第43話〜大木へ潜入せよ〜
「それじゃ、先に私が行くね!」
…レティスが開けてくれた穴は1人分のため、先鋒としてレティスが先に行った。
「それじゃ次は私が行くにゃ!」
ミミもレティスの後について行く。
「それでは、お先に失礼します」
その次にリシュリューが言った。
「さてと、次は俺…」
と、ガラットが俺より先に行こうとした時だ。
「なぁ、ガラット。ちょっといいか?」
俺はガラットを止めた。
「ん?なんだ?」
「ちょいと気になることというかさ…」
「気になること?」
「あぁ。バーグマン国王の言葉についてだ」
俺はバーグマン国王のある言葉について引っかかることがあり、共有すべくガラットに話そうと思った。
「俺らと話していた時、バーグマン国王は『国を売った』と言ってたよな?」
「あぁ…そうだな…」
「そして、リシュリュー王女は、国はいつのまにか滅んでしまったということだよな…リシュリュー王女はわからないと言っていたが、動員されたのは相当だと思う」
「まぁ、国を滅ぼす程度だ。人員はかなり揃わないと難しい」
「それもそうだが、果たしてそれだけが理由なのがいささか気になるところなんだ…」
俺はそう言って、穴の中をじっと見つめた。
「気になるって…お前はどう睨んでるんだ?」
「…俺は、国王自身が内密でパージらと結託し、国の護衛を無力化してそのまま滅ぼさせたと考えている」
「はぁ!?」
俺の言葉に、ガラットは驚きの言葉を隠せなかった。
「おま…一体何を言っているのか…」
「わかってる。ただこれは確証がないからあくまで可能性が低すぎる選択肢のひとつだけ。それでも…あの『国を売った』って言葉がその選択肢を消してくれないんだ」
「…まさか、『国を売った』というのはそのままの…」
「それを確認する為に…この穴に飛び込もうと思う。すまないな。この話は流石にリシュリュー王女の前では言えなくて…」
「気にすんな…リシュリュー王女に聞かれたらなんて言われるかわからねえしな…」
ガラットはそう言うと、そそくさと穴の中へと入っていった。
俺もその後に続いて穴に飛び込んだのだった…
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…大木の中は空洞になっており、花粉が舞っている様子はなかった。
なので、俺らはマスクとゴーグルを外した。
「…しかし、どういう構造になってるんだ?」
落ちた先の足場よりもっと下に、何やら光るものが見えた。
「あの光っているのが、この木の核になっています」
「そして、今俺らが立っているのは固定するための糸みたいなものか…なら、この糸を下るしかないな」
と、ガラットが冷静に話していた時だ。
がラットの背後で何やらうごめく影を見つけた。
その一瞬だけだが、俺はその影はやばい奴であることを察知した。
「ガラット!伏せろ!」
ガラットは俺の声に反応してすぐに伏せた。
影は俺らの姿を見るなり襲いかかってきた。
俺はすぐにアサルトライフルを顕現させて発砲する。
銃弾がうごめく影に命中すると、影は霧と化して消えてしまった。
「…なんなんだ…」
「おそらく…私たちの家族の…」
「トライアドの反転した魂といったところか…」
先ほどのトライアドの叫びを聞いていたリシュリューが、影の正体がトライアドの魂であったことでおびえないか心配だったが…
「…大丈夫?リシュリュー」
「えぇ。問題ありません」
覚悟を決めていたからか、落ち着いていた。
少し一安心したところで、俺はさらなる気配を感じてふと、後ろを振り向く。
その俺の目線の先には、うじゃうじゃと影が生えてきているのが見えた。
まるで枝が生えるかのように…
「その先が下に行ける道で、こうやって影がいるってことは…」
「やはり、あの核には行かせたくないってことだね」
「ダイス!行くにゃ!」
「当たり前だ。ミミとガラットで前を切り開いてくれ。俺は後方から支援する。レティスはリシュリューの警護に回ってもらいたい」
「えぇ~!なんで私がガラットと一緒じゃないのぉ!?」
「レティスは体が武器みたいなものだし、あの二人は武器を持っているから万が一リシュリューに当たったらな…レティスの場合は武器は自分の体だし、その方がリシュリューを守りやすいって思ったからだ」
「なるほど…」
「レティス、あとでいろいろ付き合ってやるから、今はダイスに従ってくれ」
「あいあいさー!」
「よろしくお願いします、レティスさん」
俺らはそれぞれ役割を決めたところで、ミミとガラットは俺らの前に立った。
俺はその後ろからアサルトライフルを構え、レティスはリシュリューを守るように手を広げた。
「さてと…ミミちゃん、行くよ!」
「わかったにゃ!」
ガラットの掛け声で、ミミとガラットは勢いよく前へ飛び出す。
ミミの巨大爪とガラットのタウロスで影をどんどんと切り付けていき、俺はその後ろから残った影をアサルトライフルで殲滅していった。
その後ろからレティスとリシュリューが周囲に警戒しながら俺の後をついていく。
道半ばまで歩いたところで、俺はふと後ろを振り返った。
「二人とも、けがは今のところないな?」
「はい、大丈夫です」
「私がいるから大丈夫だよ!」
「それならよかった。それより…」
俺は再度、前の方を見るが…数体影がいる程度で、ミミとガラットは俺が確認できる範囲ではいなかった。
つまり、先に行っているということで…
「ガラット、時々周りが見えないところがあるんだよねぇ…」
「それでミミも触発されて先に行ったのか…」
俺はやれやれと言わんばかりに頭を横に大振りした。
「そういえばダイスさん…」
ふと、リシュリューが俺の武器を指さした。
「その武器…一体なんなのですか?」
「そうそう!それすごい気になるんだけど!」
レティスも合わせて乗ってきた。
「こいつは俺の相棒となる武器の一つだな。今は適当にこいつにしてるけど…」
「そんな武器があるのですね…」
リシュリューはまじまじと俺の武器を見ていた。
「ただこいつはあまり人の手に渡したくないかな…この世界においては」
「ええっと…それはどういうこと?」
「2人には言ってなかったっけ。俺とミミは別の世界にいたって」
俺は別の世界で死んでしまってこの世界に来たという事を2人に告げた。
2人は終始驚いた表情を見せたが、理解してくれた。
「だから、ミミさんはダイスさんの事があんなに好きなのですね」
「しかも恋愛感情も混じってるから変な気を起こさないといいんだけど…」
「ダイスって、ミミが好きだって知ってるの?」
「本人の口からは聞いてないけど、気配でわかる」
「気配でわかるものなのかな…」
「まぁ、それは俺がただ空気を読むのが得意なだけのことだ」
俺は左の掌をひらひらと振った。
「…さてと…そろそろ最下層だ。そこでミミとガラットに合流できるだろう」
俺はそう言って、アサルトライフルを再び持ち直した。
そして…
「…あ!ダイス!」
最下層と思われる場所で、物陰に隠れているミミとガラットを見つけた。
「ダイス、大丈夫だったか?」
「あぁ。レティスとリシュリューも無事だ」
「それならよかった…」
リシュリューとレティスが無事であることに、ガラットは安堵のため息を吐いた。
特にレティスが無事であることに安堵したのだろう。
「それで…なんで2人はここで隠れているんだ?」
「それは…」
と、ミミが目くばせで指し示した先を見ると…
「…なんだこれ…」
そこにあったのは、中央の巨大な柱に支えられている、禍々しい紫をした、巨大なコアらしき物体があったのだった…
いかがでしたでしょうか?
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では次回、お会いしましょう。




