本の町 2
結愛も楽しみにしてくれていたようで「気になってる新刊があるから買おうかな」とか、「古本っていいよね。安くてたくさん買えるから嬉しい」と揚々としていた。
地下鉄を降りると、私はまず結愛を古本のワゴンが歩道に並んでいる交差点に連れて行った。道程を覚えているか不安で「方向音痴だから、帰れるように道覚えておいて」といったら結愛は「私誰よりも方向音痴だから無理だよ」と返され思わず笑った。
「まぁ、スマホがあるから、最悪大丈夫でしょ」
「そうだね。これからどこ行くの?」
「まずは、交差点にあった大きな本屋に連れていきたいんだけど、そこに洋書もおいてあって、新宿の洋書屋ほどではなかったけど、結構品数あったんだよね」
「いいよ。行こ、行こ」
神保町を気に入ってくれたのか、普段あまり感情の起伏を表さない結愛も今日はよく笑う。
本屋に着くと店の入り口には小さな雑貨の置かれたコーナーがあって、そこで思わず私が足を止めた。
「え、どうしよう。結愛! 見てこれ!」
雑貨コーナーに何気なく飾られていたトートバックの柄を良く見れば、それは文豪の文庫本の表紙が印刷されたものだった。
「え! すごくいいね。欲しい」
「だよね。私買おうかな、どうしよう」
そこには人間失格や銀河鉄道の夜、坊ちゃんなどのタイトルが印刷されていた。私はそれぞれ手に取って、眺めながら真剣に買おうか悩む。
「あ、見てみて、人間失格あるよ」
「やっぱり、それは王道だよね」
「私これ買お」
そういって結愛はそのトートバックをフックから外す。
本屋の中を一通り回った後、結愛は一冊の本とトートバックを購入した。私は文庫本を一冊購入した。それは結愛が私の小説を読んでくれた時に、文体が似てると言っていた本だった。
トートバックのデザインは確かに素敵だったけれど、それを活用する場面が思いつかなかったので今回は買うのをやめた。
本を購入し終わった後は、購入した本をカフェで一緒に読もうということで目星をつけていたブックカフェに向かった。
神保町のカフェと検索するとどのウェブサイトにもこのブックカフェが掲載されている。
建物は青灰色に塗られガラス張りの壁はショーウィンドウとしての役割を担っている。ガラス越しに木製の棚があり、本や雑誌が陳列されていた。そのうちの一冊を見て結愛がスマホを取り出す。
本好きの間で、読みたい本を見つけた時、とっさに忘れないよう表紙だけ撮影するのは意外とあることではないだろうか?
「なに見つけたの?」
「見てこの雑誌」
そこには「反出生主義を考える」と書かれた雑誌が置かれていた。




