第8話〜真夜中、山に突入する〜
どうも、VOSEです。
ようやく書き終えたので出させてもらいます。
では、本編どうぞ!
…夜更かしした分を補うように寝た俺は、夕暮れごろに目を覚ました。
「…ぐあぁ…よく寝た…もう空赤いな…」
俺はそう言ってベッドから起き上がると、横でミミが寝ていた。
そして、部屋のテーブルには2人分のご飯が置いてあった。
「…すまんな、ミミ」
俺は申し訳ない気持ちになり、ミミの頭を優しく撫でた。
ミミはそれに反応してか、目を覚ました。
「…う、う〜ん…あ、大輔、起きたにゃ?」
「あぁ…やっぱオールはしちゃいかんな…」
俺は目を逸らしながらベッドから起き上がった。
何で目を逸らしたのかって?その理由はもちろん、ミミの今の格好である。
ミミはよく日向ぼっことかしていると体をゴロンゴロンと動かす癖がある。
これは前の世界でもよくある光景で、いつも寝ていると体を動かして気持ち良い体勢を探すのだ。
その癖がここでも発揮されるらしく、前々から体を動かして服が脱げていることをマリアからも聞かされていたからだ。
今回ももちろんながら…ミミの服は腹まで下がっていた。
「…大輔…どうして目をそらすのにゃ?」
「…その服どうにかしろ…直視出来ねぇだろ…」
「えぇ…大輔とずっといたのに、しかも裸だったし…」
「それとこれとは全く違うだろ!?もうちょっと考えてくれないかな…」
「…まぁ、大輔はずっと家に女の子いなかったもんにゃね〜」
「ミミ、それ以上言ったら尻尾掴むぞ」
「ダメにゃ!尻尾は猫にとって大切な体の一部だにゃ!掴んだらどうなるか大輔わかってるにゃ!?」
「ならそれ以上は言うな…いいな?」
「むぅ…大輔だったら許してくれると思ったにゃのにぃ…」
ミミは観念して服を整えた。
それと同時に、ドアにノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
俺が言って中に入ってきたのは、マカノンだ。
もちろん、鎧を着ており、紙を手に持っていた。
「失礼する。よく眠れたか?」
「あぁ、気持ちよく寝させてもらったよ」
「それは良かった。さてと…早々起きてもらって申し訳ないのだが、少し手伝ってほしいことがある」
マカノンはそう言うと、持っていた紙を広げた。
その紙は地図で、ちょうど俺らが調べていた廃坑のある山近辺の地図であった。
俺は地図を見るためにマカノンの横についた。
マカノンはこの行動に思わず顔を赤らめたが、俺は気づかなかった。
「それで…手伝ってほしいというのは?」
「…あ、あぁ…ダイスに調べてほしいのは、この山にいる山賊の数と、アジトを炙り出すことをして欲しい」
「アジトの炙り出しならわかりますが…山賊の数というのは…」
「んまぁ、実際のところ、私たちだけでも調べようとしているのだが、見つかれば交戦だし、色んな街で人員を増やしているようだからな…把握しきれてないことが多いんだ。リスクが高いことは承知している。お願いできるか?」
マカノンはそう言うと、俺からスッと離れて、深々とお辞儀した。
俺はそれを見て、ふぅと1つ息を吐いた。
「…大丈夫ですよ。元々俺は山を調べていたし、マカノンから山賊退治のお願いも聞いていたんですから。退治するにはまずは敵を知ることからじゃないと思いますし」
「ありがとう。よろしく頼む」
マカノンはそう言うと、踵を返して部屋を出た。
「…むぅ…ダイスは鈍感だにゃぁ…」
ふと、ミミがボソリと言ったのを聞いた俺は、その声で我に帰った。
「ん?どうした?ミミ」
「別にいいもーん。ほら、とりあえずご飯食べなきゃ」
ミミはそう言うと、用意したご飯を食べ始めた。
「全く…教えてくれたっていいだろ?」
俺はすぐに椅子に座り、ミミと同じようにご飯を食べ始めた。
「別に言わなくてもいいからね〜だ!」
ミミはプクーと頬を膨らまして、そっぽを向きながらご飯を食べ進めていった。
「全くなんなんだ…とりあえず、ミミ」
俺はそんな様子に気にも留めず、ミミに話しかけた。
「なーに?」
「この後の話なんだが…とりあえず、夜に山に登ろうと思う」
「んにゃ?本気で言ってるのにゃ?」
俺の言葉に、ミミは思わず目を丸くした。
「本気だ。おそらく夜は山賊達が活発に動くだろうから、そのタイミングの方が数を数えやすいし、戻るタイミングでそいつらを追ったらアジトの場所もわかるだろうしな」
「うーん…でも、怖くないかにゃ?」
「怖いけど、やらなきゃダメだと思う。だからこの後行こうと思ってるさ」
「…わかったにゃ。ミミはどうすればいい?」
「もしもの時の交戦の時に共に戦ってくれればいい。俺1人だとなかなかキツいと思うからね」
「OKだにゃ!」
こうして、夜に山賊調査をすることを決めた俺とミミは、出発までまた寝ることに決めたのだった…
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…その日の夜、俺とミミはマリアに事情を言って教会の外へ出た。
辺りは真っ暗だが、この日は満月だったので、月明かりで山の中に入れた。
俺とミミはひっそりと歩きながら、月明かりで地図を見て山を歩いた。
もちろん、山賊にはバレないように抜き足差し足でゆっくりと歩いていった。
「…ミミ、コンパスはどの方向指している?」
「今、北北東へ進んでいるにゃ。もうすぐで閉山した坑道の入り口に着くにゃ」
「わかった…」
と一言呟いたその時、俺は気配を察して足を止めた。
「…大輔?」
「…静かに…誰かが俺らのところに来てる…」
「どうするにゃ?」
「…ミミはあそこの木に移動しよう。俺はあっちの木だ。いいな、静かにな?それで、俺が鏡の反射を使って合図出したら応戦の合図だと思って飛び出してくれ。それまでは息を殺すように」
俺はミミにそう言うと、ミミは大きくうなづいた。
そして、俺とミミで二手に分かれて敵が来るのを待った。
そこへ現れたのは…
「…あれ?おっかしぃなぁ…」
俺が最初にこの世界に飛ばされた時、ミミを襲っていた山賊だった。
緑色の体に少々お腹が出た体躯…おそらくゴブリンだろう。
俺はそのゴブリンの姿を見て、銃の準備をした。
そして、そのゴブリンが俺の近くに来た時…
「…動くな」
準備した銃をゴブリンに向けた。
「ひいっ!て、てめぇは!」
「静かにしろ。こいつはお前を殺すことができるものだ。いいな?静かにしろよ」
俺はすぐにミミに合図を出して物陰から出させた。
「な、あの時の!」
「あの時はお世話になったわね」
「てめぇら…何が目的だ」
「色々と聞きたいことがある。まず、お前が今所属しているのは『アトラス解放軍』か?」
「それがなんだ…」
「答えろ」
俺は首に照準を当てた銃をさらに押しつけた。
「…あぁ…俺は『アトラス解放軍』にいる」
「んじゃ、ここら一帯のアジトはどこにある」
「んなもん、教えるわけ…」
「それじゃ、殺す方法増やそうかしら」
ミミはそう言うと魔法具で『巨大爪』を顕現させてゴブリンの首に押し当てた。
「わかったわかったから!…あの廃坑の入り口にある小屋が俺らのアジトだ」
「それじゃ、そこへ案内してくれ」
「くっ…」
ゴブリンはばつが悪そうな顔をしてトボトボと歩いていった。
「…行こ、大輔」
「あぁ…そういや」
俺はミミと一緒にゴブリンの後を追いながら、ミミにちょっとした質問をした。
「ミミって、最初会ったとき、なんでその魔法具使わなかったんだ?」
「え、ええっとね…実はというと、あのとき何故か魔法具が展開されなくて…大輔と会った後にようやく魔法具が使えるようになったの」
「それで襲われてたってことか…でも、魔法具に認められた時は動いてただろ?」
「あれはマリアの力でなんとか顕現させたみたい…」
「そう…なのか…」
この世界の事についてまだまだ疑問が残るばかりではあるが、これから学んでいけばいいと、俺は強く思ったのだった…
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…しばらく歩き終えると、廃坑道の入り口に着いた。
しかし…
「あれ!?小屋なんてないじゃん!」
ミミは入り口付近に小屋がない事に驚いた。
「ククク…かかったな!」
ゴブリンはそう言うと、剣を取り出した。
「んな!?騙したの!?」
「んなもん、最初から教えるわけねぇだろ!ケケケ!」
ミミは驚きを隠せなかったが、俺は至って冷静だった。
「…おい!お前なんで平気でいられる!」
「そりゃだって…わかりきってたもん」
「んな!?」
平然と話す俺の言葉に、今度はゴブリンが驚きを隠せなかった。
「んまぁ、おそらくこの坑道の奥に本部があると仮定して…そうすると、今俺らがいる場所の周りをぐるっと囲むように人の気配がするし、その気配ってのが殺気に似たものだし…おそらく、お前はとりあえず案内はさせるつもりで、その坑道の中までは入らせないっていう算段だろ?」
「う、ウソだろ…読んでたのか…?」
俺の理路整然とした口調に、ゴブリンはしきりに驚きっぱなしだった。
「…んまぁ、はなから捕虜というか、見られてるわけだし、そのまま連れていかれるだろうから付いてきたってだけなんだけどな」
「つ、連れていかれる?何を言って…」
と、ゴブリンが叫ぼうとしたその時だ。
「…ダーヌ、何している」
ゴブリンの後ろから、エメラルド色の髪の毛をした女の子が現れた。
俺より少し背の低い女の子の服は、ゴブリンや女の子の周りにいる人達が着ている白に近いベージュのベストとは違って、地面スレスレまでの裾のローブを着ていた。
「ら、ラメル様…」
「ダーヌは少し下がってて」
「は、はい…」
ダーヌと呼ばれたゴブリンは、ラメルという女の子に言われて少しだけ後ろに下がった。
「…あなたね。前にダーヌ達を蹴散らしたの」
「あぁ。それが何か?」
「いえ、あの時は少々やりすぎたと思ってるわ。その時の被害者もいるようだし…ごめんなさい」
ラメルはそう言って頭を深々と下げると、後ろにいた男達も深く頭を下げた。
「…意外と素直だな。なんの吹き回しだ?」
「下心はないわ。本来なら薄汚い商人達を襲いたかったけれど、ここ最近来ないから…」
「そりゃ、お前らが襲ってるからに決まってんじゃ…」
「えぇ、そうよ。でも、あそこの道は国王直属軍が通るのに必要不可欠な場所なの。だから、私たちはこの山を占拠したの」
「やけに口が軽いな」
「それが知りたかった事じゃないのかしら、赤間大輔くん?」
「っ!?」
俺はラメルの言葉に、思わず身構えた。
「やめてくれないかしら。無駄な争いは嫌なの」
「…なら、なんで俺の名前を…」
「私の魔法よ。私の魔法は『全透視』。あなたの事はお見通しよ。もちろん、そこにいる彼女もね」
ラメルがそう言ってミミを見ると、ミミはビクッと体を震わせた。
「しかし、目を閉じた状態でよく俺のこと見れるな」
俺がそう言ったのは、ラメルはずっと目を閉じていたからだ。それなのにお見通しはどういうことなのか気になったのだ。
「そうね…あなたは魔法を使うのに代償を払うって話、知っているかしら?」
「前にこの世界の知り合いに聞いたが…」
「私の場合、生まれてすぐに『全透視』が発動されて、それと同時に視力を失ったの。今そこにいるのはあなたの影と、あなたの今の状態や思考を読んでいるといったところかしら」
「なるほど…魔法の代償か…」
「えぇ…さて、そろそろ本題に入りたいのでは?」
ラメルはそう言って、俺に話を持ちかけた。
「んじゃ、遠慮なく…今回ここに来たのは、お前ら『アトラス解放軍』のアジト探し、んで、もう一つは個人的な要望なんだが、この山にある、元ジリッカ軍が使っていたログハウスに住まわせて欲しいということをお願いしに来た」
俺の言葉に、ラメルは表情を一つも変えず、淡々と話した。
「前者の話については、残念だけれどここではないわ。あくまでここはアジトへ繋がる道の一つに過ぎないし、どの道がアジトへ繋がるか分からないようになっているの。おそらくジリッカのアトラス連合国軍のマカノンからの指令だろうけど…」
「やっぱな…」
「それで後者についてなんだけど…それに関しては認めるわ。それに、あの山の道を含む一部の土地はジリッカに返還するわ」
「意外と素直だな…そういうとこに関しては」
「これ以上、国王直属軍が来ることがないと踏んでいるし、来たところで軍の10分の1程度しかない戦力しか削れないもの。それなら返してもいいと思っていたし、丁度いいタイミングだったからね」
ラメルはここでようやく笑顔をチラリと見せた。
「…とりあえず、今日はこのくらいね。それじゃ、失礼するわ」
「待て、山の返還の連絡はどうするんだ」
「私の特使を送るわ。でも、あなたから一応言って」
「わかった」
「あと、ダーヌ」
ラメルはダーヌの方を見た。
ダーヌは再び背中を真っ直ぐにした。
「…あなたはこの赤間大輔についていきなさい」
「はい!…へ?」
「彼は面白い人間よ。おそらく…それに、あなたはここにいるべきじゃない」
「そんな…クビってことですか!?あなたや、アトラス解放軍に尽くしてきたのに!」
「だからこそよ。きっと、彼と一緒にいれば、道は広がるから」
ラメルは踵を返して、廃坑の中へと入っていった。
ようやく周囲の殺気も消えた頃には、俺とミミ、そして、ゴブリンのダーヌがポツンとそこに立ち尽くしていたのだった…
いかがでしたでしょうか?
感想・評価等お待ちしております。
では次回、お会いしましょう。