2 最初の出会い
目を開けると、謎の空間が広がっていた。そこには八つの道が繋がっていて、中央には誰かが座っていた。しかし、透明な壁のようなもので遮られていて、入ることは出来なくなっていた。
ここはまさか、死後の世界と言うものなのだろうか。けど、神様どころか誰もいない。なんというか、僕の精神の中のような感じがする。もしかしたら、僕はまだ生きているのかもしれない。けど、ここは一体……。
ぐっ!? 急に眩しくっー
「い……ぉい……おい!!」
「っは!」
視界がぼやける。ここは……一体どこだ?
「君、大丈夫かい?」
「あっはい。あのぉ、ここはニヴンヘイムですか?」
「いや、ここはアールヴへイムだ。あのとき、飛行機がジャックされたから、ニヴンヘイムまで行かず、二国離れたアールヴヘイムで停まったんだ」
はぁ、旅が始まって早々、人生に一度あるかどうかの不運を体験してしまった。でも、何で僕は生きているんだ?
そう考えていると、遠くから男の声が聞こえてきた。
「あっあの子だ。あの子が急に、テントウムシの持っていた銃を奪って、テントウムシを殺したんだ!」
??? えっ、そんな、訳……。
「ちょっと通してください。私、警察官カマキリのマキリという者です。君がハイジャック犯を殺したカタツムリの子であっているよね?」
「いや、えっと、僕は何も……」
「でも、証拠がたくさん挙がっているんだ。話は署で聞くよ」
刑事ドラマなら、もうこのセリフを言われた人物は確定で逮捕されるだろうが、僕はそうはならず、正当防衛の扱いとなった。なぜなら、僕は相手に銃で殺されていたからだ。
正確に言うと、普通ならば死んでいた。警察の人に聞くと、あのとき僕は脳を撃ち抜かれたが、謎の紫色の光に包まれ、その部分が再生したらしい。
何を言っているのか分からなかったが、警察の人もよく分かっていないみたいだった。それからしばらくして、僕には無罪判決が下された。記憶も何も残っていないけれど、人を殺してしまったということに、僕は重い罪悪感を抱いていた。
「記憶にありませんじゃ、理由にならないだろ……」
遺族の下へ行こうかと考えたが、ハイジャック犯の情報は警察も何も得られていない様子であった為、泣く泣く諦めた。
また、病院にも行ったが、特に異常は見られなかった。
しばらくは安いホテルに泊まっていたが、もう三泊もするので、何処か安く泊まれるところを探さなければならなくなった。
もう、家に帰ろうかな。
ホテルのベッドに横たわりながらそう思った瞬間、母さんの言っていた言葉を思い出した。
『あんたには役割があるんだ。その役割を果たすまでは、絶対に帰ってきちゃいけないよ』
母さん……。僕の役割って、一体何なんだよ。
次の日の朝、僕は泊まっていたホテルを離れ、ただひたすらに歩いていた。僕はきっと、その足が使えなくなるまで歩いていただろう。しかし、僕の足は使えるままとなった。足を止めるような事態が起こったからだ。
「カタ……!?」
「えっと……どちら様ですか?」
「あそっか、そりゃ僕のこと覚えてないよね」
「あ……もしかして昔遊んだダンちゃん!?」
「そう! 覚えていてくれたんだ〜。嬉しいなぁ」
ダンちゃんは、僕が四歳のときから一緒に遊んだダンゴムシの友達だ。それから一年程遊んだが、ある冬の日から、ダンちゃんは遊びに来なくなった。
「僕も嬉しいよ! けど、何で急に来なくなったの?」
「あぁ、引っ越したんだよ。父親が単身赴任でさ」
「そうだったんだ……。っ実は、僕の父さんも単身赴任で、これから父さんのところに行かなくちゃ行けないんだよね」
「……」
「どうしたの?」
「カタごめん、死んでくれ」
「え?」
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