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第45話〜ピンチ…と思ったら?〜

…埒が明かない…

ずっと謎の影と交戦をしているが、倒しても倒してもウジ虫のように湧き出てくる。

前半はアサルトライフルによる援護射撃で影を倒していたのだが、次第俺の隠れる場所も無くなってしまったため、今はハンドガンと『阿吽』を用いて影と交戦している。


「みんな、大丈夫か!?」

「大丈夫だと思うか!?この状況!」

「そうは見えてねぇけど!」

「ならその通りだ!」


しばらく裏で援護していた俺はもちろんだが、ずっと前線で戦っていたガラット、レティス、ミミは満身創痍だ。

謎の影は、致命傷までいかないもののなかなか重い攻撃をしてくる。

さらに言うならば、トライアドの特性でもある回復能力がここでも発揮し、謎の影に負わせた傷がすぐに治るという厄介仕様…

そうなると、俺らがこの木を倒すのはおろか、全員ここで倒れてしまう可能性まで出てくるのだ。

ミイラ取りがミイラになる…言いたくないけど、これ以上状況に合った言葉はない。


「どうするのにゃ!?ダイス!」

「少なくとも別の手はあるから、この木を倒すことはできるが…問題はこのまま俺らは脱出できるかどうかだな…」


俺はミミと背中合わせをしながら、この後のことについて話し合った。


「…ミミ、耐えられるか?」

「すこーしキツイかなぁ…でも、ダイスのためなら頑張れるにゃ」

「無理はするな。いいな?」

「わかってるにゃ」


俺とミミはそう言うと、勢いよく飛び出し、謎の影に攻撃を仕掛けていった。


「なんか、2人ともすごい信頼し合ってるな…」

「私たちも負けてられないね!ガラット!」

「あたぼうよ!行くぞ!レティス!」


俺とミミのやりとりを見たガラットとレティスは、信頼し合ってる姿を見て改めて気合を入れ直し、謎の影に切り込んでいった。

すると、少しずつ謎の影は消えていき、俺らが優勢になっていった。

そして…


「最後の…1人!」


ミミの巨大爪(ビックサイス)で謎の影は消滅した。

体力を消耗し終えた俺らは、その場でぐたりとへたり込んだ。


「くっ…きつかった…」

「お疲れ様にゃ…後はコアを破壊するのみなんだけど…ダイス」


おもむろにミミが俺に質問してきた。


「どうした?」

「リシュリューはどうしたのにゃ?全く姿が見えないんだけど…」

「それがさっきからいなくてな…」


俺はリシュリューが突然いなくなった事について戦いながらずっと疑問に思った。

もちろん、3人も同じような顔をしている


「…リシュリューは本当にどこにいったのにゃ?」

「それがわかれば苦労はしないが…」


と、みんなで話をしていたその時だ。

コアを支えている中央の柱が、急に裂けたのだ。

その裂け目からは、2人の影が…

1人は、離れている俺らからもわかるほどの威圧感たっぷりの大柄で、それでいて優雅な佇まいの男の人…

そしてもう1人は…


「リシュリュー!?」


ミミが思わず叫んだ。

そう…間違いなくリシュリューだ。

それなのに…どこか禍々しい雰囲気を漂わせている…


「…貴様らか、リシュリューをここに連れてきたのは…」


リシュリューの後ろに立っていた男が声をかけてきた。

声の質からして、おそらくバーグマン国王だ。


「あぁ!それがどうした!バーグマン国王!」


ガラットは強気に声を荒げた。

ガラットがそういうのなら間違いなさそうだ…あの人が、バーグマン国王…


「どうしたも何も…娘をここに連れてきてくれて、ご苦労だったな」

「は?」


思わぬ言葉に、俺らは変な声が出てしまった。

そもそもリシュリューからは、引き寄せられるなんていう感覚はなく、ここに来たのは自分の意思である。

それなのに『連れてきてくれた』というのは…


「不思議かい?なぜ彼女をここに連れてきてくれたなんて言ったことが」


顔に出てたか…

まぁ、ミミもガラットもレティスも同じような顔をしてるからな…


「そんなの簡単なことだ。彼女は私の家族の中では正義感に溢れている。ここに来てこの木を止めようと思うに違いないと考えていたからな。ご苦労だった」


なんか、無性に腹が立ってくる。

自分の家族の性格を利用しているように聞こえてくる…いや、利用しているのか…


「リシュリューに何をしたの!」


ミミはバーグマン国王に怖気付くことなく、果敢に噛み付いた。

ミミもわかるほどの、リシュリューの異様さ…

先程俺らと一緒に行動していたリシュリューとは大違いだ。

姿は変わらぬものの、花の色は黒に染まっている。


「彼女にはこの大木の女王になってもらうからな。そのために、彼女に力を与えたのだよ」


バーグマン国王はそう言うと、ある結晶を自分の懐から取り出した。

真っ黒で光が吸い込まれそうな程の闇の結晶…


「それは…?」

「これはパージという奴隷商人の結晶だ。彼は自分を結晶化させてこの木に組み込ませ、自分の思い通りにしようとしていたらしいが、結局トライアドの結晶に飲み込まれて自我を失ったのだよ。そのかわり、彼の貪欲な欲望がとてつもないエネルギーを持った結晶となって、ここにあるというわけだ」

「あいつ…何をしたかったんだか…」


この場の雰囲気に合わない言葉をガラットは言ったが、その気持ちはまさにその通りだった。


「そしてこの結晶を、私は彼女に託すように組み込ませたのだよ。そして、彼女は今…私の言いなりだ」


バーグマン国王は誇らしげに言い放った。

もう我慢の限界だった。

俺はすぐにアサルトライフルを取り出して、結晶に向けて砲撃した。

咄嗟のことだったので、もちろんバーグマン国王は対応できず、手に持っていた結晶は粉々に砕け散った。


「んなっ!?」

「ダイス!?」

「…てめぇ…自分が何をしてんのかわかってんのかよ…あぁ!?」

「ダイス!落ち着け!」

「やめてにゃ!ダイス!」


ミミが体を張って静止したので、俺はそれで落ち着くことができた。

一方のバーグマン国王は、少し戸惑ったものの、さすがは国王というべきか、すぐに冷静になった。


「まぁまぁ…彼女にはすぐに会わせてあげるさ。そのかわり、君たちにはここで死んでもらう。さぁ、行きたまえ、リシュリュー」


バーグマン国王がリシュリューの肩に手を置くと、リシュリューはすぐに走り出し、俺に向かって突進してきた。

前段にいるガラットやレティス、そしてミミではなく、俺に向けて…

俺はすぐに俺の前に立ちはだかっていたミミを退け、『阿吽』でリシュリューの攻撃を受け止めた。

リシュリューの手にはこれまた禍々しい雰囲気の茨が纏ってあり、それがジャリジャリと『阿吽』を削るように動いているから厄介極まりない。


「くっ…リシュリュー…」


攻撃を受け止め、苦しくなっている俺はリシュリューの方をチラッと見た。

すると、リシュリューは…微笑んでいた。

そして、何かを呟いていた。

その呟きを聞いた俺は…リシュリューと同じように微笑んだ。

俺はすぐにリシュリューの攻撃を払い、ハンドガンで牽制して間合いを取った。


「ククク…素晴らしい動きだ、リシュリューよ…さぁ、周りにいる他の奴らも、ころし…」


と、バーグマン国王が言いかけたその時だ。

バーグマン国王の声が突如として消えた。

その違和感に気がついたのは、ガラットとレティスで、ミミは別の違和感にも気がついた。

バーグマン国王の胸には、茨が突き抜けられており、そしてリシュリューの手から…茨が出ていた。


「…ごめんなさい。お父様…いえ、バーグマン前国王」


リシュリューはそう言ってバーグマン国王と対峙するように振り返った。


「…リシュリュー…なぜ…お前は…確か…あの結晶に触れて…」


バーグマン国王は驚きを隠せない様子だった。


「えぇ、私はあの結晶に触れました。そして、触れた瞬間、私たちの家族の悲痛な声が聞こえました。人間のせいで私たちが消えかけた…その事に、私は絶望し、一度は自分を見失いかけました」

「ならなぜ…自分を保っている…」

「なぜでしょうか…でも、私は、そんな人間だけではないことを…たった少しだけですけど、教えてくれた人がいました。私に触れたあの時の手、みんなで分かち合った手…あの時の手が無ければ、私はあなたの言いなりになっていたかもしれませんね」


リシュリューはそう言うと、ガラット、レティス、ミミ、そして俺の順に目を配った。

そして俺と目が合った時…花が咲いたような、満面の笑みを浮かべていた。


「く…この…ふざけるなぁ!」


バーグマン国王は茨を無理やり外し、自分の力で俺らに仕返ししようとした…が、ここもリシュリューの計算通り…


「ダイスさん!」


リシュリューがすぐに俺の前から離れると…


「はいよ!」


俺はアサルトライフルでバーグマン国王に向けて発砲した。

さっき結晶を撃った時は単発モードだったが、今度は連射モード。

アサルトライフルの引き金を引くと、銃弾がドドドドドと出てくる。

そしてその銃弾は、バーグマン国王の体を貫いた。


「ぐぁぁぁぁぁ!」


バーグマン国王は断末魔を上げながら、その場に倒れ。

そして先程顕現した裂け目は、バーグマン国王の力が尽きたせいか、バーグマン国王ごと飲み込んで閉じていった。


「…なんか、今回もあっけなかったにゃ」


ミミはふぅと一息ついた。


「なんとかなった…だよな?」

「そうだといいけどね…」


ガラットとレティスも少し安堵した様子だ。


「…はぁ…」


少々体に来ているせいか、俺はアサルトライフルを杖にしてなんとか姿勢を保った。

それを見たリシュリューは…


「ダイスさん!」


俺の元へすぐに駆け寄った。


「大丈夫ですか!?ダイスさん!」

「俺は大丈夫だ。逆にリシュリューは大丈夫か?あの黒い結晶…埋め込まれたんだろ?」

「そうにゃ!リシュリュー、体に変な感じない!?」


俺の一言に、ミミがすぐさまリシュリューの元に寄った。

ガラットとレティスもリシュリューの元に集まってくる。


「はい。今は制御できています。最初はどうしようもなかったのですが、ダイスさんのおかげで二つの力を使え分けることが出来ました。それに、こうでもしないと一国の女王は務まりませんからね」


リシュリューはそう言うと、俺に向けてとびっきりの笑顔を見せてきた。

それを見たミミは…


「むぅ…またダイスに女の子がぁ…」


と、嫉妬剥き出しでほっぺを膨らました。


「いやぁ、ダイスは本当にすごいな。今はないとはいえ、一国の女王様に好かれるなんてな」

「うんうん!でも、ラブラブ度は私たちの方が負けてないけどね!」


ガラットとレティスは俺とリシュリューの会話を見て囃し立てて来たが…まぁ、無視で構わないだろう…


「さてと…今、木はどうなっているんだ…」


俺はふと、コアの方を見ると…先程までの禍々しい輝きはなくなり、稼働していなかった。

つまり、バーグマン国王の命が消えた事によりコアが動かなくなったということだ。


「これで一件落着だにゃ!」

「そうだな…さてと…ダーヌ達に連絡せねば…」


俺はクロスタルを使ってダーヌ達に連絡を取ろうとしたその時だ。

ミシミシと周りから音が鳴り響いたのだった…

いかがでしたでしょうか?

もしよろしければ評価や感想などよろしくお願いします。

では次回、お会いしましょう。

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