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第51話〜サプライズ〜

…レオリーフからジリッカまでの所要時間はおおよそ3日ほど。

それまでにやるべきところはやっておこう…そう思った俺は、この日は教会に来ていた。

教会ではミミを軸として、マリアを含めた孤児院の子供たちがあることを手伝ってくれている。


「みんな、本当にごめんな…教会でやろうって言ってさ…」


俺は思わず子供たちに謝ったが…


「ううん!全然気にしてないよ!」

「だってお姫様の誕生日でしょ?それならお祝いしなきゃ!」


子供たちは元気よく返事してくれた。

マリアの教育がしっかり行き届いている証拠だ。


「なんていい子たちだ…」


俺は思わず感心していると…


「んにゃ!」


後ろからポンと頭を叩かれた。

叩いた犯人はもちろん…


「ミミ!いきなり後ろから叩くなって!」


教会での作業責任者であるミミだ。


「だって、ダイス何もしていないにゃ!働かざるもの食うべからず!だにゃ!」

「いや、これからやるところだっての!せっかくお菓子買って持ってきたのに…」

「んにゃっ!そ、それは申し訳ないことしたにゃ…」


俺がお菓子を差し入れで持ってきたことを知ったミミはすぐにしゅんとなり、自分の持ち場に戻っていった。


「まったく…いきなり来て何してんやら…」


俺は持ってきたお菓子をテーブルに置いてふと、周りを見て食堂の飾りつけの度合いを確認した。


「…うん、文句ないな」


俺は上出来と思って頷いていると…


「ダイスさーん!」


俺の上の方で声が聞こえた。

ふと上を向くと…


「っ!?」


ぺルちゃんとぺネ君が空中で飾りつけをしていた。

本来なら使われているはずの梯子なのだが…この二人は使っていない。

つまり、浮いているということである。

これにはもちろん…絶句の一言しかない。

そこへ…


「あら、ダイス君来てくれたのね」


マリアが装飾品を持って現れた。


「え?あ、ま、マリアさん、ど、どうも…」


俺は唖然とした状態で思わず挨拶をした。


「あら?どうしたの?ダイス君」

「え、いやその…ぺルちゃんとぺネ君が…」

「あぁ、あの子たちね。実は…」


と、マリアが話そうとしたとき…


「ダイスさーんどいてー!」

「ほげっ!?」


上からぺルがドンと降りてきた。

なのでもちろん、俺の頭に直撃した。


「もうっ!どいてって言ったのに!」

「いや、いきなりは無理だって!」


そういう俺はすぐに起き上がろうとしたが、起き上がることはできなかった。

なぜか?それはもちろん…俺の頭の上にぺルが乗っているからである。


「あのー…ぺルちゃん?降りてくれない?」

「ええっと…ぺルはもう降りてるよ?」

「は?」


俺は思わず変な声を出してしまった。


「…ダイスさん、いつからぺルが乗っていると思っていましたか?」

「…嘘だろ…?」


そう、さっき降りたのはペルではなく、ペネ。

さすが双子…よくわからん…

容姿もそっくりだし、髪型はどちらもセミショートにしているから余計…


「…とりあえずペネ…降りてくれないか?」

「はい。どうぞ」


俺が懇願したことでようやくペネは降りてくれた。


「いてて…しかし、なぜ2人とも浮いていたんだ?魔法とか使えたのか?」

「うん!なんか急に出来るようになっちゃって!」

「いや、マリアが教えてくれたからじゃん」

「それはそうだけど…急に出来たってなった方が驚くじゃない?」

「だからって嘘をつくのはダメだ。こういうのはちゃんと本当のことを言わないと…」

「別に言ったっていいじゃん!もー!」

「まぁまぁ、そこまでにしてって」


ペルとペネの兄弟喧嘩が勃発しそうな予感がしたので、俺は思わず2人の間に割って入った。


「最初に見た時、俺思わず驚いたからな。それだけでもいいサプライズだよ。だから…ね?」

「むぅ…でも、ダイスさんが驚いてくれたのならいいや!」


俺が驚いてくれたことに嬉しいと思ったのか、ペルは満面の笑みを見せた。

一方のペネはそっけない態度を見せたものの、結構満更でもない様子だった。


「…あ、そうだ」


その時、俺はふとあることを思いついた。


「ペル、ペネ。ちょっといいか?」

「どうしたの?ダイス兄ちゃん」

「何か思いついたの?」

「今日のパーティーなんだけどさ…」


俺は2人にあることを耳打ちした。

すると…


「うん!その方がいいかも!」

「やってみる」


2人とも俺の案に同意してくれた。


「それじゃ、2人ともよろしくね」

「はーい!」


ペルは元気よく返事し、ペネは頷くだけだったが納得してくれたようだ。


「さてと…そろそろこっちも仕上げますか」


俺はそう言うと、教会に持ち込んだあるものを仕上げるためにキッチンへと向かったのだった…


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


それから数日後…


「久々の旅行、楽しんだね、ペトラ」

「はい、お嬢様」


リシュリューとペトラが、レオリーフから戻ってきた。


「もう、お嬢様じゃなくていいって。幼馴染なんだし」

「いえ、お嬢様はお嬢様です。私はお嬢様の唯一の側近のようなものですから」

「全く…」


リシュリューはやれやれと呆れてはいたが、これがペトラだという表情も見せていた。


「それで…この後ダイスさんの家に戻るはずですよね?なんで教会の方へ?」

「さぁ…?」


リシュリューの質問に、ペトラはすっとぼけるようにはぐらかした。

リシュリューはその様子に気づいたが、長年一緒にいた間柄なのか、サプライズを考えているのだろうと見抜いていた。


「そう…ペトラもわからないのね」


今回の旅行のルートは御者には伝えているが、伝えた人はダイスだったので、ペトラもどこへ行くのか全くわからないようになっていた。

行き先はレオリーフ、ただそれだけしか知らないのだ。


「ふふ…何をしてくれるのかな」


リシュリューはまるで子供みたいにワクワクとした表情を見せた。

しばらく走らせて教会の前に着くと、馬車はそこで止まった。


「あい、着いたよ。あんたらの知り合いがここに止めろって言ってたぜ」


御者がそう言うと同時に…


「おかえり、2人とも」


ダイスが教会の入り口から出てきて2人を迎えにきた。


「あ、ダイスさん!」


先程まで可憐で大人しい少女は、ダイスの顔を見るなり子供のような表情を見せて馬車から降りた。

そしてすぐダイスの胸に飛び込んだ。


「ただいま!ダイスさん!」

「あはは…おかえり。ペトラもおかえり」

「ただいま戻りました」


ダイスは御者に今回かかった馬車の費用を渡すと、リシュリューとペトラを教会の中へと誘った。


「2人とも、どうぞ中へ」


2人は顔を見つめ合った後、教会の中に入った。

中はかなり暗かったが、2人が入ったのを見ると一気に明るくなり…


「「「「誕生日おめでとう(ございます)!リシュリュー(さん)!」」」」


教会にいたミミやブロッサム達、孤児院の子供達、マリアが一斉にクラッカーを鳴らしてリシュリューの誕生日を祝ったのだ。


「え?こ、これって…」


リシュリューは豆鉄砲を喰らったかのような顔を見せた。


「ペトラから聞いたんだ。今日誕生日だって」

「え…ぺ、ペトラ!?」

「自分でお忘れですか?今日が誕生日だということを」

「わ、忘れてたけど…その…まさか、またこんな風に祝ってもらえるなんて思ってなくて…」


リシュリューは思わず戸惑いを隠せなかったが…


「今回のパーティーはダイスさん達にご協力いただきました」

「んで、俺が教会のみんなに声をかけたら快く手伝ってくれてさ。だからみんなでお祝いすることにしたんだ」

「ダイスさん…ありがとう…」


リシュリューは徐々に笑顔になり、そして目から涙が出てきたのだ。


「リシュリュー!?大丈夫か!?」

「うん…大丈夫…嬉しくてつい…やっぱり…私、ダイスさんのこと…好きになりそう…」

「そこまで!?」


ダイスは思わずツッコミ、リシュリューはそれを見て泣きながらもクスクスと笑った。


「あと…水を差すようで申し訳ないのですが…一つよろしいでしょうか?」


ペトラがおそるおそる、俺に声をかけてきた。


「どうした?」

「あそこ…横断幕をかけてる子なんですけれども…」


ペトラが指差した先には、『リシュリュー王女、誕生日おめでとう!』の横断幕が掲げられており、それをペルとペネが浮いて掲げてたのだ。


「…あの2人…見間違いじゃなければ、浮いているように見られるのですが…」

「うん。浮いてるよ」

「え!?ふ、浮遊魔法具無しで浮いているのですか!?」

「いや、すごいよね…何もなしで浮くなんて…」


実はダイスはペルとペネに耳打ちをした後、同じ光景を見たミミ達からも同じようなことを言われた。

通常人が浮くには専用の魔法具が必要となり、それがないと浮くことができないとされている。

そんな定説を嘲笑うようにひっくり返している様子を、今見ているというわけだ。


「まぁ、これも驚いてもらうためのサプライズとして…これからリシュリュー王女の誕生日パーティーをやるから、お2人は食堂へ。俺らは準備するものたくさんあるから」

「はい。わかりました」


2人はダイスの案内で教会の中へと入り、誕生日パーティーを受けた。

この日のために作った特製ケーキに、子供達が協力して作った料理の数々。

リシュリューは嫌な顔一つせず、丁寧に上品に頂いた。


「わぁ…この料理美味しい」

「本当!?ありがとう!王女様!」


料理を褒められた子供達は満面の笑みだった。

パーティーの間もリシュリューと子供達で仲良く過ごし、一夜はあっという間にすぎていく。

そして…


「さて…今日のパーティーもそろそろお開きでございます。参加してくれたみんな、突然のお願いなのに協力してくれてありがとう。それじゃ、また今度ね」

「はーい!」


楽しいサプライズパーティーは無事解散となったのだった…


いかがでしたでしょうか?

ちょっと色々あって2回も出せなかった挙句、盛り上がるようなストーリーではなくてすみませんでした。

さらにお詫びではございますが、次回以降も不定期になる可能性が出ているので、ご理解の程よろしくお願いします。

では次回、お会いしましょう

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