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事故物件

作者: 雉白書屋

 ねっとりと、ナメクジが体を這うような視線。

 今夜もだ。どこに隠れても駄目。なぜか見つかる。

 逃れようとしても無駄。あの男からは……。


 ああ、見ている……あの男がじっと……こっち見ている……。



 事故物件。内見時、まるで毛虫かナメクジを見たように大家は顔を歪め、そう言った。

 安いし構いやしない。そう返し、笑った。霊なんていない。そう思うのは普通の事だろう。

 でも実際にはいる。この世に……この部屋に……。


 家鳴り。僅かに物が動く。爪で床を引っ掻く音。悲鳴。

 この部屋で起こる超常現象の数々。紛れもなく、この部屋に縛られた霊の仕業。


「おっほ! いいねいいねっ」


 

 ……でも、怯えはしない。どれもこれも、あいつを喜ばせるだけ。


「ああ、いい……」


 視線。目と目が合う。あの目。まん丸に見開かれた目。無精ひげ。丸みのある短髪。やや唇を尖らせたその顔は不快感そのもの。込み上げる吐き気は血の味。


 そして……男はニヤつきながら自分のアレを弄り出す。

 恍惚な表情。

 ああ、見るな……見るな見るな。私を見るな……。

 この男は私を恐れない。決して。むしろ喜んでいる。よく思い出せるからだろうか。あの瞬間を。握り締めたアレを。


 帰宅した私の背後から包丁を押し付け中に入り、抵抗する私を刺したあの時の感触を。


 私はあの夜、この男に殺され、そして今もなお心を犯され続けている……。

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