悩ませなければならないのか。バンドという形式にこだわりすぎて、彼女の気持ちを蔑ろにしていたのではないか。

「まぁ、バンドをするなら、他の人を入れてもいいな。でも、『深夜営業』には、ミッキーが必要なんだ」

「……」

 彼女は黙ってしまった。空調のノイズだけが部屋に鳴り響く。

「……やっぱり考えさせて。今夜はもう寝るね。おやすみなさい」

 そう言って彼女は電話を切った。

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