バンド結成 その2
ベースとボーカルを探す際に、どこか爽やかな人間が欲しいとなった際に、クロが「女の子を入れよう!」と言ったので、色んな子に声をかけたが、3人とも顔がパッとせず、また音楽の嗜好も流行りの音楽よりもインディーズやR&Bなので興味を持たれなかった。そんな中、まだバンドを決めかねている2人の女の子がいた。
1人は足立ミキ。ミッキーと呼ばれている。大きな目にくっきり二重。ショートカットに今にも折れそうな腕。ベースを担当したいらしい。私は小さな手にベースが弾けるのか不安だったが、とにかく意欲的であったこと、そして見た目が良かったのも功を奏して加入決定になった。
もう1人は飯田ユメ。彼女はあだ名を付けられるのに慣れていないため、飯田と呼ぶことにした。彼女も大きな目にくっきり二重。ショートカットに今にも折れそうな腕。足立との違いは彼女に比べて髪が黒い。ただそれだけである。彼女はボーカル担当であった。声も綺麗だし、我が強そうではあったがむしろカリスマ性があると思えば可愛いものだ。とケンちゃんが言ったのでこちらも加入決定。
こうして5人揃った。キーボードはいずれ入れるとしよう。そしてバンド結成の日、とあるスタジオでバンド名を決める会議を行った。まず飯田が
「アタシ、可愛い名前がいい」
というと、ミッキーも
「そーよね、やっぱり女の子だもん」
他の野郎どもには目もくれないのか。とは思ったが、ここは大人しく従おう。
「可愛くてもいいんだけどさ、何か候補あるの?」
ケンちゃんが明るく聴いた途端に女性陣は黙ってしまった。
「おいおい、何の案もなく可愛い名前だとか言わないでくれよ。俺たち男だぞ?『プリプリプリンズです!』とか言いたくねーぞ?」
私は思わずこう口走ってしまった。間違いだった。
「何よ、マサなんて何も思いついてないじゃない」
「そーよ、口だけなんて言わないでよ」
「いや、まぁ、悪い案だとは思ってない、、、」
「ふーん?ならなんでそんな突っぱねるのよ」
「そんなに突っぱねるくらいなら、なんか出しなよ」
「ほんと、口だけっていっちばんタチ悪い!」
一気に2人から捲し立てられてなんだか自分がとても小さく感じた。クロが、
「まぁまぁ、でも意見がないのはまずいな。ここは男性代表として、『キャットファイト』ってのはどうだ?猫の可愛い感じと、ファイトする、戦う、みたいな、勇敢さがあるだろ?」
と、意見を出してくれた。その他にも色んな人が意見を出してくれた。青二才、ハイハイハイ、グレートラビット……私が出した『リトルビーンズ』は却下されてしまった。まぁいい。
「あんまりバンド名を集めても仕方ない、ひとつしか付けれないんだから」
ケンちゃんがまとめにかかった時、私はふと思いついた。
「……深夜営業」
「ん、どうしたマサ」
「……深夜営業、『深夜営業』だよ、みんな!」
「それがどうしたよ」
「バンド名だよ!」
「んー、どういう意味だ?」
「夜通し演奏する、ずっと聴いていたい!これでどう?」
「んー、もう時間も遅いしな、それにしよう」
かくして、『深夜営業』というバンド名に決まった。円滑に決まったのか、適当に決まったのか、私はあまり理解してないが、取り敢えず第一関門はクリアというところか。
「じゃあ、明日から練習しよう!」
「いや、いいんだけどさ、何の曲をやるの?」
……まだ決めていないことがたくさんあった。そしてここからとても忙しくなった。とりあえず結成の話はこれくらいにして、次の回で説明するとしよう。