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初リハーサル

「そういえば顧問、近日ライブがあると聞いたのですが」

 ケンちゃんが、顧問にライブについて聞いた。

「ん、そうだな……本来なら1年生は特に出していなかかったんだが、今年の一年生はみんな出来がいい。出てみるか?場所は近所のライブスタジオ『アルファベット・スタジオ』だ。今度連れて行ってやる」

 なんと、ライブスタジオで演奏することになった。学校外で演奏するのは少し緊張するが、その分誰かの目にも止まるかもしれないと思うととても楽しみになってきた。

「なぁ、アルファベット・スタジオに行ったことあるか?」

 クロがメンバーに聞くと、ケンちゃん以外は行った事がない様子だった。

「俺は行った事があるけど、あそこは割と人が入るよ。海外のパブみたいなもんで、酔っ払いも多いから気をつけた方がいい。……なんで高校生のライブ会場にあそこを使うのか分かんないけど」

 これは後日知ったが、スタジオの管理人が学生の応援に熱心らしく、うちの学校以外にも沢山貸し出しているらしい。そしてケンちゃんの時は一般のアーティストだったのでアルコールの提供があったが、高校生のライブの際は提供していないらしい。以前はしていたそうだが、しれっと高校生が飲酒する事件が発生(といっても警察や管理人にはバレず、同級生にバレたためコッソリ管理人に提供停止を促しただけだが)したため、提供しなくなったらしい。とにかく、管理人はとてもいい人らしいので、適度な緊張感を持ったまま本番までの日々を過ごすことができた。そして前日のリハーサルでは、初めて管理人に会った。

「君達かね、今日出るのは」

「そうです、よろしくお願いします!」

「元気がいいねぇ、おじさん嬉しいよ、、うん、、」

 何故か涙ぐんでいたが、とりあえずリハーサルが始まった。

 今まで何度も練習してきた曲だ。もちろん演奏ミスもしない。内臓が揺れ動くほどのドラムに、咽び泣くようなギターソロ。完璧だと思い、他のメンバーとアイコンタクトを取ると、彼らも自信に満ち溢れていた。ボーカルのシャウトは、もはや絶叫に近く、持ち時間の5分は一瞬にして過ぎ去った。これ以上ない出来だと思った。演奏が終わると、先程まで大きな音量で演奏していたからか、耳がジーンと痛くなる。しばらくの静寂を破ったのは、管理人の声だった。

「うん……とても素晴らしいよ、最高だ」

 こうして管理人からもお墨付きをもらい、少しモニタースピーカーの調節やアドバイスをもらった後、リハーサルは終了した。本番までまだ時間があったため、顧問に連れられながら管理人の元へ挨拶をしに行った。

「今日はありがとうございます。本番もよろしくお願いします」

「おお、お疲れさん。しかし君達の熱気はすごいね。大したもんだよ」

 管理人はお酒を呑んでいるのか、顔が赤くなっている。

「君達は高校生か。ならば酒は飲めないな。ハハハ」

 かなり上機嫌である。顧問は管理人に

「しかし、あまり生徒の前でお酒を呑むというのは感心しませんな。この前にも、呑みながらライブをして、学生に迷惑をかけたそうじゃないですか」

「なぁに、迷惑だと?わざわざ御大が教示してくれた、そう考えられんのかね…」

 そして長い説法が始まったが、私たちは彼が何を言っているのか理解ができなかった。私たちには、老人が自分自身を理解してもらえなくて嘆いているようにしか聞こえなかったが、年が上だから理解してもらえるという前提で話していることに、とても腹が立った。酒の影響でこうも駄目になるとは、失望した。こうはなるもんか。そう心に決めた。

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