第47話〜対バーグマン・最終決戦〜
最初に駆け出していったのはミミだ。
「ふにゃぁぁぁぁぁ!」
猫パンチでもしそうな叫び方をしながら、巨大爪を大きく振って、バーグマンの茨を切りつけていく。
ちなみに、バーグマンが操る茨とリシュリューが操る茨には違いがあり、バーグマンの茨は本当に漆黒の色をしているのに対し、リシュリューの茨は若干紫がかっている色をしている。
これをミミは瞬時に判断して斬りつけていっているようだ。
「小癪な真似を…」
と、バーグマンがミミを縛りつけようと茨を出すも…
「させません!」
リシュリューがそれを防ぐように茨を出してミミを守る。
一方の俺はというと…情けない話ではあるが、影に隠れて様子を見ている。
ずっと盾として守っていたから体力が結構減っているからだ。
一応ハンドガンで牽制しながらミミとリシュリューが戦いやすいように動いているのだが、そのたびにミミとリシュリューから鋭い目線が来る。
まるで動かないでと言わんばかりに…
「全く…どっちが守られてるんだか…」
俺はブツブツと言いながら、少し動いてはハンドガンを撃つということを繰り返しやっていった。
一方のバーグマンはずっと戦いっぱなしなので、体力はもちろんのこと、体内で保持している力も失いつつあった。
「くっ…このままでは…」
バーグマンとミミ、リシュリューの戦いは、次第にバーグマンが押し切られるような形になっていった。
「まだまだだにゃ!」
ミミはまだ体力を残して茨に斬りかかる。
一方のリシュリューは…
「…くっ…そろそろ力が…」
バーグマンによって埋め込まれた闇の結晶の力が消えつつあるようだ。
「リシュリュー!無理はするな!」
「わかってます!でも…この力は…私は…いらないので!」
先程の言動から想像するに、リシュリューは完全に結晶を排除しようとしているらしい…
だが、それ以上にリシュリューの力が減っているようにも思える…
もしかして…
「リシュリュー!バック!」
俺は思わずサバゲー時代の言葉を発してしまった。
「だ、ダイス…さん!?」
「あ、すまん!戻ってこい!」
「で…でも!」
「リシュリュー!今はダイスのところに行くんだにゃ!私は大丈夫だから!」
ミミはそう言うと、どんどんと茨を斬りつけていった。
それを見たリシュリューは、申し訳なさそうな顔をして俺のところへ来た。
「…どうか…しました…か?」
そう言うリシュリューの肩は上下に揺れている…
「リシュリュー…あまり考えたくないことかもしれないんだが…」
俺は、リシュリューの持つ闇の結晶がリシュリューの力と合体しつつあるのではないか…と考え、そのことをリシュリューに伝えようとした。
しかし…
「…わかってます…私の力が…消えつつあること自体…」
リシュリューはしっかりとした目つきで俺を見た。
「ならなぜ…」
「私は…プランタン国の王女です…父の失態は私の失態…ですから…これは…」
「…そのことで、命を削るほどか?」
俺はリシュリューに冷たく言葉を刺した。
それでもリシュリューは揺るがなかった。
「…私は…私たちは…仲間を裏切ったんです…ですから…今は私が…罪を償わなければ…」
「そんなこと誰が喜ぶって言うんだ!」
俺は思わず叫んでしまった。
「まだ…トライアドのみんなが生きてるだろ…ペトラだっている…彼女は君の親友だろ!」
「…そんな彼女にも…顔向けなんて…」
「出来る!みんなリシュリューの帰りを待ってる!このような姿に変えられてしまったみんなだって、生きて欲しいと考えてる!」
そして俺は、リシュリューの肩を掴んだ。
「…リシュリューが正気に戻ったのは…優しい人達の手があったからだろ…?そんな人達を…悲しませるような事はしないでくれ…俺だってそうだ…ミミも…ガラットも…レティスも…みんな、君のためなら頑張る。だから…消えるな、リシュリュー」
リシュリューは俺の言葉に驚きながらも、思わずふふっと笑った。
「そうでした…私は、あなたみたいな人に救われて、ここにいましたね…すみませんでした、ダイスさん」
「…それならいいんだ…大丈夫、俺らがついているから」
俺はリシュリューの肩から手を放し、状況を確認した。
「にゃぁぁぁぁ!」
依然、ミミがバーグマンの茨を斬っている。
進展があるとすれば、そろそろバーグマンの身体を捉えるところだろう。
が、そろそろミミも疲れの顔を見せている。
「…くっ…これはマジでまずいぞ…」
そしてさらにまずいことが起きた。
ついに俺らがいるフロアの天井や壁が崩れ始めたのだ。
「…ちっ…崩れてきやがった!」
それと同時に、バーグマンが高らかと、まるで勝利宣言みたいなことを言い始めた。
「く…くくく…残念だったな!そろそろここは崩れ落ちる。しかし、我が思念はこの程度では消えん。この思いは種となり、長い時間をかけて再びこの地で復活する!貴様らの負けだ!」
「…くっ…ミミ!退避しろ!」
「んにゃ!?で、でも…」
「今回は…作戦失敗だ…これ以上はもたない!」
俺は苦渋の決断をして、みんなを避難させようと試みた。
しかし、リシュリューだけは違かった。
リシュリューは手を床に置いて、目を瞑った。
「…お願い…私の声…届いて…」
やがて、リシュリューの手から光が放たれると、崩れ始めていた天井や壁が収まり出した。
「…リシュリュー?」
「…この木は、私達トライアドから生成されたもの…ならば、堕ちたとはいえど、私の声が届くのではと思い、試してみたのですが…うまく行きました」
リシュリューはひどく疲れた顔で笑顔を見せた。
「リシュリュー!?」
「大丈夫です…と言いたいですけど…流石に疲れました…」
「それならここで休んでくれ…」
俺はリシュリューにそう言うと、アサルトライフルを顕現させて茨に向かって撃ち始めた。
「にゃにゃ!?ダイス!当たるにゃ!」
「悪りぃ!ミミ!あと少しだけ頑張ってくれ!バーグマンに傷を与えるだけで十分だ!」
「わかったにゃ!」
ミミは俺の言葉を聞いたあと、すぐに攻撃に移った。
「くっ…余計なことを!」
バーグマンはそう言うと再び手から茨を出して牽制するも、俺の放つ銃弾とミミの斬撃の餌食となり、悉く散っていった。
「この…このぉぉぉぉ!」
バーグマンは断末魔のような叫び方をして茨を出そうとしたが…ついに手から茨が出ることはなかった。
「んなっ!?」
それを見たミミがすかさずバーグマンの懐に入った。
「隙ありっ!」
「グハァッ!」
ミミの巨大爪が綺麗に決まり、バーグマンの身体がまるで真っ二つになったかのような傷ができた。
それと同時に、バーグマンの身体の中で蠢く黒い結晶が見えた。
「ダイス!」
「わかってる!」
俺はすぐにスナイパーライフルを持ち、パンッ!と1発結晶に向けて撃った。
そして、パリンと音が聞こえ…黒い結晶は霧のように消えていった。
そしてバーグマンは…結晶が消えると同時に息絶えた。
「…ふぅ…」
俺は思わず息は吐き、ふとリシュリューを見ると…俺にもたれかかるように寝ていた。
「…お疲れ様、リシュリュー」
俺はリシュリューの頭を撫でながら褒めた。
「後でミミもお願いするにゃ!」
ミミはいつものようにおねだりをしているものの、今はリシュリューの番と思っているらしく、俺とリシュリューの空間にこれ以上は言うことはなかった。
その後、俺ら3人はガラットとレティスに合流。
リシュリューは寝ていたので、ミミにだけガラットとレティスは勝手に抜けたことについてカンカンに怒ったが…
「俺の顔に免じて許してくれ」
俺が頭を下げたことで2人の怒りは、俺への申し訳なさに変わった。
そして、俺ら5人は無事に木の外へ脱出、木はダーヌ達が放った火によって燃え落ちていった。
俺の作戦により山火事になった箇所の火消しをすること以外は、無事…とはいえないかもだが、トライアドの人達を救うことができた…
俺らは現状にホッとした後、拠点のテントへと向かったのだった…
いかがでしたでしょうか?
もしよろしければ評価や感想など、よろしくお願いします。
では次回、お会いしましょう。




