1 起点
僕は今旅に出ている。なぜなら、母さんからずっと「あんたは十三歳になったら、父さんのところまで旅に出なくちゃいかんよ」と言われてきたからだ。父さんがいるのは、ここから三国離れた「ニヴルヘイム」という場所だ。
なぜ母さんはそんなことをさせたがるのだろうか。父さんは単身赴任で、母さんがずっと育ててくれたんだよな。もしかしたら、僕を厄介払いしたかったのかも……。いや、そんな筈はない。
もしそうだとしたら、なんで今更そんなことをする必要があるんだ。それに、母さんがそんなことをするとは思えない。じゃあ、なんで旅なんかさせているんだろう。まぁ、細かいことは気にしない方がいいよね。
ということで、ヒッチハイクをしている。何せお金もろくに持っていないから、こうするしか方法がなんだよな。なんて考えていると、止まってくれる車が現れた。こんな時代でも優しい人はいるんだなぁなんて考えながら、僕は車に乗った。車内は冷房が効いていて、涼しかった。少し無言の時間が続き、気まずくなったので、僕から喋りかけた。
「あのぉ、乗せて頂いてありがとうございます。実は僕、父のいるニヴンへイムまで行かなくてはならなくて」
「あぁ、知ってる」
どうしよう、頭のおかしい人に着いて来てしまった。なんだよ「知ってる」って。ストーカーかよ。
「あっ、そうなんですね。あはは」
「やっぱり変わらないな、君は」
もしかして知り合いか? それか母さんが僕の為に頼んでおいたか。いや、それなら先に何かしらの説明があるはずだ。やっぱり、おかしい人なのかも……。そして僕は、あまり会話をせず、持ってきていた本を読んだ。すると、手のひらサイズの紙が入っていた。母さんからの手紙かもと思ったが、それはバツ印の入った地図だった。いつ入っていたのか、誰が入れたのかと疑問に思うことは沢山あったが、深くは考えず、元あったページに挟んだ。
数時間が経ち、空港が近くなったので、もう大丈夫ということを伝えると、相手は不敵な笑みを浮かべ、車から下ろしてくれた。
「ここまで乗せてくださって、本当にありがとうございました」
「いや、こちらこそありがとう。君はまだ若いから、これから頑張ってね」
そんな会話を交わし、僕はそこから去った。
空港内で時間を潰していると、あっという間に飛行機に乗る時間が来た。
さぁ、これからどんな旅が待っているのだろうか。僕は期待を胸に秘め、飛行機は飛び立った。
車の中では緊張してしまったから、やっとゆっくりできるなぁ。ふーう、疲れっt―
パンッッ。
機内に響いたのは、銃声だった。皆悲鳴や叫び声をあげていて、その声には恐怖や不安が表れていた。銃を撃ったのは誰だ? 気づかれないように、ゆっくりと椅子の横から顔を出した。
そこには、銃を持ったテントウムシがいた。子供の僕じゃどうすることも出来ない。此処はおとなしく、警察が来るのを待つしかない。
「お前ら、妙な真似すんじゃねぇぞ。そんなことしたら、そいつの頭は吹っ飛ぶだろうな。俺は今探している奴がいる。そいつはカタツムリの子供だ。そいつを差し出せば、他全員の命は助けてやる」
??? これは非常にまずいのでは? 全身から汗がとてつもなく出ている。これ絶対僕のこと言ってるなぁ。だってこの中でカタツムリなの僕しかいないもん。でっでも、誰か助けてくれるかもしれn
「そこの君、私たちも死にたくないんだ。悪く思わないでくれ」
あっ、これ終わったやつだ。どうせ死ぬんなら、来世は超能力持った、世界を救うヒーローにでもなりたいなぁ。でもなんで僕だったんだろう。死ぬ前に知りたかったな。
「お前を殺せって命令なんだ。まぁ、せめてもの慈悲で、一瞬で終わらせるよ」
パンッッ。
――ニヴルへイム行きの飛行機内で、死者一名。
この作品は、私の初の作品です。至らない点もあると思いますが、ぜひ面白いと思ってくださったら、下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から評価お願いします。また、ブックマークもしていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。