死んでしまった…
私は安藤夕。高校2年生。花の女子高生だ。それなりに友達もいて、それなりに勉強できて、幸せな毎日を送っているはずだ。
多分…
私には家族がいない。いたけれど唯一の家族だった母は私をおいて男と蒸発してしまった。人によってはむし
ろそのほうが良かったと感じる人もいるだろうが、私は寂しさが勝った。
「おはよう!」
「莉彩!おはよう〜」
登校中、駅のホームで友達の莉彩に会った。
「あれ〜?今日も眠そうですな〜?」
莉彩は私の隈が残った顔を覗きながら言った。
「仕方ないでしょ!『俺が最強だった異世界のバトロワ』の最新刊、昨日発売されたばっかだもん。深夜まで
一気読みしちゃうよね!!」
私はちょっとオタクだ。本気でアニメを見たりすることこそ無いものの、ライトノベルにはかなり興味があ
り、特に『俺が最強だった異世界のバトロワ』、通称『サイバト』は人気のライトノベルで、私の一番好きな本だ。
「好きだね〜、そんなに面白いの?」
「めちゃくちゃ良いよ!最新刊の展開とか泣いちゃったもん!莉彩も読んでみて!」
「近い、近い、近い」
たしなめるように私を落ち着かせる莉彩。確かにちょっと近すぎたかも。
「そもそも私は二次元に興味ない!最近は絢斗様が最高にかっこいいの!このダンスとか…」
そう言いながらダンスを軽く踊りだす莉彩。
トラックがこちらに突っ込んでいることに気づかず…
「莉彩!!!危ない!!!」
私は危険を顧みずにトラックが目の前に来た莉彩の前に立ち、両手を広げた。
そして視界が暗転した。