第50話〜内緒の計画〜
…謁見の儀式が終わってから1週間後…
俺はペトラとある計画を練っていた…
「…本当によろしいのですか?ダイス様…」
「あぁ…その話を聞かされたら、俺もやらないといけないだろ?」
「ありがとうございます」
「それじゃ、俺はミミとダーヌとブロッサムに伝えておくよ。今からが楽しみだ」
俺はそう言うと、ペトラの部屋を静かに出た。
これが真夜中の出来事である…
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それから数日後…
俺は最近よく行っている屋台へと赴いた。
「大将、こんにちは」
「お、ダイス!」
これまでの数々の事件を解決したおかげか、ジリッカではちょっとした有名人になった俺は、こうやって屋台や日用品店とかで顔を見られるだけで認識されるようになった。
しかもジリッカの人々は優しくて、馴染みやすい。
この上なくいい環境だ。
「どうした?何か買いに来たのか?」
「まぁ、ちょっとね。小麦粉とか牛乳とかあるか?」
「はいよ!ちょいと待ってな!」
食料を売っているこのお店で俺は、色々なものを買うべく大将に在庫の確認をしてもらった。
ちなみに今いる屋台は、商品の種類がそんなに多くないように見えるが、ここの店主の家兼倉庫が真後ろにあるので、問屋レベルの品揃えがある。
アルフのおすすめで紹介されたこともあって、ここのお店にはミミ達含め御用達のお店になっている。
ただ、まだ店主の名前は覚えられてないけどね…
「ほいよ!どの種類にするんだ?」
店主は後ろの倉庫からいくつかの種類の小麦粉を用意してくれた。
「この中でタンパク質量が多いのはどれだ?」
「この小麦粉だな」
「んじゃそれを」
そんな感じの会話でどんどんと買い込んだ後、俺は広場にて同様に買い出しに行っているみんなを待った。
と言っても全員ではなく、リシュリューとペトラは隣町であるスラノという町まで遊びに行っている。
スラノは自然豊かな町で、一面花畑の中に囲まれているような町だ。
それを売りにして観光客も多くやってくるらしく、オールシーズン活気に溢れているそうだ。
トライアドのリシュリューとペトラにとってはいい羽伸ばしにはなるだろう。
しばらく家でゆっくりしていると…
「ダイス〜!買ってきたにゃ!」
ミミが元気よくドアを開けて帰ってきた。
後ろにはメノールもおり、2人とも牛乳缶を持っている。
「お疲れ様。目当ての物買ってきたよね?」
「もちろんにゃ!ね?メノール!」
「はい。ご主人様のご所望の搾りたて生乳です」
「ありがとな。とりあえずそっちに置いて休んでくれ」
俺は2人に荷物をキッチンに置くように頼んだ。
「それで、これらの生乳はどうするのにゃ?」
「そいつでバターを作る。後でみんなでこれらを容器に入れて振るからな」
「振る…ですか?」
「あぁ。何も加工してない牛乳で思いっきり振ると脂肪分が浮き上がってくるから、そいつでバターが作れるってわけだ」
「そうなんですね。勉強になります」
「後でレシピ教えておくよ」
それからまたしばらく経った後…
「帰ってきたぜ!」
ダーヌが卵を携えて帰ってきた。
それからまたまたしばらく経った後…
「ダイス、いちご買ってきたよ」
ブロッサムがいちごを掲げて帰ってきた。
それからまたまたまたしばらく経った後…
「ダイス!」
「はちみつもらってきました!」
アカギとウンゼンがはちみつを持って帰ってきた。
「後はアルフに頼んであるから届くまである程度始めるか」
俺はキッチンに並べられた材料を見ながら、ケーキを作り始めた。
「んにゃぁぁぁぁぁぁ!」
まず手始めに、ミミがボトルに牛乳を入れて振っている。
理由はもちろん、俺が先ほど言った通りバターを作るためだ。
この世界にもバターはもちろん存在しているのだが、何故かジリッカでは手に入りにくい代物らしく、牛乳はバターに比べて比較的手に入りやすかったのでそこから作ることにしたのだ。
と言っても牛乳もそこそこのお値段となっており、そのお値段はなんと1リットル400ルーン。
ルーンが日本円と同等と考えたら、なかなかの高額ではあるが、バターに至っては100グラム900ルーンというインフレレベルの代物なので妥協してある…
ちなみにこのお値段は、ジリッカ一商品が集まるアルフの店のお値段だ。
比較的安く仕入れているアルフの店でさえなのだ…
と、説明しているうちに…
「はぁ…はぁ…できたにゃ…」
ミミがすべての牛乳を振ってくれた。
全力で振ってくれたため、いい感じにバターの素が浮き出ている。
「ありがとな、ミミ」
「お、お安い御用にゃ…」
ミミは平気だと言わんばかりの言葉を並べたが、見るからにヘトヘトの状態である。
ここから先の仕事は俺とブロッサムで進めるとして…
「ダーヌとメノールでオードブル作ってくれないか?」
「了解!」
「ご主人様のご命令とあれば…」
俺のお願いにダーヌとメノールがしっかりと答えてくれた。
「…あとは頼んだよ、ペトラ…」
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…一方、リシュリューとペトラは…
「わぁ!きれい!」
「そうですね、お嬢様」
ジリッカの隣の隣にある町、レオリーフという町に来ていた。
この町は何といってもとにかくお花がきれいな町で、『花畑の町』という異名もついている町だ。
そんな異名が付くのも納得するほど、町の周りには数多くの花が咲き誇っており、一年中観光客がひっきりなしに来るのだ。
もちろん、花や周りの植物などに害を与えないように、町ではものすごい規制が厳しいそうで…
「あ、こら!勝手にお花に触るんじゃない!」
「す、すみません!」
トライアドで最近ようやく名が上がってきているリシュリューですら、触ることはご法度レベルだ。
「おい、君!ここにいる者は…」
「わかっています!そこにおられるのはリシュリュー殿下であろうと!」
「それなら触っても…」
「それでもだめです!この町では領主に認められた者以外は触れてはならないのです!」
「なぜなのだ!」
「この町のお花は美しいものではありますが、その美しさ故乱獲がひどい時期があり…それ以来、この町独自の法律によって定められているんです」
「っ…」
注意された憲兵の言葉にペトラは思わず言葉を濁してしまった。
「ペトラ、仕方ありません。ここはおとなしく、きれいな花たちを観察するとしましょうか」
「そうですね…先ほどはご無礼をしてしまい、申し訳ありませんでした」
「大丈夫です。あなた方のことはこの町にも知っています。ただ、今度は注意してください。もし触ってしまったは100万ルーンを支払うことになりますから」
「わかりました。気を付けます」
その後リシュリューとペトラは仲良くきれいなお花畑を散策したのだった…
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