第5話~最初の仕事~
どうも、VOSEです。
ようやく書き終えたので、放出します。
では、ご覧ください。
…次の日、俺とミミは待ち合わせの、アルフの商店の前に来た。
昨日の話をミミに伝えたところ…
「大輔だけ行かせたくない!私も行く!」
と言ってきたので、一緒に連れていくことにした。
正直、ミミもついてきてくれることになると、心が落ち着くところがあるから、結果オーライというわけだが…
「…それにしても、かなりの兵隊の数だな…」
俺がアルフの商店の前の光景に驚きを隠せなかった。
やはり、700グラムのダイヤモンドだから、警備も厳重というところだろう。
「予想はしていたけど…やっぱりすごいにゃ…」
ミミも目を丸くしてせわしく動く兵隊の様子を見ていた。
と、そこへ…
「ちょっとそこの君!」
他の兵隊とは違う装いの、少し豪華な甲冑を着た女の人が声を荒げてやってきた。
銀髪のロングヘアで、俺とほぼ同じくらいの身長の人だ。
「ん?俺か?」
「当たり前でしょ!全く…一般人は今ここに入ってはいけないの!」
女の人は俺に鋭く怒ったが、俺は少しため息を吐いた後、とある紙を出した。
アルフが護衛を任せてくれるという委任状だ。
そこには今回の件で支払われる給料も書いており、アルフのサインも書いてある。
「んな!?」
その紙を見た女性は、かなり驚いた表情を見せた。
そこへ…
「ダイス!ミミちゃん!来てくれてありがとう!」
いつもよりきっちりとした装いのアルフが走ってきた。
そんなアルフに、銀髪の女性はすかさず声を荒げた。
「アルフ殿!説明してもらえませんか!?」
「え?何を?」
「とぼけないでください!なんなんですか!?この人達は!」
「あぁ。彼らはついこの間出会ってね…武器の腕が立つから、今回護衛に付き合ってもらったんだ」
「なんでですか!わざわざ国軍小隊の1つを動員しておきながら、さらに見ず知らずのこの者を護衛に任せるなんて!」
「まぁまぁ。マカノン隊長の腕を過小評価してるわけではありません。ただ、今回の取引では、私達の従業員を連れて行って万が一の場合が起きた場合、従業員の命を失いたくないので…彼なら、このダイヤモンドの近くにいてもらえますし、腕はこの目で見ましたから」
アルフは銀髪の女性に力強く説得してくれた。
「…まぁ、いいでしょう。言いたい事はたくさんありますが、今回はあくまで取引のための護衛。しかも契約は個人主だ。何かあった場合は対応しかねます。その点はよろしくお願いします」
「わかりました」
銀髪の女性はそう言うと、踵を返して馬車の方へ向かった。
「…アルフ、彼女は一体?」
「彼女はこのジリッカに駐在する『アトラス連合国軍』の軍隊長のマカノンだ。普段は温厚な性格なんだが、仕事には人一倍厳しく、一般の人に危害を加えたくない、正義感の強い人なんだ」
「だからあんなに怒ってたってことか…」
俺は顎を少し上下に動かしながらマカノンさんの後を目で追った。なんか、姿がアルフに似ているなと思ったのは気のせいだろうか…
しばらくして出発の準備になった。
俺とミミはダイスの馬車の荷台に乗った。
周りに軍の馬車、中央にアルフ達商店の馬車という隊列で、ジリッカから南5キロにある館まで行く。
「着くまで時間かかるから、ゆっくりしててくれ。有事の時は頼んだよ」
「わかった」
というわけで、俺らはのんびりと馬車に揺られながら南の館へと向かったのだった…
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…ジリッカの南は森が生い茂っており、そこから覗く木漏れ日は気持ちが良かった。
「ふにゃぁ…眠たくなってきたにゃ…」
「風も気持ちいいしな…いかんな。これだと寝てしまう…」
俺はなんとか眠気を圧しつつ起きていたが、ミミはすぐに眠りについてしまった。まぁ、猫の本性というものだろう…
俺の太ももで気持ちよさそうにしているミミをよそに、俺は軍の馬車の方を見た。
ここまで2キロ進んだはずなのに、隊列がほぼ崩れておらず、たまに馬車の位置を変えることがあったが、それでもほぼ完璧なポジションで守っていた。
これだけ見ると、すごく訓練しているように思える。
「どうだ?この国の軍隊は」
アルフがおもむろに声をかけた。
「確かにきっちりしてるし、ここまで隊列崩れないのは流石ってとこだな」
「ダイスのいた世界はどうだったんだ?」
「んまぁ、軍隊みたいなのはいたよ。ただ、ちょっとグレーゾーンというかなんというか…」
「なんだか曖昧だな…」
「そう答えざるを得ないんだよ。国の事情が事情でさ」
と、アルフと喋りながら移動していると、カサッという音が遠くで聞こえた。
「…アルフ…なんか聞こえなかったか?」
「いや、特に…」
「…そうか…」
俺はハンドガンのトリガーガードに指を入れた。
そして、ミミの耳をちょんと突いた。
昔からミミが寝てるのを起こす時は、怪我をしていない方の耳をちょんと突くと起きるからだ。
「…大輔?」
「…ミミ…魔法具出せるように準備しろ…なんか嫌な予感がする」
俺が静かにそう言ったのを感じたミミは、いつものように起きながら、手にはペンダントを持っていた。
すると…
「アルフ殿!上方に敵発見!」
後ろで見張っていたマカノン隊長が大声を張り上げた。
それと同時に、俺はダイヤが入った鉄箱を足で蹴ってずらした。
それから幾秒か立たないうちに、俺らが乗っていた馬車が真っ二つに割れたのだ。
俺とミミは臨戦態勢に入っていたのですぐに抜け出して鉄箱を守った。
「敵襲だ!鉄箱を守れ!」
周りにいた馬車はすぐに止まり、中から軍の人達が出てきた。
「あなた!鉄箱は大丈夫でしょうね!」
マカノン隊長が俺の方へ走ってきて、鉄箱の無事を確認してきた。
「あぁ。大丈夫だ。それより…まだ来るぞ」
と、俺が言った次の瞬間…
「隙ありぃぃぃ!」
と、小人が現れ、大剣を手に持って、俺の方へ走ってきたのだ。
「っ!?危ない!」
マカノン隊長がその小人に気がついて動こうとしたその時だ。
パン!
…乾いた音が森中を駆け巡った。
小人はその音を聞いて…いや、足元から出ている煙を見て、足を止めた。
周りの人たちも、まるで時が止まったかのように体が止まっていた。
「…おい…てめぇ、今何してんのかわかってんのか」
時が止まっている中で、俺はその小人の方を見て威圧感満載で言葉を発した。
肌の色が緑色だったので、俺らの世界での言葉を使うならおそらく『ゴブリン』の1人だろう。
そのゴブリンは、俺の顔を見るなり、恐怖の色を見せた。
「…金稼ぎで欲しいなら、こいつやるから、さっさと帰れ」
俺はそう言うと、懐に入っていた1万ルーンの袋をゴブリンの前に投げた。
ゴブリンは恐る恐るそれを取って中身を確認したあと、目を丸くし、すぐに感謝の涙を浮かべてそそくさと帰っていった。
「…はぁ…全く…どこもかしこも、こういう連中は減らねえなぁ…」
俺はそう言うと、アルフの方へと歩き出した。
「…ちょ、ちょっと待ってくれ!」
ようやく時間が動き出した。一連の出来事を見ていたマカノン隊長が、俺を慌てて止めた。
「ん?なんだ?」
「そ、それは…魔法具か?それにしては…奇妙な形をしているのだが…」
「あぁ。こいつは俺だけしか使えない魔法具だ。どんなもんかは…教えると、下手したらこの世界が崩壊しかねないから、やめておく」
俺は咄嗟にそう言ったが、現に前にいた世界では、俺が生まれる前に戦争が起き、色んな人が死んでいったことを教えられていたから、今の世界においてこの言葉が1番だろう…
俺はマカノン隊長に手を挙げて、アルフの元へと向かった。
アルフは馬車の被害状況を確認していた。
「うーん…こいつは派手にやられたな…さっきのゴブリンのせいとなれば…」
「魔法具だな…」
「魔法具ってのはそんな簡単に使えるもんなのか?」
「使用する人の力によりけりだな」
「なるほど…」
さっきのゴブリンは第2波の魔法具の使用をしてこなかったから、体力的に1回が限界ということだろう…
「とりあえず、鉄の箱はマカノン隊長の馬車に積んでいくとしよう。日が暮れる前には着きたいからね」
「わかった。ミミ!そいつをマカノン隊長の馬車に載せるぞ!」
「はーい!」
俺らは鉄箱をマカノン隊長の馬車に載せ、再び館へと向かったのだった…
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…館に着いたのは夕方過ぎくらい。
森の中にあるとは思えないほどの、大きな館だった。
その館の玄関には、いわゆるメイドさん達が左右に分かれてお迎えしており、中央からは少し太ったおじさんがドスドスと聞こえそうな足取りで俺らを出迎えてくれた。
「わざわざご苦労様だったな。時間がかかったようだが、どうしたんだ?」
「少々トラブルが起きまして、ヨーキリスさん…でも、ダイヤはちゃんとここにあるので」
アルフが商店の人達に言って、館の主人であるヨーキリスに鉄の箱の中身を見せた。
神々しいほど輝くその大きなダイヤは、ヨーキリスを十分満足させるものだった。
その一方で、俺は思わずメイドさん達の姿に違和感を覚えた。
ミニスカートにニーハイ、ゴスロリ調の、俺らの世界では『メイド喫茶』で出てくるようなメイドさん達だからだ。
もし、西洋の世界であるならば、こんな露出の多い格好はさせないだろう…
それに、1番気になったのは仮面をつけていることだ。
しかも、その仮面は本人を識別するには難しい、覆面タイプのものだ。
白の下地に黒の線が入った、不気味なマスクだ。
唯一分かるのは髪の毛の色くらいだし…
「…大輔…ここ、嫌な予感がするんだけど…」
「あぁ…」
俺とミミはお互いに違和感を覚えていることを確認した。
その後、商談のために、俺らは館の中に入った。
ここではアルフと商店の人達と、護衛として俺とミミとマカノン隊長、隊員数名が中に入ることになった。
終始、ヨーキリスがミミとマカノン隊長をしきりに見ていたのが気になるが…
そして、応接間に入り、すぐに商談が始まった。
「…マカノン隊長、少しいいか?」
俺はおもむろにマカノン隊長に小声で声をかけた。
「どうした?ダイス殿」
「…この館、少しいやな予感がするのだが…」
「…ダイス殿もお気づきになられたか…ここは何というか…どこからでも見られているような…」
「あぁ…少し、警戒したほうが良いかもしれない…」
「わかった」
その後、商談は無事に成立した。
ダイヤは5000億ルーンで取引が成立した。
前の世界では2600億円ほどだから、今回はアルフの交渉がうまくいったという感じだ。
「しかし、よくこのダイヤを僕の商店経由で買い取ってくださるなんて…どういう経緯で知ったのでしょうか?」
アルフは今回の取引相手であるヨーキリスとの商談を初めてであると、遠回しに言った。
「いやぁ、うちのメイドがたまたまあなたの店の評判を聞きましてね?頼まれたものはなんでも取り揃えるとも伺いましたから」
「なるほど…それでもなぜこのダイヤなのでしょうか?これも噂ですが、あなたがこのダイヤを直接入手した方が、比較的安値で入手できるはずでは…」
今回の商談に違和感を感じたからか、アルフはこれも遠回しに自分の店を選んだ理由を聞いた。
これに、ヨーキリスは不気味な笑みを少し浮かべた。
「確かに、ダイヤは直接手に入る。でも…今回の商談の目的はこのダイヤだけではないさ」
そのヨーキリスの言葉に、俺はマカノン隊長を突き飛ばした。
それと同時に、頭上から何者かがドンと降りてきた。
「んなっ!?」
「お姉さん!」
マカノン隊長はもちろん、アルフも突然の出来事に驚きを隠せなかった。
「…やっぱ違和感は間違いじゃなかったな」
俺はそう言うと、懐からグロックを取り出し、気絶程度の威力にして襲ってきた奴に向かって発砲した。
襲ってきたのはヨーキリスのメイドで、撃った弾に当たって気絶した。
「おやぁ…?珍しい物持ってるなぁ…」
ヨーキリスは依然不気味な笑みを浮かべていた。
「…ミミ、マカノン隊長やアルフたちを連れてここから逃げろ。ここは俺に任せてくれ」
俺はグロックを構えたままミミに避難させるように言った。
「…無理しないでね、大輔」
ミミはそう言って、アルフとマカノン隊長を出口へ避難させた。
「させるかぁ!」
ヨーキリスは指パッチンさせてメイドを向かわせた。
俺は近くにあったテーブルを横にしてバリアにし、そこからメイドに向かって連続で発砲した。
途中でAK47を使用するほどの多さだったが、何とか防衛線を張ることはできている。
「…すごいなぁ…その魔法具…俺のコレクションにも欲しいよぉ…」
ヨーキリスは相変わらず不気味な笑みを浮かべながら吐くように言ったが、その言葉とは裏腹に少しづつ焦りが出てきていた。
そこへ…
「大輔!」
ミミが俺のところへ帰ってきた。
「…避難させたか?」
「うん!外にいたメイドさんたちも倒して一時避難させたよ!」
「了解…それじゃ今から少しづつ下がるから、ミミは背中お願いする」
「わかった!」
俺は少しづつ下がっていき、ミミも俺の背中のほうを見ながら少しづつ動いた。
何とかヨーキリスの館から抜けた俺らは全力で館から離れ、森の中を通りながらアルフやマカノン隊長の軍隊に合流した。
「…あ!ダイス!よかった…」
俺の姿を見たアルフはほっとした様子で俺に向かって手を振った。
マカノン隊長はアルフの隣にいて、何か難しい表情を見せながらも、俺の姿を見てアルフと同様にほっとしていた。
軍隊は今あの館から少し離れた、開けた場所で休憩していた。
「…とりあえず、今日はここで一晩休もう。今から動くと危険だからな」
「わかりました!」
マカノン隊長は部下に休憩の指示を出したことで、今日はここでいったん休むことにしたのだった…
いかがでしたでしょうか?
まだ出している話が少ないので、そこまで読んでくれているとは思っていませんが、もしよろしければ、過激じゃない感想や評価(こちらは最悪1でも構いません)などをつけてもらえるとありがたいです。
自分自身、こういう一次作品はあまり得意じゃないので、変に思われるかもしれませんがm今後ともよろしくお願いします。
では次回、お会いしましょう。